mixiユーザー(id:9353210)

2010年07月23日23:00

100 view

<ネタばれ注意>ひょっとして恋愛の本質を教えてくれる映画?(映画「私の優しくない先輩」を見て)

ネットサーフィンをしていて、恋愛相談のページに出くわす事がある。
「彼にうざい奴だと思われないために、メールのやりとりは一日に何回くらいに
したら良いでしょうか?」(拙者「回数の問題か?」
「毎日彼女とメールのやりとりを一日に50通くらいしていたのですが
今日になって6時間たっても彼女からメールの返事が来ません。嫌われた
のでしょうか?」(拙者「たった6時間で、嫌われた?と不安になるの?」)
「キモイ奴だと思われないように告白をするには、どうしたら良いでしょうか」
 若い人の相談だが、拙者がおじさんで若い感性を失ったからなのか、
拙者が今の時代についていってないだけなのか、とても違和感を覚えてしまう。

「キモイ奴だと思われないような告白」かぁ。難しいなあ。
拙者は大学生の時に書店(新大阪駅にある)でバイトをしていた。
ある日、背が高くて上品そうで、しゃべり方が優しくて背筋がピンとして
凛とした女の子が新しく入ってきた。一目ぼれだった。バイトで
彼女とすれ違ったり、近付いたりしただけで、彼女への思いは募っていき、
ある日バイトが終わった後、思いの全てを詰め込んで、付き合って下さいと
手紙を渡した。返事はどうなのだろう、バクバクと脈打つ心臓を
抱え次の日バイトに行ったが、何と、彼女は辞めてしまったと社員さんから
聞かされた。きっと、彼女は全く話した事の無い男性から突然手紙を渡されて、
今でいう「キモイ」とか「ウザイ」と思った事だろう。

 そんな昭和な古臭い拙者が、先に紹介した若い人の相談に対する違和感は
何なんだろう?何か恋愛に対して大事な事を忘れてはいないだろうか?と
考えた時、その答えの大きなヒントを与えてくれるのが、この映画だと思う。

 主人公のヤマコ(あだ名はヤマネコ・川島海荷)は心臓に重大な疾患を持ちながら、
長崎の孤島に住む高校1年生。都会での生活では心臓に負担が大きいと
いう事で、人があまり住んでいない、空気が綺麗なここに越してきたらしい。
 そんなヤマコは、ミナミ先輩に夢中だった。ヤマコにとってミナミ先輩とは
「爽やか」という言葉をそのまま人間にしたような存在。清潔で、
いつも明るく、親切でおまけに模範生のクラス委員。ミナミ先輩の事を考えるだけで、
ヤマコの頭の中は、バラ色の妄想一色。ヤマコの頭の中は
99%以上ミナミ先輩の事で支配されていた。まさに「夢見る夢子ちゃん」状態。
ミナミ先輩の事を思っていると、自分が病に侵されているという事を
忘れさせてくれ、自分がまさに夢の世界にいるような心地にさせてくれる。
 ヤマコと同じクラスに、キクコという女の子がいた。キクコは、ほとんど
しゃべらず、根暗で、友達が一人もいなかった。ヤマコは、そんなキクコに
友達になろうと声をかけた。それを聞いて大喜びするキクコ。
ヤマコが優越感を味わいたいために、見せ掛けの友情を演出していようとは
キクコは知る由も無かった。
 だが、ヤマコの夢の世界をぶち壊し、彼女を重苦しい現実の世界に引き寄せる
存在がたった一人いた。ヤマコを含め、たった二人しかいないマット体操部の
先輩・不破(はんにゃ金田)だった。不破はミナミ先輩とは全く正反対で、
いつも汗臭く、説教臭く、うざくてキモイ、ヤマコにとっては、避けて通りたい
存在だった。
 マット体操部なのにヤマコは前転すらできない。不破はヤマコを叱りつける。
「お前、心臓が弱いからっていって、立ち向かおうとしないでどうする」。
不破が叱りつければ叱るほど、ヤマコは反発してミナミ先輩との妄想の
世界に引きこもる。ヤマコは、密かにミナミ先輩にラブレターを書いていた。
といっても、ミナミ先輩に渡して自分の気持ちを伝えるためではない。
自分の妄想の世界をもっとバラ色にするために。
 ある日、そのラブレターを不破が見つけてしまう。「返して」と迫る
ヤマコだが、ラブレターが人質になってしまい、不破から提案された
作戦に協力させられる羽目になる。
 その作戦とは、ヤマコと不破とミナミ先輩とキクコの4人で、町の祭りに
たこ焼きの屋台を出そうというものだった。たこを焼きながら
ヤマコとミナミ先輩の心の距離を縮め、ヤマコの思いをミナミ先輩に告白する
というクライマックスまで用意されていた。
 まんざらでもないと思ったヤマコ。次の日から、非常にお節介の
不破の指導のもと、4人がたこ焼きの練習をすべく、ヤマコの家に集まる。
憧れの存在と隣り合わせになり、一緒にたこ焼きを焼いているという現実に
ますますヤマコの妄想と、ミナミ先輩への思いは、ヒートアップしていく。
まさに天にも昇る心地のヤマコ。
 だが、ひょんな事から歯車が狂い始める。
 ある日ミナミ先輩が練習を無断欠席したのだ。それ以来、練習には
来なくなった。約束を破る人間を嫌うヤマコだったが、ミナミ先輩には
何か特別な事情があるに違いないと自分に言い聞かせる。
 動揺するヤマコに現実が追い討ちをかける。不良グループの輪の中で
タバコを吸っているミナミ先輩の姿を目撃してしまったのだ。あの清潔で
模範生としてクラス委員まで務めているミナミ先輩が!激しく動揺する
ヤマコ。
 そこへ現実がヤマコにトドメを刺しにかかる。何と、自分より劣っていると
見下していたキクコに、ミナミ先輩が好きだと告白したのだ。
 ボロボロになるヤマコ。もう立ち上がる事はできない。バラ色一色だった
妄想の世界が、どんよりと曇った重苦しい現実に木っ端微塵に破壊されたのだ。
夢心地ですっかり忘れていた心臓の病も、ぶり返してきた。
 ボロボロになっているヤマコに、チョーがつくほどの
お節介で、臭くてうざくてきもい不破は、怒鳴りつける。
「これくらいの事で諦めてどうするんだ!」と。
 不破の言葉に、誰にもしゃべった事がない、今まで抑えに抑えていた
ヤマコの感情が爆発する。
 
 ヤマコが好きだったのは「進学のため、タバコを吸った事を
親や学校に内緒にしといてくれよ。そのためなら付き合ってやるぜ」と
こびてくるキモイ先輩だったのか?平気で約束を破るような。
 そういうヤマコも、夢見るミナミ先輩と付き合える程、純白で
純情なのか?自分が優越感に浸りたいために友達のふりをしている
自分、何事にも諦めてしまい現実には向き合おうとせず、
夢の世界に引っ込んでしまうキモイ自分。
感情を爆発させたヤマコはみっともなくてカッコ悪かった。
が、何故か以前よりどこか可愛いと感じた。

 恋する人間の大部分はうざくて、きもくて、汗臭い。
だってそうでしょう。あまり知らない人間から
突然思いを告白されたり、プレゼントをもらったり、
接近されたり。可愛い、イケメンだから譲歩できるけど、
その瞬間は良い気持ちになるけど、冷静に考えれば
うざくて、きもい行為でしょう。

 そのうざくて、きもくて、時に汗臭いものを
超越して、相手の心の中でもっと奥底に響く「何か」。
 そのうざくて、きもくて、時に汗臭いものを
エネルギーにして、相手の心の中にある導火線に
火を付ける「何か」。
 そういったものがあるのが恋愛の本質じゃないだろうか?
 先に紹介した若い人の相談には、それが欠けているんじゃ
ないだろうか?
 
 この映画には、その「何か」を気づかせてくれる
とてつもないエネルギーがあった。
 
 果たして、ヤマコとミナミ先輩の運命は?
 何故、不破はヤマコとミナミ先輩をくっつけようとしているのか?
 キクコとミナミ先輩の関係は?
 そして、ヤマコの病はどうなってしまうのか?

 先に紹介した若い人たちが、この映画を見たらどうなるだろう、
きっと少しは逞しくなってくれるかもなあ、と思ったのだった。

(終わり) 
 
0 3

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2010年07月>
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031