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生活保護者の集いコミュのあるひとり親家庭のための会議 青山さくら・児童福祉司

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https://mainichi.jp/premier/health/articles/20210209/med/00m/100/006000c

児童相談所に寄せられた個々の子どもの家庭への対応について、関係機関が話し合う、個別ケース検討会議というものがある。

 ある冬の日の夕方、子どもたちがみんな下校してしまった小学校に、関係者が集められた。市役所の子ども支援課、生活保護のケースワーカー、保健師、スクールソーシャルワーカー、主任児童委員、そして私たち児相。時間通りに集合したのに、「職員会議がまだ終わらないから」と待たされた。

 外は雪が降っていて、学校の廊下で待っていると寒くて凍えそうだ。見かねた司書教諭が、図書室にストーブをつけて入れてくれた。暖かい。ほっとしたら、目の前に、色とりどりの児童図書が広がっていた。木製の低い書架の上段に絵本の表紙が並べられていて、誰かが「わあ」と声を上げた。木造の古い図書室はどこかなつかしい。さっきまで、「こんな雪の中、待たされるなんて」「かなわないね」「早く帰りたい」とぼやいていた人たちが、思い思いに本を広げて読み始めた。

 私も、「点子ちゃんとアントン」(エーリッヒ・ケストナー著、岩波書店)を見つけた。私が小学生の頃、この本を一緒に読んだ友達は、点子ちゃんにそっくりなおてんばで……でも、13歳で病気で亡くなったのだった。

 30分以上待たされ、ようやく会議が始まった。部屋が暖かいから会議もそのまま図書室ですることになった。絵本の効用か、みんなおだやかな顔をしている。しかし、小学校の校長、教頭、担任は厳しい表情だ。


母はうつ、6人の子は引きこもりと不登校
 その家庭は、母と子どもが6人。一番上のお姉ちゃんは、高校を中退し、引きこもっている。中学3年次女と中学1年長男、小5三女、小3四女、小1次男。全員が不登校だ。母は、ひどいうつ病で、朝起きられず、子どもたちを学校に送り出すことができない。子どもたちも、母が心配なのか、母から離れようとはしない。学校に行かないことが子どもの意思であったとしても、子どもに教育を受けさせることを怠る、親の教育ネグレクト(育児放棄)だと言える。

 どの関係者も、家の中に入ったことがなく、子どもたちの暮らしぶりがわからない。学校が家庭訪問しても扉を開けてくれない。生活保護の担当ケースワーカーも「いつも玄関でお母さんと話すだけ」。ケースワーカーと子ども支援課の職員が家庭訪問して、ひとり親家庭が使える家事援助サービスについて説明したが、母は拒否したという。母の主治医(精神科医師)が保健師を紹介しようとしたが、「相談することはありません」と答えたという。


 「権限のある児相が子どもたちを保護したらいい」と誰かが発言した。

 こうして責任を押し付けられる場面を、これまで何度も経験してきた。先に予防線を張っておこうと「そうですねえ…児相としても、子どもたちの一時保護を今後検討しなければならないとは思いますが……」と、私が気の抜けた議会答弁のような発言をすると、司書教諭がおそるおそる手を上げた。

流れを変えた司書のひとこと
 小3四女が時々図書室に遊びに来ているらしい。「おりがみがとっても上手で、雪だるまやキャンドルなどを器用におって、好きなゲームのキャラクターの話をよくしてくれるんです」。へえーとみんなが驚いた。すると「図書室に来たら私に連絡ください。私もあの子と仲良くなって、帰りはうちまで送ります。玄関先で母に言葉をかけるだけでもできたら」とスクールソーシャルワーカーが言った。主任児童委員も「そういえば私が犬の散歩をしていると、あの子をよく見かけるわ。今度、声をかけてみます」。「小3四女が学校に来るようになったら、小1次男もつられて登校するようにならないかな」と校長も少し希望を持った表情で語った。

 あの家とつながるきっかけを作っていこう。話し合いがそんなふうに傾いていく。ケースワーカーも「手続きが必要とかなんとか理由をつけて、今度、母を市役所に呼び出してみます」。保健師も「その時、私も同席させてください」と発言。会議の雰囲気が明るくなってきた。「できることをみなさんで手分けしてやっていきましょうよ」。年配の主任児童委員の女性がその場をまとめてくれた。

 いい会議になったなあと思った。図書室で本に囲まれて話し合いをしたのがよかったのかな。この家庭が、これからどう変わっていくかはわからないけれど、関係機関が知恵を出し合って、今できることを考え、粘り強く支援していこうという方向が見えたことが大事だと思った。同時に、「保護を検討」などと、気持ちが入らないような発言をした自分が恥ずかしい。13歳で亡くなった友達を思い出して、なんだか申しわけない気持ちになった。

 
 
「くらしと教育をつなぐ We」(フェミックス)より一部加筆し転載。

(登場する人物や家族背景などはプライバシー保護のため事実とは異なる表現にしています)

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