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日記一覧

カルテ番号 れ・1(31)美和も言った。「いい言葉ですねぇ」院長は頷いて言葉を続けた。「神という概念は宗教、個々によって違うようです。私はこの世を創ったモノを神と表現しています。この世の全ての仕組み、理、そして、運営とでもいいますか・・・

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カルテ番号 れ・1(30)院長は少し照れ笑いをして言った。「私の悪い癖です。私の尊敬する人には、いわゆる宗教界の人がいます。とても素晴らしい人です。通常の宗教組織の人達とはまるで違います。もちろん、勧誘などしません。そして、他の宗教をしっ

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カルテ番号 れ・1(29)冷泉美和は宗教や精神世界とは縁遠い。何か違うとは思っていたが、説明はできなかった。だが、院長の話でスッキリした。これが真実と言われても、証明できないから反論もできない。それに・・・言う事が綺麗事すぎる。人の心の中

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カルテ番号 れ・1(28)院長の言葉は更に続いた。「心が大切とか、精神が大切とかいいますね。時には魂が根本とか、霊(れい)御霊(みたま)などとも言います。肉体は仮で魂や精神が本体。心は精神の現れたもの、などとも言います。でも、これらは全て

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カルテ番号 れ・1(27)「先生、身体と心の事、誤解していました。身体が大事か、心が大事か。そんな風に分けていた時期があります。やがて、身体も心も一つだから、どちらも大切。そんな風に思っていたのです。でも、今日、どちらも根本から誤解してい

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カルテ番号 れ・1(26)美和は最近の自分を振り返った。身体が重いと感じていたのは、心が停滞していたからかもしれない。院長は、病は無いと言ってくれている。身体に異常がなくても、積極的に生きる意欲が薄れていたと思う。何となく温泉でくつろぐ。

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カルテ番号 れ・1(25)美和は言った。「生命はあきらめない、っていい言葉ですね」院長は優しく言った。「あきらめない、というか、生きているのが生命です。あきらめる生命なんて、矛盾してしまいます。常に生き続けるのが、本質であり、全てです。そ

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カルテ番号 れ・1(24)何気なく寄ったのではなく、気になったから寄ったのだ。目的があるのか、無いのかも判らず寄った。だからこそ、訪れた意味があるように思えた。最近、ずっと心の奥底にあったモヤモヤだ。それは、これからの生き方。40歳間近にな

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カルテ番号 れ・1(23)院長は少し間をおいてから言葉を続けた。「罪という概念を作ったのは人間です。猫が猫に害を与えていないネズミを殺して食べても罪とは言いません。そして、猫にも殺されたネズミにも、罰はありません。無理を重ね、ケアもしなく

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カルテ番号 れ・1(22)自分の事は差し置いて。そうするのが美徳だという風潮だった。そうする方が社会的に評価される。深く考える事なく、自分が我慢し他の為に行動する。それが、立派な行為だと思い込んでいた。自己満足と社会的評価の二重取り・・・

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カルテ番号 れ・1(21)美和は思った。10秒でも、本気で自分の身体に手を当てた事があったろうか?痛い時、そこに手を当てる事はある。顔や足のマッサージもする。それらは、早く良くなれ、綺麗になれ、と思ってしている。でも、それらは気配りではない

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カルテ番号 れ・1(20)美和は一瞬考えた。10秒でケア?「そんな短い時間でケアなどできるのでしょうか?」院長は笑って言った。「ケアというのは、手当の事ですよ。更に言えば、気配りが伴う事です。氣を込めて、手を当てる。時間は使えるだけ。10秒しか

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カルテ番号 れ・1(19)無理は仕方ない。重要なのは、その後。油断したままでいない。ケアを無理した分、上乗せする。ケアは無理をしていなくても、する。病になるのも、回復するのも、ケア、にかかっているのだ。美和は言った。「ケアの重要性はわかりま

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カルテ番号 れ・1(18)美和は母を思い出した。美和がまだ幼児の頃、母の母、つまり祖母が病になった。幼い美和を背負い、母の実家で祖母を看病していたらしい。それが10年以上続いた。というのは、やがて祖父も病に倒れたからだ。母はかなり無理をしてい

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カルテ番号 れ・1(17)美和は言った。「頑張ったり、生真面目な生き方はダメなのですか?」院長は少し笑った。「ダメとかいいとかではないのです。頑張る、無理を続ける、生真面目な生き方は、病になりやすいのです。癌にとっては、育ちやすい肉体なので

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カルテ番号 れ・1(16)美和は質問した。「癌になりやすい家系とか遺伝子とかあるのでしょうか?私の両親も親戚も癌になってしまいました。遺伝でも大丈夫なのですか?」ずっと自分の中のモヤモヤする思いだった。親がそうだったから、自分もなるのかもし

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カルテ番号 れ・1(15)食事に気を付けている人。毎日運動をしている人。定期検診をしっかり受けている人。それでも病気になる。それでも癌になる。医者も栄養士もお坊さんも神父もなる。「生命を大切にするというのは、無理をした身体をケアする事です。

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カルテ番号 れ・1(14)話を聞いていると、美和は癌が怖いと思わなくなっていた。癌は育ててしまうから怖くなる。育てなければ、少しも怖くない。しかも育てるには何年もかかる。油断しなければいい。毎日ケアをすれば、その他の病まで防げる。「癌はイン

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カルテ番号 れ・1(13)美和は調べた事があった。癌細胞から、発見されるくらいの大きさになるまで10年くらいかかるらしい。院長はその事を言っているのだろう。検査で初期といわれる大きさでも、数年はかかっているらしい。本人は痛みや違和感が無いから

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カルテ番号 れ・1(12)美和は今まで思っていた癌に対するイメージが崩れた。院長は言葉を続ける。「癌は弱い生物だからこそ、知恵を絞ってこっそり隠れています。強くなるには、大きく育たなくてはならない事を知っています。小さな時では、人間の治療で

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カルテ番号 れ・1(11)院長の話の内容はともかく、ゆっくりとした口調が心地よい。「癌はとても弱い生物です。宿主の熱が上がれば死んでしまいます。そう、昔は風邪でも簡単に薬は飲まなかったですね。熱は身体の抵抗力を高めている最中なのです。そんな

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カルテ番号 れ・1(10)院長は少し間を置いてから話し出した。「あくまで私の感覚からの考えです。いわゆる西洋医学の常識とは違います。もっとも西洋医学のドクターもご存じのように様々です。正反対の意見を述べ、論争するドクターもいます。それだけ癌

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カルテ番号 れ・1(9)美和はここに来た時から、何故か心が落ち着いていた。居心地が良いのだ。あまり深く考えなくてもいいみたいだ。「悩みというほどの事はないのですが、とりあえず聞いて下さい」そして、京都時代の事と東京に就職してからの事。それ

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カルテ番号 れ・1(8)美和はここが気功の治療院だった事をあまり深く考えていなかった。気功治療ってどうするのだろうか?それ以前に気功って、どういうものなのだろうか?今の院長の話だと、特別に氣を出すわけでなくても出ているらしい。ここにいるだ

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カルテ番号 れ・1(7)衝動的に訪れてしまったけれど、良い事が起こる予感がする。簡単な記入事項を書くと、院長がそれを見ながら言った。「れいぜいと読みますか?れいせんと読みますか?」珍しい。れいぜい、と読める人ならば通常は冷泉家を知っている

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カルテ番号 れ・1(6)駐車場に車を入れて、改めて看板を読むと予約制となっている。ダメなら縁が無かった事にして、とにかく訊いてみよう。「ごめんください。予約していないのですが、診てもらえますか?」「どうぞ、お上がり下さい」院長だろう、すぐ

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カルテ番号 れ・1(5)ふと道沿いの看板が虹色に見えた。吉兆が重なったのだ。本当に良い何かが起こる気がした。その看板をよく見ると・・・虹色どころか、錆びついていた。どうして、七色に見えたのだろう。看板には、気功の治療院と書かれていた。駐車

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カルテ番号 れ・1(4)休日の夕方だった。いつものように日帰り温泉巡りの帰り道だった。山と山の間からの空は晴れているせいか、まだ明るかった。太陽は山影に沈んだようだ。大して多くない雲が夕日を浴びて綺麗な色をしていた。ハンドルを握りながら、

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カルテ番号 れ・1(3)冷泉美和は最近、身体が重いと感じる。今まで大きな病気をした事が無かった。風邪で寝込んでも、1日くらいで復活できた。気がかりは、相次いで亡くなった両親だ。二人とも60代だった。そして、二人とも癌だった。健康オタクではない

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カルテ番号 れ・1(2)もう40歳の壁が目の前だった。結婚願望が全く無いわけではない。そう言ってくれる相手もいた。その相手を好きだった。だが、結婚となると違う気がした。その人との家庭が想像できない。結局、結婚に踏み切れずに別れた。もし子供を

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