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生活保護者の集いコミュの厚労官僚による「物価偽装」を違法と判決 調査報道は背景を深掘りせよ

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https://news.yahoo.co.jp/byline/mizushimahiroaki/20210225-00224331/

“無理筋”の政策を法律違反と断じた画期的な判決
「パソコンやテレビ、ビデオレコーダーの値段が下がっている。だから、生活保護費も下げる」。

 簡単に言えば、そうした口実で厚生労働省は「最後のセーフティーネット」とされる生活保護の基準額を2013年から15年にかけて次々に引き下げた。

 口実とされた「物価」の算定は、パソコンやテレビ、ビデオレコーダーなど、生活保護を受けている人たちにとって影響が少ない物品の値段が使われる独特な計算方法。生活保護費を引き下げるためにわざわざこれらを選んだとしか思えないような恣意的ともいえる物品の選択。さらに極端に物価水準が上がった特異な年を起点として物価下落を算定し、消費者物価指数を大きく下回る下落があったとして数字を算出。結果として生活保護費のうち、光熱費や食費など生きていくために必要な費目を支える「生活扶助費」は最大で10%も引き下げられた。戦後最大とされる大幅な減額だった。

 憲法25条の「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という条文に裏打ちされた生存権が厚生労働官僚による「数字の操作」でないがしろにされていた。

 2021年2月22日、生活保護の受給者が国や自治体を訴えた訴訟で大阪地方裁判所は判決で生活保護の基準額の引き下げを違法とする判断を示し、違法な数字の算定があったと認めた。

 1950年に施行された現在の生活保護法。今回の判決は71年におよぶ生活保護の歴史の中でも画期的と言えるものだった。

 生活保護の基準額をめぐる裁判では、憲法25条違反を理由として生活保護の基準額が低すぎるとして国を訴えた朝日訴訟の1審で原告勝訴となった東京地裁判決(1960年)が今も語り草になるほど有名な判決だ。2審の東京高裁判決(1963年)で原告が敗訴したものの生活保護の権利性をめぐって最高裁や憲法学者らが大きな議論を巻き起こした。

 2021年の大阪地裁判決は生活保護の基準額についてその算定のあり方に裁判所が正面から向き合った本格的な判決だった。

統計を調べて「物価偽装」と断じた新聞記者がいた
 今回の裁判で争点になった生活保護の基準額の引き下げにあたって厚生労働省の官僚たちが「口実」にしたのが、「物価水準の下落」だった。一般的に物価水準が下がって様々な物品が安く買えるようになったのだから生活保護費も下げていいという理屈だ。

 ところがこの下落幅を算定するにあたって、厚生労働省は実際には生活保護を受けるような低所得者層の生活に直結する食料などの必需品や光熱費よりもそれらの人たちがあまり購入しないパソコンやビデオレコーダーなどの電化製品の影響を大きく計算していた。

 その事実を紙面で暴いたのが、中日新聞の生活担当の編集委員だった白井康彦さん。白井さんは「生活保護削減のための物価偽装を糾す!―ここまでするのか! 厚労省」(あけび書房)という著書で2014年に世に問うている。この著書の紹介文では以下のような厚労省の“罪状”を並べている。

生活保護をさらに受けづらく、額も削減しようとする厚労省。不正受給は厚労省統計でも0.5%にすぎないにもかかわらず、いかにも膨大であるかの報道、バッシングの嵐。そしてついに、生活保護基準額引き下げのために物価統計の偽造にまで及んだ厚労省。

生活保護バッシングをあおり、物価指数を偽装してまで生活保護を大幅削減する厚労省。

 白井さんは中日新聞を定年退職した後でフリージャーナリストとして取材活動を続けながら、生活保護基準の減額を違法だとして29都道府県で受給者が起こしている訴訟で原告を支援する立場で証人として法廷にも立っている。

 厚労省の「無理筋」な生活保護の減額に対しては、専門家も疑義を唱えている。かつて厚労省の社会保障審議会の生活保護制度の在り方に関する専門委員会の委員長や生活保護基準部会で部会長代理などを務めていた社会保障制度の専門家の岩田正美さん(日本女子大名誉教授)も名古屋地裁で行われた裁判では原告側の証人として証言した。朝日新聞は2019年10月15日の記事でその様子を伝えている。

「財政削減のために、私たちは利用されたのかも知れない」

 岩田正美・日本女子大名誉教授は、そんな胸の思いを法廷で語った。岩田さんは貧困研究の第一人者として知られ、厚生労働省の社会保障審議会・生活保護基準部会で部会長代理を5年以上務めた経歴を持つ。その岩田さんが原告側の証人になることは注目され、10日は96席の傍聴席がほぼ埋まった。

生活保護基準の引き下げは第2次安倍政権での「無理筋」の政策変更の一つ
 第2次安倍政権で強行された「無理筋」の政策変更は数多い。

 憲法の条文を変えることなく国の安全保障対策を180度転換させた集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更はその典型だ。それまでの政権が憲法上「行使できない」とされていた集団的自衛権を第2次安倍政権は(内閣法制局長官の)人事などを通じて官僚たちを従わせて強引に解釈を変更させて「行使できる」と押し通して、安全保障法制を立法化した。有力な憲法学者たちが反対の論陣を張ったにもかかわらず。

 森友学園の問題では、財務官僚が上司の命令で文書の改ざんを行い、担当していた官僚の一人が自殺に追い込まれるという悲劇まで起きていた。

 メディアの報道であまり大きな論点にはならなかったが、そうした「無理筋」政策の一つに生活保護の基準額の引き下げもあった。政治が力で官僚たちをねじふせ、従わせ、法律違反と言えるような強引な「物価偽装」に手を染めさせていたのだ。

 その末の生活保護費の削減に対して、法律の番人である裁判所が「NO!」を突きつけたのが今回の大阪地裁の判決だ。

 朝日新聞の清川卓史編集委員は2月23日の朝刊記事に以下のように書いている。

 生活保護基準の減額決定をめぐる22日の大阪地裁判決は、憲法が保障する「最低限度の生活」の範囲を決める国の判断を違法と指摘するものだった。制度を利用しない人にも影響が及ぶ生活保護の基準。判決は、引き下げを続ける行政の政策に影響を与えるのか――。

 生活保護基準額は、国の公式な「貧困ライン」であり、就学援助や最低賃金、個人住民税の非課税限度額など生活保護の受給者以外の貧困層が関係する多くの制度に影響がある。このため、「物価偽装」で算出された基準額で揺らいだ生活保護制度への信頼をとり戻すために、と清川編集委員は次のように結論づけている。

誰もが納得するデータを用い、利用者や専門家の声に真摯に耳を傾けて、保護基準の再検討に踏み出すほかはない。

 上記の朝日新聞の記事は紙面では1面と3面、さらに33面(社会面)にも掲載されて、大阪地裁の判決を伝えるニュースの中では歴史的な流れや判決の意義などの解説、さらにその影響や原告の思いにまで踏み込んだ多角的な報道だった。一方でその他のマスコミは心もとない。

 特にテレビはNHKが「ニュース7」や「ニュースウォッチ9」などで扱ったものの解説はなく、民放キー局にいたっては、まったく報じないか、報じても1分程度の扱いだった。

「たこつぼ型」で視野狭窄の“オールド・メディア”
 一般的に裁判所の判決文のニュースはその裁判所を管轄する地域の司法担当が取材して報道する。今回でいえば大阪地裁担当の司法記者。事件、事故をはじめとして数多くの裁判を担当する。だが、今回の大阪地裁判決のニュースは大阪の司法担当だけでは深い記事を書くことができない種類のものだ。もっと生活保護制度についての知識が必要だ。

 たとえば民放は今もなお大阪局の司法担当の記者がニュース原稿を書くから、生活保護行政全体のことを理解していないと原稿を書くことはできない。

 新聞やテレビなどの「オールド・メディア」は、分業があまりにも進みすぎている。それゆえ、裁判の記事は司法記者、厚労省担当は厚労省…、と「たこつぼ」のように狭い世界で四苦八苦してしまうのが現状だ。

 たまたま朝日新聞の場合は、「これは生活保護行政全般に影響を与えかねない画期的な判決だ」と声を上げる記者がいたから、1面での扱いになったのだろう。

 だが、それさえもやはり「オールド・メディア」の狭い世界に閉ざされているように筆者の目には映る。

 なぜなら、少し視野を広げてみれば、この「物価偽装」はいろいろなニュースにつながっている根の深い問題だからだ。

 それは「政治主導」という名の下に霞ヶ関の官僚たちが国民のための奉仕者という意識やプライドをなくし、権力者のいいなりになり、あるいは忖度して筋を曲げ、公務員として何よりも大事にすべきはずのデータや文書記録などをないがしろにしてしまう姿と重なっていく。

「桜を見る会」をめぐるデータの紛失
財務官僚たちの文書改ざん
総務官僚たちと首相の息子の会社との会食
 奇しくもデータや文書管理を大切にしてきたそれまでの日本の官僚たちの習慣を空洞化させてしまったのは第2次安倍政権とそれに続く菅政権である。

 中央官僚たちも本来は無能ではないはずだ。政治主導で、官僚の人事や評価への政権主導が強まっていく中で「忖度」して、この「データ偽装」「改ざん」「紛失」などが行われたのではないだろうか。報道機関はこの点をきちんと検証してほしい。

 残念なことに強大な政権が続く中で本来の仕事ができなくなってしまっているのは中央官僚だけではない。報道機関も同じだ。新聞やテレビなどが発端になって、国会で議論になったようなスクープがどれだけあっただろうか? まったくなかったとまでは言わないが、記憶に残るような鮮烈なスクープは新聞やテレビ発ではなく、ほとんどが「文春砲」が発端だった。

 総務官僚と首相の息子、検事長の賭け麻雀、緊急事態宣言中の与党議員の会食…。最近思い起こせるものだけでも「文春砲」の威力が分かる。

 週刊文春は総務省の幹部たちと衛星放送事業社の役員をしている菅首相の長男との飲み屋での会話を録音していた。新聞やテレビなど主要な「オールド・メディア」が避けてきたゲスな取材方法である。しかし、その取材方法が政治や社会を動かし、報道機関の大きな役割である権力監視を果たしていることも間違いのない事実だ。

今こそ「政治分野の調査報道」の出番だ
 そうした中で「オールド・メディア」には、もっと官僚たちの責任を追及していくような調査報道を望みたい。今回の物価偽装に伴う生活保護基準の引き下げによって、生活保護の受給者だけでなく、就学援助の対象者など様々な低所得の人たちが理不尽な形で支給額を削られてしまい、より苦しい生活を強いられたのだとしたら、それは許されない行為ではないだろうか。匿名の官僚たちによる机上の問題として見過ごすわけにはいかない重大な問題だと考える。

 そんな政策を推し進めた責任者は誰なのか。

 当時の生活保護行政の責任者、社会・援護局長や保護課長らがどのように関与したのかを取材して伝えていくことは報道機関の大事な役割だろう。

 縦割りの省庁にならって「たこつぼ型」で考えるのでなく、政治の意思を官僚たちがどう政策に移していったのか。果たして「無理筋」だという自覚はあったのだろうか。

 広い視野でのそうした検証報道をこれから進めてほしい。

 コロナショックとも言えるかつてない不況が日本中を襲っているなかで、いざという時に低所得の人たちを支える大切な生活保護の基準額は、公正に客観的に信頼できる算定方式で定めていくべきだと強く思う。

水島宏明
上智大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター
1957年生まれ。東大卒。札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー『母さんが死んだ』や准看護婦制度の問題点を問う『天使の矛盾』を制作。ロンドン、ベルリン特派員を歴任。日本テレビで「NNNドキュメント」ディレクターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。『ネットカフェ難民』の名づけ親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。2012年から法政大学社会学部教授。2016年から上智大学文学部新聞学科教授(報道論)。放送批評誌「GALAC」編集長。近著に「内側から見たテレビーやらせ・捏造・情報操作の構造ー」(朝日新書)、「想像力欠如社会」(弘文堂)

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