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意味がわかると怖い話。コミュの謎の行商人、陳 16 (自作、長文)

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(^^)
どうも、俺です。
一年振りくらいの久々の投稿です。


久々に『奴』が登場します。


普通の意味怖も、暇を見つけて書いていきたいと思います。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★




梅雨。



ジメジメとした湿気を帯びる憂鬱な時季。

眩しい顔を見せる晴れ間も、しばらくするとどんよりとした曇り顔へと変化する。

それは、例えるのであれば、親交が深まってきたカップルの様な‥。


そう‥‥‥、ジューンブライドを前に、彼女から婚約を破棄された俺の気持ちそのものだ。

今の俺には、晴れ間も見せない曇り空が、彼女から別れを告げられた日からずっと心の上空を覆っているままだった。


時季も相まって、より一層憂鬱な日々を怠惰に過ごしていた。

3年間付き合っての、しかも婚約破棄。


一体、俺の何がいけなかったのか。

いくら自問自答しても、答え、という晴れ間は顔を出してくれることは無かった。


梅雨は‥‥嫌いだ。


日がな一日、家でじっとしているのも憂鬱さに拍車をかけると思った俺は、目的もなく、ただただ街中をブラついていた。



彼女と初めてのデートで待ち合わせした、この街唯一の広大な公園の一角の木製のベンチに腰掛けながら、陽が落ちていく様子をボンヤリと眺めていた、そんな時だった。


?『雨雨降れ降れ陳サンが〜♪』


一人の中年男性が陽気な歌を歌いながらこちらに向かって歩いて来ていた。


?『蛇の目で‥‥蛇の目て何ネッ!!日本の歌、訳分からないネッ!感性疑うアルッ!』


と、空に向かって声を荒げだした。


?『ピチピチ、チャプチャプ、陳、陳、陳〜♪』

俺『あんたの感性疑うわっ!!』



あれ?


俺、何で見ず知らずの人にツッコミ入れてるんだ?


?『ん?‥‥何処からともなくワタシにお説教たれたのは誰ネッ?かくれんぼしてないで出てくるヨロシッ!』

俺『してねーよっ!! すぐ傍に居るわっ!』


またしても無意識に俺がツッコミを入れてしまったその人間は、


黒の鞄を持った、黒のスーツ、黒のネクタイ、黒のシルクハットを被り、黒のサングラスを顔に装着した髭を生やした中年男性だった。


その風貌からは、まるで


時代錯誤した大正時代の流行ファッションをオシャレと勘違いした中年男性の様だと俺は思

?『イヤー、それにつけても実にジューンブライド日和アル。お兄サン、ジューンブライドについて感動したエピソード話すヨロシ。』

俺『ねぇーよっ!! 嫌な思い出しか無いわっ!!』


なんなんだ、この人の心の傷口を深くえぐるオヤジは。
こんな腹の立つオヤジに関わるとロクなことにならねぇ。


俺はその場を離れようと腰を上

?『まぁ、立ち話もナニネ。座て話すヨロシ。』


そう言うと、腰を上げかけた俺の肩を押さえつけベンチへと座らせた。


俺『ちょっ、なんなんですか、あなたは!! そもそも立ち話してたのあなたの方だろっ!』

?『ワタシの名前は陳ネッ。その当て付けの如く苛立ち、ワタシに向けるオマル違いネッ!』

俺『簡易式トイレかよっ!お門違い、だよっ!当て付けじゃ、ねぇよ‥‥‥。』


そう言ってみたものの、このオヤジ、陳の言っていたとおり、ぶつけることの出来ない苛立ちを無意識の内に陳に対してぶつけてしまっていたのかもしれない。


陳『‥‥気にしてないネ。名前の後ろに、サン付けない、気にしてないネ。』

俺『そっち!?』

陳『嫌なこと、有たみたいネ。初めてお兄サンの蛇の目見た時にチーンと来てたネ。』

俺『ピーンと、なっ! 蛇の目じゃねぇしっ!!』


初対面でも分かるくらいの雰囲気が俺からは滲み出ていたようだ。


陳『何が有たネ? 泥船に乗たつもりで話してみるヨロシ。』

俺『沈没確定じゃねぇかっ!! ‥‥あぁ‥‥‥実は、さ‥‥‥。』


俺はこれまでのことを、会って間もない見ず知らずのオヤジ、陳に話した。

付き合っていた彼女が居たこと。
結婚を目前に婚約破棄をされたこと。

俺が話している間、陳は黙って俺の話を聞いてくれていた。


陳『‥‥なるほどネ。それで、おちんこでてたアルカ。』

俺『出してねぇーよっ!! 変質者かっ! 落ち込んでたんだよっ!』

陳『嫌な思い出消してしまう、これ一番手取り早い手段ネ。』

俺『それが簡単に出来てりゃ、俺も落ち込んでたりしねぇよ。』


第三者が口で言うのは簡単だ。

しかし、現実的に、その事実をまともに喰らった俺からすれば、簡単に思い出を消すことなんて不可能な話であ

陳『可能ネ。ワタシ、実は商人ネ。多種多様な商品持ち歩いてるアル。こちらの鞄、お兄サンの嫌な思い出消すこと可能な商品満載ネッ!』

俺『そんなね、物で思い出を消すなんて出来る訳がな』

陳『おちんこだしたままでいいアルカ?』

俺『変質者かってっ!! そりゃ、落ち込んでいたくは無いけど‥‥。』

陳『では、決まりネ。』


そう言った陳の口元が、一瞬だけ斜め左上に吊り上がったように見えた。

フンフン♪と鼻歌を奏でながら、陳は脇に置いていた鞄の中を漁り始めた。
俺はその様子を両太股に腕を下ろした状態で見つめていた。

しばらくすると


陳『コレ、ネッ!』

俺『何だよ?』


陳が鞄から出した物を俺に差し出した。
薄い一枚の広告用紙みたいだ。


俺『えーと、なになに、結婚を考えているカップルさんにうってつけの挙式プラン‥‥‥披露宴会場の広告じゃねぇかっ!!』

陳『アイヤーッ、傷口に粗塩塗り込んでしまターッ!!悲劇的間違いネッ!!』

俺『くそがっ!!』


俺はその場で披露宴の広告を破り捨てた。


陳『うかりしてたネェ。ごめんなさいネェ。悪気は少ししか無いネ。』

俺『意図的かっ!!』

陳『ワンクッション大事ネッ! それはさて置き、コレが、今回お兄サンにオススメする商品ネ。』


そう言って陳から渡された物は、真っ黒な色をした液体の入った500ml容量のペットボトルだった。


ラベルには


【 思い出ブラックアウト 】


と記載されていた。


俺『まさかとは思うが、コレ、飲み物じゃないよな?』

陳『見るからに清涼飲料水ネ。』

俺『どこがっ!? コーラならまだ炭酸も出てるし馴染みもあるから黒くても大丈夫だけど、コレ、あからさまにヘドロ』

陳『コチラの商品、腰に手を当てて一気に飲み干すヨロシ。風呂上がりのコーヒーミルクと同じアル。一息ついてから飲むことオススメするネ。 冷やして飲むこと、コレ、効果無いネェ。飲み心地、非常に最悪、悲劇的後味ネ。 ワタシだたら、死んでも飲みたく無いネッ! さ、飲むヨロシ。』

俺『ちょっ、後半っ!! 後半の説明いらないだろっ!』


陳は、渡した商品について一気にまくしたてた。
質問する暇を与えないといったような雰囲気も感じられたが、それよりも、得体の知れない目の前にある黒色の液体に目が奪われていた。


陳『1万2000円ネ。』

俺『高っ!! 成分表示が何処にも記載されていないんだけど。』

陳『半分は優しさで出来てるネ。』

俺『風邪薬かっ!優しさ、って何だよっ! ちゃんとした成分説明しろよっ!!』

陳『飲み心地最悪な液体飲んだ後の胃への負担軽くする緩衝制酸剤が優しさの正体ネ。』

俺『真面目かっ!! それなら、もう半分はっ?』

陳『気合いネッ!!』

俺『そこは真面目じゃねぇんだっ!!』

陳『さっ、買うか購入するか、YESか、はい、で答えるヨロシッ!』

俺『拒否権は無いのかよっ!!』


【 思い出ブラックアウト 】


俺は手元にある得体の知れない飲み物を本当に購入するかどうか迷

陳『毎度ありネーッ!』

俺『迷う時間すら与えてくれないのかっ!! 分かった、分かったよ!買うよっ! 飲んで思い出消してやるよっ!』

陳『シェイシェイネッ! その決断力の早さ、ワタシが見込んだだけアルネッ!』

俺『なかば強制だったけどなっ!』


俺は財布から1万2000円を取り出すと、陳へと渡した。


陳『たしかに、受け取たアル。ちなみに、それ飲むと、悲しいことにワタシと出会たこともオマケで消えてしまういう悲劇的結末待てるネ‥‥‥。』

俺『別に悲しく無いからいいよ。』

陳『アイヤーッ、なんたることネッ!!』

俺『じゃあ、帰ってから飲むとするよ。じゃあな。』

陳『ツァイツェンネーッ!』


陳と別れた俺は、既に夕闇へと変わりつつある空の下、自宅へと歩を進ませていた。


【 思い出ブラックアウト 】


これで嫌な思い出、全部消してやる。
落ち込んでいた日々ともお別れだ。


俺の心の上空に、うっすらとだが、晴れ間が顔を覗かせていた様な気がした。




━━━ 翌日 ━━━



中年男性『雨雨降れ降れ陳サンが〜♪』


一人の中年男性が広大な公園を歌いながら歩いている。


中年男性『ピチピチ、チャプチャプ、陳、陳、陳〜♪』

男『あんたの感性疑うわっ!!』



木製のベンチに座る、肩を落として覇気の無い表情を浮かべた男性が、歌っていた中年男性に対してツッコミを入れていた。



コメント(14)

コメイッチバーン(o´罒`o)

ピッチピッチチャップチャップ陳陳チーン(°_°)
夜中に読んでひとり爆笑。
子供に歌わせちゃダメだァ

(■Д ■)
ループ?
はたまた似た境遇の被害者が?
忘れたのは陳さんに逢って「思い出ブラックアウト」を買ったことだけ(笑)永遠に陳さんにカモにされる予感(o^ O^)シ彡☆
梅雨があけるまで繰り返される惨劇かな……?w
ヘドロ状の飲み物の味は飲んだことすら忘れたくなるお味なのね(笑)
>>[1]

(^^)
登校中の無邪気な小学生が歌ってましたよ(笑)
陳ver.で歌って欲しいですね←
>>[2]
(^^;
また、ではありません。

内容としては、近いかもしれません。
>>[3]

(^^)
ある意味ループです。
ですが、単なるループではありません。
>>[4]

(^^;
もちろん、買わされた【 思い出ブラックアウト 】のことも謎の行商人のことも忘れてしまっていますが、永遠にカモられる、ということではありません。
>>[5]
(^^;
梅雨明けまで繰り返される‥‥、近いような、そうでないような‥‥。

ヒントは、嫌な思い出を消せる、ということです。
また、思い出を消してしまったことによるジレンマ、がヒントです。

(^^)
もしよろしければ、1本お飲みになりますか?←(笑)
>>[007]
なにか大事なことを忘れている気がするから思い出したいのに、思い出せなくて凹んでいる→陳からまたクソ不味いドリンクを買わされる。
という流れですか?
陳さーん!!!
陳さぁぁーん!!!!!!!

気づかずすみません(°□°;)
私もコメ1書きたかったぁ(;ω;)

陳さん新作exclamation ×2ほっとした顔ほっとした顔
やっぱり陳さんいいですね〜(≧∇≦)

雨雨降れ降れ陳サンが〜♪
ピチピチ チャプチャプ陳、陳、陳〜ほっとした顔

陳さんが歌ってるところ想像つくー!笑

あと『それで、ちんこでてたアルカ』も笑っちゃいました(≧ω≦)ププッハート

陳さんの読んでると
陳さんに会いたくなっちゃう…(//∇//)


陳さんを生み出したジロさんはすごいと思います!
何がきっかけで陳さんを生んだんですか〜??目がハート
陳さんホント大好きです!!
陳さん読んでると、ほっこりします(*^^*)
>>[11]

(^-^;
すみません、コメントに返事をさせて頂くことをうっかりしていました。
いつもコメントありがとうございます。

とりあえず、その流れが今回の意味怖の正解になります。

‥‥が、この内容で別の展開に持っていく続編も作れそうですね(笑)
暇を見つけて続編(意味怖有り)を作りたいと思いますが、よろしいでしょうか?
>>[12]

(^^)
長らくお待たせ致しました。
ご要望を頂きましたので、新作を上げさせて頂きました。
拙い文章ながら、楽しんで頂けてなによりです。

謎の行商人は、そもそもシリーズにするつもりはサラサラありませんでした。

しかし、ただ怖いだけの話もマンネリ化しますので、怖さの中にもほんの少しの嘲笑を含めた話も面白いかな、と思い、なんやかんやでかれこれ4年程不定期に掲載させて頂いている、という感じです。

謎の商人のことは、書き手である俺にも謎なので、明確なことは言えませんが、似たような格好をした笑顔の絶えない『笑うせぇるすまん』の彼に、ライバル意識を抱いているようです。

長々と申し訳ありません。

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