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日記一覧

カルテ番号 あ・28 8度目(5)長寿族としては知らんぷりして、別な土地に行くのが妥当だろう。愛田恵子は幕末からの激動の時代を経験しすぎた。しかも中枢近くだった。バカな男共によって、より苦しむ人々を見てきた。元々が情深い性質なのだろう。今の立

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カルテ番号 あ・28 8度目(4)その長寿からの知識や経験を活かすのは、生き延びる為に使う。社会的に応用し貢献などしては、本来の人社会の成長を乱す。それに気づかぬ長寿族も時々出る。すると、まだ使いこなせぬ道具を持ってしまう。大抵は争いに使って

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カルテ番号 あ・28 8度目(3)長寿族だからといって、特に生命力が強いわけではない。ここを勘違いするから、長寿族は災難に合う。特別の血液や細胞だと勘違いされる。解剖されても、何ら変わりないのだ。病気や怪我で死ぬもの同じだ。多少、病になりにく

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カルテ番号 あ・28 8度目(2)愛田恵子は言う。「オトコはバカだから、可愛いのよ。だから、悪女をやってられるのよ」そこには深い意味もある。幕末から第一次世界大戦、第二次世界大戦。戦前、戦中、戦後の国を動かす男達を見てきたのだ。可愛いとは言え

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カルテ番号 あ・28 8度目(1)「センセー、元気〜」電話からの第一声だ。愛田恵子は風間陽水の同族、長寿族の先輩だ。陽水よりも120歳上になる。まだ長寿族の発動前、京都伏見の寺田屋の女将だった。幕末の真っただ中、お登勢の名前だった。坂本龍馬と

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カルテ番号 も・6(40)茂木滋は、サッパリとした表情で言った。「これからの自分は、何をやりたいのだろうか?昨日、帰ってきてから、ずっと考えていたのです。あの先生に、寿命は、あと50年くらいはあるだろう、と言われました。ならば、自分は、何をし

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カルテ番号 も・6(39)茂木滋は、ニッコリと笑って話を続けた。「肉親はいませんが、幸いな事に丈夫な身体がありました。そして、少しずつですが商売も上手くいき、5年前に退職しました。仕事に未練はありません。充分、やりきったと思っております。暮ら

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カルテ番号 も・6(38)三木裕子が言った。「礼子さん、うつ病だったなんて、多分誰も信じないわよ。自然に明るくて、元気ハツラツよ。同世代から、うらやましがられるわ」「ありがとう。自分でも、全く別人になった気分よ」茂木滋は、黙って何か考えてい

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カルテ番号 も・6(37)明木礼子は先に茂木滋に言った。「ちょうどよかったわ。こちらは三木裕子さん。そして、こちらは、茂木さん。最近知り合ったのよ。でも、私達、共通点があるの」三木裕子は茂木滋に明るい笑顔で挨拶した。「こんにちは。よろしくお

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カルテ番号 も・6(36)茂木滋は、座ったままだが、深くお辞儀をした。「本当に、ありがとう。生きる意欲が湧いてきました。どうして変わる事が出来たのか、自分でも不明です。だが・・・不思議だった。いきなり、自分が変わる、という事を味わった。人は

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カルテ番号 も・6(35)茂木滋はその夜、宿に泊まって、温泉を愉しんだ。今まで、何十回となく温泉には入った。だが、温泉を愉しむなんて無かった。それが、愉しむ、ということが実感できるのだ。いろいろが新鮮に感じられる。何も、解って、いなかった、

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カルテ番号 も・6(34)80歳になった茂木滋だが、何も知らない、というのは実感している。80年生きてきたから、世の中をある程度理解してきたと思っていた。知っている、と、何も知らない、と両方の思いがあった。だが、本当は、何も知らないに等しい

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カルテ番号 も・6(33)院長の話は続いた。「生命力は、この世においては肉体に宿ります。それは、生きていこうとする力でもあります。先導役として、生きる気力があります。気力と生命力は、肉体内においては、同じ方向に向きます。その気力は、意識に強

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カルテ番号 も・6(32)茂木滋は言った。「なるほど・・・異なるモノを認めると、生命力が湧く。否定すると、衰退していく・・・か。思い起こせば、その通りですな。否定や固定概念だけの人生は、つまらない。それは、生命力が活性していないから、という

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カルテ番号 も・6(31)茂木滋は頷いた。解らない事を認めた時、面白い、と思えた。院長も頷いて、話し出した。「異なる事、異なるモノは、毎日、普通の暮らしの中にあります。毎日、毎日、あるのです。ですが、ほとんどを否定します。あるいは、無視しま

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カルテ番号 も・6(30)院長は言った。「生命力が活発になるには、幾つも引き金があります。生物は生命力が活発になるように、幾つもの仕組みが用意されているのです。この世を創ったのが誰だかしりませんが、自然はそういう仕組みのようです。生きていけ

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カルテ番号 も・6(29)「つい、余計な事を訊いてしまったですな、申し訳ない。仕事を辞めてから、他人に興味はなかったが、先生は別だ。今まで自分が会ってきたタイプとは違っていたもので・・・それにしても、不思議だ。ここに来て、まだ僅かな時間なの

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カルテ番号 も・6(28)茂木滋は改めて院長の顔を見た。「それにしても、先生は何処で修行をしてきたのですかな?そして、失礼だが、どうしてこんな山の中にいるのかな?その能力、得たモノをもっと多くの人に広めた方がいい。さすれば、もっと多くの人を

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カルテ番号 も・6(27)「そうですな。小さな不完全な頭で判断するのは、間違いが多い。自分など、何十回と判断の間違えがあった。間違いだらけだったかもしれん。世の中、解らん事だらけだ。それなのに、自分で勝手に信じたり、信じなかったり・・・信じ

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カルテ番号 も・6(26)茂木滋は縁というものは、何かしら決められているものだと思っていた。運命だか宿命だか知らないが、定められているのだと思った。「人と人の出会い、特に結婚など縁といいますね。最初から決められている相手と出会った、というよ

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カルテ番号 も・6(25)「実は・・・」茂木滋は、ここに来た経緯を話し出した。公園で太極拳をしていた婦人から話を聞いて知った事。その婦人の言葉の中で、自分の琴線に触れるモノが有った事。生命力の活性。それが、どういう意味でどういう事を指すのか

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カルテ番号 も・6(24)自分よりもかなり年下だろう。もしかしたら半分くらいかもしれない。だが、この雰囲気、言葉、は自分よりも年上のものだ。不思議だが、自分よりも人生を重ねてきた人のように感じる。そうか。こういう人間もいるのか。不意に茂木滋

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カルテ番号 も・6(23)死期、寿命というものの認識が違っていたら・・・漠然と、もうそう長くないのだと思い込んでいた。だから会社を引退し、その後も特にする事もなかった。もししても、大した事はできまい、と思っていた。だが・・・50年あるとした

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カルテ番号 も・6(22)「信じられん。130歳まで生きられるのか」院長は普通に答えた。「はい。そのくらいまでは大丈夫でしょう」茂木滋は、しばらくして言った。「病気もせずに生きられる、ということですかな?」院長は笑って答えた。「それはわかり

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カルテ番号 も・6(21)院長は淡々と言った。「かなり無理してこられた身体ですね。でも、生れ付きの生命力が高かったのでしょう。生きる力が強い人は、身体に無理をさせてしまいます。ですから、本来の持つ寿命よりも多少短いのではないか、と思われます

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カルテ番号 も・6(20)院長はすぐには答えず、マットに寝るように言った。「身体、診させていただきます」そして腹部、胸部を5秒おきに掌で移動させていく。やがて、頭部に移動して、しばらく指で触っていた。手を置く時間は、それぞれ僅かだが、かなり

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カルテ番号 も・6(19)治療院外見、看板などからは、やる気がない経営者だとみえた。会ってみると、仕事にやる気がないとは思えない。むしろ、この淡々としている雰囲気から、かなりデキるとみえる。職人の中にいるタイプだ。仕事はデキるが、商売っ気は

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カルテ番号 も・6(18)「ごめん下さい。予約していた茂木と申します」「どうぞ、お入り下さい」院長は40代くらいに見える。思ったよりも若い。「早く着いてしまったが、よろしかったかな?」「かまいませんよ。遠くから疲れていませんか?」「いや、疲

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カルテ番号 も・6(17)茂木滋は自分で運転はしない。といって、会社を持っていた時のように運転手もいない。一人で遠くの場所に行くことなど、ほとんど無かった。まぁ、久しぶりに、そういうのも悪くないか。そう思えてきた。調べると、温泉地でもある。

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