ナーガールジュナ(龍樹)『中論』コミュの「中論」　第一三章　形成されたものの考察

Ｊ註：あれ？？？　“空が存在”って何じゃ？どうやら『空見』の排斥の模様。書き込み★コメント部分、先に参照。

一　「＜よこしまに執著（妄取）されたもの＞は虚妄である」と世尊は説き給うた。そうしてすべて形成されたもの（行）は妄取法である。故にもろもろの形成されたものは虚妄である。

二　もしもこの妄取されたものが虚妄であるならば、そこでは何が妄取されるか。ところでこのことが尊師（ブッダ）によって説かれたが、それは空を闡明するものである。

三　もろもろのものにとって＜それ自体の無いこと＞（無自性←Ｊ註：どうやら『実体がない』ではなく、ここでは『無』か？）が存する。何となれば【それらのものが】変化することを見るが故に。それ自体（自性）を有しないものは存在しない。
何となれば、もろもろのものに空が存するから。

四　もしも＜それ自体＞が存在しないならば、何ものに＜変化するという性質＞があろうか。もしも＜それ自体＞が有るならば、何ものに＜変化するという性質＞があろうか。

五　それ（前の状態にあったもの）に＜変化するという性質＞が無い。また他のもの（のちの他の状態に達したもの）にも＜変化するという性質＞は適合しない。何となれば、青年は老いることがないから。またすでに老いた者はもはや老いることがないから。

六　もしそのものに＜変化するという性質＞があるならば、乳そのものが【乳そのものである状態を捨てないで】酪となるであろう。また乳とは異なる何ものか（たとえば水）に＜酪たる状態＞が起こるだろう【しかし、そのようなことはありえない。それ故にそれとは異なった何ものかが酪ということは理に合わない】。

七　もしも何か或る不空なるものが存在するならば、空という或るものが存在するであろう。しかるに不空でないものは何も存在しない。どうして空なるものが存在するであろうか。

八　一切の執着を脱せんがために、勝者（仏）により空が説かれた。しかるに人がもしも空見をいだくならば、その人々を「何ともしようのない人」と読んだのである。

コメント(6)

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[1] mixiユーザー 08月16日 11:27

★「龍樹」（中村元　著）p.272～　によると、『空見』とは、本来非有非無であるべきはずである空を、『有の意味に解するか』『無の意味に解するか』のいずれかの誤解を指す。
『要するに空見とは、空が縁起の意味であり、有と無の対立を絶しているにもかかわらず、これを対立の立場に引き下ろして考えること』（同書より）

従って、第７・８詩が、Ｎの主張。
空観が、相互依存＝縁起を意味する正当な空の捉え方を指すので、紛らわしいの～

[2] mixiユーザー 07月02日 16:03

第13章　作られたものについての考察

１　「むやみにつかまれたものは虚妄である」と世尊はおっしゃった。
そして、すべて作られてあるものは、むやみにつかまれたものに他ならない。したがってさまざまな作られたものはすべて虚妄である。

２　もしもむやみにつかまれたものが虚妄だというなら、いったい何がつかまれたというのだろう。
ところで、このことは尊師によって説かれたわけだが、それは他ならぬ空を明らかに謳われたものだ。

３　諸々の作られたものにはそれ自体というものがない。なぜなら、それらの移り変わる（諸行無常）のが観察されるからである。
それ自体を持たないものは実有ではない。なぜなら、すべての作られたものには空が認められる（一切行空）からだ。

[3] mixiユーザー 08月18日 14:23

第13章　作られたものの考察

１　「いたずらにつかみ取られたものは虚妄に過ぎない」と世尊は説きたもうた。そして、すべて作られたものはこの、いたずらにつかみ取られたものである。よって、すべて作られたものは虚妄である。

２　もしもこのように、いたずらにつかみ取られたものが虚妄ならば、何がつかみ取られたというのか。このことが尊師によって説かれたのは空を明らかにするためである。

３　すべて作られたものには自性が無いと言える。なぜなら、すべて作られたものは変化し無常だからだ。
ところで、自性が無いものは存在しないと言える。なぜなら、すべて作られたものには空があるばかりだから。

[4] mixiユーザー 08月19日 14:13

４　もしも自性が無いならばいったい何に、変化する、無常だという性質があると言うのか。
また逆に、もしも自性が有るならばいったいどこに、変化する、無常だという性質があると言うのか。

諸々の作られたもの（諸行）に自性は存在しないと考えても、自性は存在すると考えても、無常という性質がいったいどこに有るのか宙に浮いてしまう。
これによってナーガールジュナ論師は言葉で何かを語ることの究極の不毛性に突き当たっている。

[5] mixiユーザー 08月19日 14:28

５　何かいずれかのものに〈衰弱するという性質〉は見出されないし、他のものにも〈衰弱するという性質〉を見出すことはできない。
例えば、若者は老いることがないし、老人もそれ以上老いることがない。

後段はナーガールジュナお得意の論理を背景としたもので、現代の私たちからすると一見、奇異にうつるものですが、『中論』のあちこちでナーガールジュナ論師は同じ論法をより詳しく展開していますね。

[6] mixiユーザー 08月19日 14:49

６　もしも諸々の作られたものの自性に衰弱するという性質が有るとしたら、乳の自性が酪に変わることになってしまう。
また、乳ではないものでも酪になりうることになってしまう。

７　もしも空でないものが存在するとしたら、それは空というものが存在するということになる。
しかし空でないものなど存在しない。だから、空というものも存在しない。

８　一切の執着を脱するようにと、勝者ブッダは空を説かれたのだ。それなのに人々が空に執着する空見を持つならば、そのような人々をこそ「どうしょもない人々」と呼ばれた。

第８頌においては「気がつけよ」と厳しい言葉が使われていますね。

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