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シードホールコミュのヴィム・ヴェンダース特集

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『夢の果てまでも』の公開の直前、シブヤ西武B館8階で「ヴェンダース展」が開かれ、シードホールでは、過去の作品をまとめて上映する一週間。
会期中、ヴェンダース本人の登場で、トークショー。
入りきれないほどの人が来場しました。
「FLIX」1992年6月号にこんな記事が出ました。


「シードホールのヴェンダース」

 座席はとっくになく、ステージの前のわずかなスペースまで聴衆があぐらをかいて座っている。その会場にヴェンダースは現れた。最初の言葉は「おはよう」。もちろん小津の映画のタイトルだ。映画の可能性を問い続けるヴェンダースは、その登場の仕方まで映画的だった。
 梅本洋一氏とヴィム・ヴェンダースの座談会が開かれたのは3月15日、渋谷シード・ホール。11時からもう長い行列ができている。列の後尾では、スタッフが整理券を配布している。道行く人たちは何の行列かと眺めていく。
 時間通りに現れたヴェンダースは、実に愛想よく笑顔を見せてくれた。目が合うとニッコリ微笑みかけ、カメラを向けるファンにはおどけてみせる。そのうえ8ミリビデオを回している観客からカメラを受け取って、自らフィルムを回してさえくれたのだ。
 ヴェンダースといえば、もっと神経質な芸術家肌の人かと思っていたが、そのにこやかな態度は、何だか気軽に話せる我々映画ファンの兄貴分といった感じで、実に親しみやすい。
 どのヴェンダース作品もそうであるように、彼の映画は他者とのコミュニケートの難しさが最大のテーマとなっている。特に『パリ、テキサス』。ここでは去って行った妻との対話の方法を探し出そうとする、H・D・スタントンの真摯な姿に感動の焦点があった。『ベルリン・天使の詩』は、触れ合いのコミュニケーションをまさぐった映画である。『ハメット』と『ことの次第』は、製作者のコッポラ、ひいてはハリウッド・システムとのコミュニケーションの失敗から生まれた映画だった。
 ところでそんなヴェンダースも、会場では実に活発にファンとコミュニケートする。質問には真剣に耳を傾け、丁寧に回答する。時間がなくなってきて、あせっている主催者を制するように、「あと2人、あともう1人」と、いつまでも終わることのないファンの挙手に応えてくれる。けれどよく考えてみると、それはコミュニケーションの作家ヴェンダースだからこそ、その大切さを身を以って示した振る舞いだったようにも思うのだ。
 「映画学校で学んだことはたいして役に立たなかったが、映画を見てそれについて書くことは大変な勉強になった」と語ったヴェンダースの言葉は、彼が常に映画との対話、つまりコミュニケートにおいて自らを磨いたことの告白と受け止めた。
 けれど何より会場を沸かせたのは、やっぱり『ベルリン・天使の詩パート2』を現在製作中だという発表だった。楽しみである。
 講演が終わった後、ヴェンダースに握手をしてもらった。そのときの彼の柔らかい笑顔が忘れられない。その大きくて肉厚の手の感触は、人間になった天使との最初のコミュニケーションのようだった。

南波克行

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