御嵩町の小原地区に隠れキリシタンの遺跡がある。
キリシタンといえば長崎、熊本が有名だ。
江戸時代の禁圧を篤い信仰心で耐え、幕末に大浦天主堂でカミング・アウトしたキリシタンたちがいた。
「信徒発見の奇跡」と言われ、世界中のキリスト教徒が感動した。
さすが九州の人たちは粘り強くストイックだ。
東海地方ではなぜか木曽川沿岸にキリシタンの遺跡が多い。
上流の奈良井宿から、下流の一宮、弥富まであちこちに点在している。
どうして川沿いに広まっていったのか。
よくわからない。
なかでも不思議なのが、御嵩町のキリシタン遺蹟だ。
十字架を刻んだ石、マリア観音などがある。
昭和56年になって、道路工事中に偶然発見されたものだ。
それまで御嵩町にキリシタンがいたなんて記録は全くない。
それどころか当時の尾張藩の記録には、村には五輪塔がたくさんあって信仰深い所だと、のんきなことが書いてあるそうだ。
よく調べてみると、他にもあちこちでキリシタン信仰の遺物が見つかった。
お堂の裏や石碑に十字架が彫ってある。
「南無阿弥絶仏」という仏を絶するという呪文を書いた石碑がある。
小原地区の人達は、お盆の頃などにキリスト教のミサにそっくりのお祈りをしていた。
誰もそんなこと知らずに。
「わしらキリシタンやったんか。知らなんだなぁ」
そこで日本カトリック教会が小原地区の真ん中にキリスト教施設を作った。
「ほんならキリスト教にならんといかんな」
ということで小原地区ではキリスト教信者が増えているらしい。
ここまで書いてきて思うのだけど、九州の信徒発見奇跡に比べて、じつにぬるい展開だ。
いかにも東海地方らしい。
小原地区の謡坂というところに着いた。
田んぼが広がる、どうということのない田舎だ。
道端にマリア像が建っている。
キリシタンだったご先祖様を供養するために御嵩町が建立したものだ。
そのすぐ裏に七御前というところがある。
五輪塔などが林立している。
キリシタン遺跡がザクザクと出てきたところだ。
マリア像の明るい雰囲気との落差が激しい。
ほかにも近くに遺蹟があるはずだけど、どこだかよく分からなかった。
観光案内も何もない、ただの田舎だ。
御嵩町の中心街に行ってみた。
名鉄御嵩駅の近くに「中山道みたけ館」という博物館がある。
ここに小原地区から出てきたキリシタン遺物が展示してあった。
十字架石やマリア観音。
素人が彫ったのだろう。
稚拙だけど愚直な信仰を感じさせるものだった。
ほかにも小原地区の遺蹟がていねいに解説してあった。
最初にこっちへ来ればよかった。
そしたらほかの遺蹟も巡ることができた。
残念ながら館内は写真撮影が禁止だったので入り口だけ撮った。
木曽川を渡って八百津町へ行く。
お昼ごはんを食べてから「旧八百津発電所資料館」へ行く。
明治時代に建てられた水力発電所で重要文化財に指定されている。
建物の中は体育館のような広さだ。
大きな明治時代の発電タービンが並んでいる。
その隅っこに八百津の歴史・民俗資料を展示している。
筏に乗ったマネキンが勇ましい。
八百津は木曽川の上流と下流の中間になる。
昔は材木の集積地として栄えたそうだ。
資料館の中には、わたしたちのほかに一組の見学者がいた。
女子二人組がコスプレをして、発電機をバックに写真撮影している。
レフ板など持って本格的だ。
たしかにここはサイバーパンクな雰囲気が充満している。
隠れた撮影スポットだな。
ほのぼのとマニアックな光景だった。
これもやはり東海地方らしい。
ということで時間切れになって名古屋に帰る。
次回の木曽川ドライブは恵那・中津川の奇岩巨岩巡りをしてみたい。
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