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半蔵門かきもの倶楽部コミュの【仮組み】第113話 王都作 「そんなことない」(テーマ選択「恋」)

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<主要登場人物>
春野家一同
●真理子(マリコ 35):長姉。ECサイト管理者。新大塚駅周辺在住。
○穂三千(ホサチ 28):末妹。多作な歌人でフリーター。葛飾区水元4丁目アパート一階在住。
彼女の中の「お姉ちゃん」=真理子のこと。他の姉妹は「さん」付けで呼ぶ。きょうだいの中で真理子が一番親しいから。

―里美(LINE、回想):次姉。連絡係。
―康子(回想のみ):末姉。煙たい。
―篁三(LINE、回想):父。公務員。入退院生活中。下戸なのに酒を強いられ体壊した。
―陽子(LINEのみ):母。地方芸能マネジャー。至って元気。

<本編>
T:わたしたちは、ちょっと違う。
・2023年の12月、真理子がカフェで穂三千と待ち合わせ。
真理子「さち〜♪」
  穂三千、足早に真理子の座る席へ向かう。
  オーダー後、互いに近況を語り合う。
  真理子、スマホのスケジュール機能で先月の27日の欄に有るHosachi’s Birthdayを見た。
真理子「誕生日来てたね、おめでとう」
  穂三千、首を横に激しく振り、
穂三千「親友だった子の命日・・・」
  真理子、思い出し焦る。
真理子「ご、めん……」
穂三千「いいって」
―――
  穂三千が故郷へ帰ろうとしてることを真理子に打ち明ける。
穂三千「南予帰って、農家やろうかな」
真理子「あれほど取り組んでたのに、どうした?」
穂三千「続けててもたかだか三流歌人だよ。短歌の歌集出して売り込みに上京したけど、こっちには身になること何もなくて……最近は、かえりたい。何もかもが辛くてやり切れない…夢で、もういなくなってる笹倉のおばあちゃんとおじいちゃん出てくるし」
真理子「そんなにか」
穂三千「姉ちゃんたちが東京に居たがるの何でかよく分からんのさ。考えるほど頭の中ぐちゃぐちゃになる」
  あいみょんの「マリーゴールド」のサビを口ずさみ出す穂三千。
  その目には、うっすらと涙が。
穂三千「元気になるんだ。これで。わたし安上がりかな?」
真理子「そんなことない」
  柔らかく微笑む穂三千。
真理子M「私たち(真理子と穂三千)には、揺るがない帰れる場所がある。そこは母方の笹倉家」
 南予の母方祖父母宅頻繁に通った穂三千、中予暮らしの合間に訪ねた真理子。
[回想入る]

真理子M「穂三千に勝敗の概念は存在しない。歌壇に未練はないらしい。歌壇仲間の「恋」や結婚に関心なく、煩わしいともいう。」
穂三千「わたし、誰のために一つひとつ少ない文字を並べてるか分かんなくなるんだ。10年くらい前からじょじょに書きためて、全部でざっと15万字弱。それでも足りなくて、もがいてて、苦しい……今、初めて言った、お姉ちゃんに」
  真理子、一回だけ強く頷く。
  穂三千、涙が溢れかける。
  穂三千の纏う雰囲気が急に重くなり、
穂三千「もう関わってないけど、歌仲間だったA香とB男からヘンなよく分からない雰囲気出てて、短歌誌の飲み会でフラフラ歩いてわたしにぶつかっても二人とも絡みつくように言いがかって……ムカつき過ぎてその言葉は言わないけど理不尽すぎる」
  穂三千、嗚咽を漏らしながら(堪えきれずに)、
「もう、消えたい……」
  真理子、立ち上がり穂三千の両肩を掴み、
真理子「アンタは居てくれなきゃ。ほんとうは私も辛いんだ……振り返れば嫌いなところだらけだよ、ついこないだも破れかぶれなって秘書や部下たちに当たるし。どうしょうもなく愚かなの分かってる、ウオー!!!
けど、踏ん張って生きてる。支え合おうよ」
  穂三千、頭を大きく縦に振る。
  真理子は穂三千の決めたことをを応援すると伝える。

◯喫茶店内・レジ前
  店員とやり取りする穂三千。
真理子「いいの?」
  穂三千、弾んだ顔で真理子に向かってウィンクする。



数日後
・真理子がLINEの話題から、里美と康子の話をする。
◯東京都豊島区新大塚・春野真理子宅・個室(昼)
  リビングテーブルに散乱するお菓子やドリンクの空容器。
  ラグマットの上に座って、雑誌に目を通す春野穂三千。  
真理子「そういえば」
  LINEの家族ぐるチャ画面を開く。
  姉妹の里美から、父・篁三の見舞い報告動画が一本届いている。
  流れは自然と、その更新内容の話へ。
真理子「もともとあの子は、周りの人間に気遣いながらじょじょにあの子自身が得する方へ持ってっちゃう。最近は良くなったけど、自己中モードがね…」
穂三千「サトミさんて当たりは強めだけど悪気そんなに無いよね」
  真理子、声を抑えて苦笑する。
  飛び込んできた二本目の動画。篁三の寝癖直しに里美が躍起になる姿に微笑む二人。
  本当は誰よりもいち早く帰って篁三に会いたかった穂三千。
(少し人見知る穂三千にとって、篁三の緩やかな雰囲気で圧さないたたずまいは、とてものびのび過ごせる環境だった。しかし、真理子には…)

[真理子の回想]
小さいとき:じいばあとーちゃん好きっ!
      かあちゃんきょうだいよくわからん
とちゅう:なんかみんなとおい・・・
わかいとき:わたしだけくらくてやぶれかぶれ
さいきん:そうだ、ひらきなおろう。

真理子「で、今このザマ」
  真理子、肥った自らの腹を強く指差す。
  穂三千、真理子の腹に目を移す。
  聞き入り都度疑問を伝える穂三千。丁寧に答える真理子。

  その流れから姉妹全員の両親の馴れ初めから今に至る話になった。
  「そもそも何で」ウチの家族がヘンなのか。[真理子目線で]
馴れ初め:「私らの両親はペンパルカップリングキャンペーンで知り合ってゴールイン。今思うとなんでそんなのにエントリーする?」
穂三千「ふぅん。てか、軽っ。それで今は離れてるのかな?」
真理子「かもね」
  穂三千、手もとにあった柿の種ホワイトチョコの袋を覗き、すこしつまんで口に入れる。

  真理子、
真理子M「来年始まる大河ドラマの主人公・まひろかよ…頭いたい」




―― 今回の素材 ――
どこかの純喫茶
珈琲の画像
https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E4%B8%80%E6%9D%AF%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BC-b26CV37rV78
『イタジョ!』コミック
「サンボマスターは君に語りかける」
平成生まれの歌詠みは即物的な一面が出やすい
あいみょん「マリーゴールド」
『一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ』遠野なぎこ ブックマン社

コメント(1)

ホサチは歌人としてやっていくことに悩んでいるみたいですが、アップされていたもう一編の作品にあった、ホサチの短歌を読むと、逆によく仕事がもらえていたなと感心してしまいました笑笑

ペンパルカップリングキャンペーンって調べても出てこなかったんですが、王都さんの創作なんですか?

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