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2013年06月22日01:35

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思い出は美しい風景の中でいつも輝く(映画「遠くでずっとそばにいる」を観て) 

 この映画は、27歳の包帯をした朔美(倉科カナ)が
病院のベッドで目覚めるところから始る。交通事故に遭ったが
九死に一生を得た彼女。だが後遺症で、
17歳から現在までの記憶が全て無くなってしまっていた。
17歳といえば高校生。高校生の記憶と精神のまま
無邪気に振舞う朔美だが、大人の彼女を知っている周囲からの
冷めた目線に孤独を感じる。
 そこで彼女は、元彼の細見(中野裕太)や高校時代の
同級生の薫(伽奈)、義妹の美加(清水くるみ)らの協力を
得て、その間の記憶を呼び戻そうとする。
 やがて彼女は、交通事故の経緯や、周囲からの冷めた目線の
原因を知る事となる。大切な何かを無くした。自分のもの
だけではない。別の誰かが大切にしていた何かを。
 
 拙者はこの映画の監督・長澤雅彦氏の作品が好きだ。
彼の作品では「ココニイルコト」(真中瞳主演)と
「天国はまだ遠く」(加藤ローサ主演)を観た事がある。
2本とも、美しい風景の中に佇む女性を映す事で、
主人公の心象を鮮やかに表現していた。
 この映画もまた然り。月日が流れてしまった寂しさを表すように
数台の風車が回るだけの遊園地の跡地に佇むシーン、
心細さを表すかのように夜の街の灯を映し出す川面を背景に
小さく輝く焚火を見つめるシーン、自分と別の誰かにとっての
大切なものを無くした事に気付き絶望と後悔を表すかのように
どしゃぶりの雨の中涙を流すシーン・・。どのシーンも
奇麗で鮮やか。だからこそ、朔美の心の中が痛いほど分かって
しまう。

 17歳から27歳といえば、一般的に、高校生活を送り、
大学を経て社会人になり、会社勤めを始めて数年が経った
期間。誰しも嬉しく楽しかった思い出もあれば、人から傷付けられ
逆に傷付けてしまった辛くてほろ苦い思い出もあるだろう。
 辛くてほろ苦い思い出もあるからこそ、嬉しく楽しかった
思い出が何年経っても色あせないという事を、この年頃から
もっと大人になって拙者は感じるようになった。
 記憶を無くした直後の幼かった朔美も、無くしたものの大切さに
気付き、喪失の悲しみや絶望から歩みだそうとした時、
27歳よりも大人になったように感じた。

 果たして、朔美らが無くした大切なものとは?
 良い思い出も悪い思い出も心に残る風景がある。この映画を
観終わった後、観客はその思い出の風景を思い出し、
改めてそれらを抱えて歩んでいこうと思えてくるだろう。

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