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生活保護者の集いコミュの「デフレによる物価下落」は事実なのか? 不明瞭な根拠による生活保護基準引き下げへの疑問

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生活保護のリアル ダイヤモンドオンライン みわよしこ

http://diamond.jp/articles/-/35249

2013年4月16日に、平成25年度予算案が衆議院を通過した。この予算案には、生活保護基準引き下げ方針によって削減された生活保護費が含まれており、5月15日、参議院において自然成立となる見通しだ。

今回は、前回に引き続き、衆議院・予算委員会での生活扶助相当消費者物価指数(生活扶助相当CPI)をめぐる議論を中心に紹介する。現政権の閣僚・厚生労働省・総務省などは、どのように認識しているのだろうか?

8月に迫る生活保護基準引き下げ
最大の根拠は「デフレによる物価下落」

 この8月から生活保護基準の引き下げが実施され、生活保護当事者に支給される生活扶助費の減額が行われる予定である。まず、生活保護基準引き下げに関する厚労省方針を確認しておこう。

 引き下げ幅や金額は、居住地・年齢・世帯構成によって異なる。これは、生活保護基準がもともと、それらの要因の影響を考慮して定められてきていることによっている。社会保障審議会・生活保護基準部会は、各要因の影響の程度が実態に即しているかどうかを検討し、2013年1月に取りまとめた報告書において、実態との間にズレがあることを指摘した。この結論は、生活保護基準引き下げに対して、「ゆがみ」の是正として反映された。結果、引き下げ額は、世帯構成等によって異なっている。なお基準部会は、ズレがあることは指摘したが、「だから引き下げるべし」という示唆を全く行なっていない。

 厚労省が試算した引き下げ額は、以下のとおりである(『生活保護制度の見直しについて』5ページ)。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002udvb-att/2r9852000002uf0t.pdf

http://diamond.jp/mwimgs/e/2/-/img_e2b5c46438f618404c46f56a2cc6f136188500.png

 子育て中の世帯、特に「夫妻+複数の子ども」という構成の世帯で最も引き下げ額が大きく、パーセンテージでは7〜8%程度にも達する。その他の世帯でも、多くは大幅な減額となる。町村部の高齢者に対しては、わずかな増額となる場合もある。これは、現在まで、地方での生活コストが実態以上に低く見積もられていたことによっている。

 しかし、「ゆがみ」の是正による生活保護費減額は、ごく一部である。厚労省は、デフレによる物価下落を反映し、生活保護費を減額する方針としている(『生活保護制度の見直しについて』4ページ)。物価下落幅は、4.78%であったという。また、減額される生活保護費のうち86.6%が、物価下落を反映したものである。



 もしも、この物価下落が事実ではないとすれば? 生活保護当事者たちは、事実無根の物価下落によって、現在でも「健康で文化的な最低限度の生活」に充分とはいえない生活保護費を、さらに引き下げられることになる。

消費実態をどう考慮したのか不明の
「生活扶助相当CPI」

 消費者物価指数(consumer price index: CPI)は、消費実態を考慮して計算される。「何をどれだけ購入しているか」だけが消費実態、というわけではない。最終的な消費の選択には、「その物品を購入しないという選択肢があるか」「その物品の代替品があるか」など数多くの背景が影響している。たとえば、都市部の健常者にとっては、「自動車は高価なので購入しない」は自然な選択だ。ホウレンソウが値上がりした時にコマツナの価格が変わらないのであれば、コマツナを買えばいい。現在の日本ではコメより小麦粉の方が安いので、「コメが値上がりしたので小麦粉を買う」という選択もありうる。しかし、「コメも小麦粉も値上がりして買えず、イモはそれ以上に値上がりしているので、炭水化物源の購入を断念する」という選択はありえない。

 一般に、食に関する支出の比率は、「エンゲル係数」に見るとおり、低所得層ほど高くなる。日常生活が経済的困難に直面していればいるほど、命をつなぎ健康を守るために、食の意義が大きくなる。低所得層では、食だけではなく、住環境・衣料・教育なども含め、生命・生活の維持に対して切実な支出が、支出のうち大きな比率を占めることになる。低所得層の消費の特徴は、切実な消費を必要最低限に確保し、そのためにも「あったら嬉しい」「あった方がよい」というタイプの消費を抑制せざるを得ない生活の中で、社会生活の維持や「生きがい」を可能な限り確保するやりくりである。

 今回、実現へと向かいつつある生活保護基準引き下げは、生活保護世帯の物価指数である「生活扶助相当CPI」で物価下落が見られたことを根拠としている。。しかし、厚労省が独自に計算した「生活扶助相当CPI」は、本連載第21回で紹介したとおり、実態を正確に反映しているとは考えにくい指標だ。最も疑問が持たれているのは、生活保護世帯での電気製品購入を、実態より過大に考慮している可能性だ。

「大幅の物価下落と見せかける目的で、生活保護世帯が、価格下落幅の大きな電気製品を多く購入していることにしたのでは?」 

 という「下司の勘ぐり」をしたくなってしまう。

生活保護世帯の消費実態は
毎年、調査されているが…

「生活扶助相当CPI」は厚労省による推計だが、その厚労省は、生活保護世帯の消費実態を把握していないわけではない。

 厚労省は毎年、「社会保障生計調査」という実態調査を行なっている。全国から、生活保護世帯を約1000世帯抽出し、収入・支出ともに詳細な記録を求めるものだ。支出は「5月9日、食料品等1980円」ではなく、「コメ2kg700円、小麦粉1kg230円、ニンジン3本98円、単3電池4本98円……」のように、詳細に記録される。

「社会保障生計調査」の結果は集計され、年ごとに公表されている(『政府統計の総合窓口』)。費目別の集計結果も公表されているが、「食料」「水道・光熱」「家具・家事用品」という大区分ごとの集計となっている。このため、たとえば電気製品に関する支出金額は、公表されている集計結果からは知ることができない。電気製品は、「家具・家事用品」「保健・医療」「交通・通信」「教育」「教養・娯楽」のいずれにも含まれる可能性があるからだ。

 しかし、社会保障生計調査の調査票の原本は、厚生労働省内に少なくとも1年間は保存されている。また、調査票の集計は外部の業者に委託されているのだが、調査票から入力されたままの「コメ2kg」「単3電池4本」レベルの記録が残されているはずだ。それを再度集計すれば、「生活扶助相当CPI」という新しい指標を持ち出すまでもなく、生活保護世帯の消費実態は明確になる。

 もっとも、あるケースワーカー経験者によると、

「この調査は、『今年は、A市から2世帯』という形で求められて、私たちが対象世帯を選ぶんですけど、几帳面な方じゃないと無理なんですよ。ふだんから、家計簿をつける習慣を持っているような。だから、生活保護世帯の中でも、やりくりが上手な方に偏る傾向があるかもしれません」

 ということだ。もしかすると、社会保障生計調査の対象となっている生活保護当事者は、やりくり上手なゆえに、平均的な生活保護世帯よりも多く電気製品を購入しているかもしれない。その比率は、厚労省が言うように4%以上であるかもしれない。

 いずれにしても、「生活保護世帯にとっての消費者物価は下落しているはずだ」を根拠として、生活保護基準を引き下げるのであれば、事実そうであるかどうかを明確にする必要があるだろう。

低所得層ほど
物価下落の恩恵を受けていない現実

 2013年4月12日、衆議院予算委員会・第五分科会において、長妻昭衆議院議員(民主党)は、田村憲久厚生労働大臣(自民党)に対し、主に社会保障生計調査に関する質疑を行った。


2013年4月12日、予算委員会で質問する長妻昭議員(「衆議院インターネット審議中継」の動画よりキャプチャ)
 長妻氏は、この質疑の最初に、

「生活保護、究極のセーフティーネット。このセーフティーネットは、ほかの政策と異なりまして、これにほころびが出ると、最後はありませんから、死が待っているとなりかねないので、これは細心の注意を払って議論するということが重要だと思います」

 と前置きし、2008年(平成20年)から2011年(平成23年)にかけての物価下落について、低所得層ほど物価下落の恩恵を受けていない可能性を

「直観的に、余り食料品なんかは物価は下落しないような気がするわけで、電気製品とか、高級家電とかは結構下落しているイメージがある」

 と指摘した。また、

「一般の方と生活保護の世帯と、どちらが全消費に占める電気製品の割合が多いかというと、生活保護を受けている方々の方が少ないと普通は思うわけなんですが、これは2倍近く多いというふうになっている。これが非常に大きく影響しているんですね、下落幅が大きい」

 と述べた。厚労省が生活保護世帯における電気製品に対する支出比率としている「4.19%」は、実態よりもずっと大きい可能性がある、ということである。

 デフレによる物価下落の恩恵は高所得層ほど大きく、低所得層ほど小さい。参考人として出席した総務省職員も、この事実を認めた。収入五分位別(収入の低い方から高い方へ、日本の全世帯を20%ごとに区分)の消費者物価指数が、2008年から2011年にかけてどれだけ減少したかを比較すると、収入の低い世帯ほど下落幅が低かったのである。全体では2.4%の下落、収入が最も低い第一五分位(2人以上の勤労者世帯、世帯年収430万円以下)では2.1%の下落であった。生活保護世帯での消費者物価指数の下落幅は、第一五分位よりもさらに小さいであろう。少なくとも、厚労省のいう「4.78%」は、物価下落を過剰に見積もっている可能性が高い。

 しかし、実態が明確になっていないのに「多すぎる」「いやそんなことはない」と議論しても、水掛け論にしかならないであろう。

税金で行なっている調査が
「精緻ではない」?

 そこで、長妻氏は調査を求めた。それも、新規に大規模な調査を行うのではなく、既に厚労省内にある「社会保障生計調査」の結果を再利用することを提案した。その提案に対し、田村憲久厚生労働大臣(自民党)は、以下のように答えた。


2013年4月12日、長妻昭議員(民主党)の質問に答弁する田村憲久厚労大臣(「衆議院インターネット審議中継」の動画よりキャプチャ)
「調査と言われても、この資料自体が、まあ、非常に精緻にはしておりません、このサンプル調査。で、この1000という数字も、充分ではございません。で、そういうものを仮に使った調査をしたとしても、実際問題、生活保護世帯の消費実態、たとえば都市部に多いですとかね、高齢者世帯が多いというようなものに、そのまま適用できるような物価下落の数字が出てくるとは、われわれ思えませんので。これはなかなか、そのような形で調査をするというものには、値しないのではないかと。このように思っております。さらに申し上げますと、精緻なものを作ったとしても、実際問題、何に活用していくのかという問題があります」(衆議院インターネット審議中継・ビデオライブラリ3:15:15)

 社会保障生計調査は精緻ではなく、「1000世帯」というサンプル数も不十分であり、生活保護世帯の消費実態を明確にするためには利用できない、というのである。また、消費実態を明確にしうる調査も、「何に活用していくのか」というのである。筆者から見れば、「消費実態という根拠なしに、生活保護基準を引き下げてよい」と言っているのも同然だ。

 ちなみに、ある統計学者は、「1000世帯」というサンプル数に関して、「サンプルが無作為に抽出されていれば、少ないわけではない」と語る。社会保障生計調査は、調査票を記入できる生活保護当事者を前提としているため、真の「無作為抽出」とはいえないかもしれないが、実態を把握する一助にはなるであろう。しかし、田村厚労相は「調査をするというものには、値しない」というのである。

 この予算委員会の会場には、厚生労働省の社会・援護局長である村木厚子氏の姿もあった。長年、障害者福祉に関わってきた村木氏は、障害者に対して教育・社会訓練の機会が現在も充分でなく、そのことが成人後の障害者たちの深刻な貧困につながっていること、障害者の相当数が今後も生活保護を命綱としていることを、実感ベースで良く知っているはずだ。村木氏は、どのような思いで、この応酬を聴いていたのだろうか?

 生活保護、それも生活保護基準の引き下げ幅に関してだけでも多大な争点が解決されないまま、2013年度(平成25年度)予算案は、4月16日午後、与党の賛成多数により衆議院を通過した。予算案が成立し、生活保護費引き下げが予定どおり2013年8月から実施されれば、集団訴訟の可能性もある。「必ず、3年間かけて、生活保護費の引き下げを完全に実行する」ではなく、「とりあえず、今年限り」としておけば、修復も容易なはずである。しかし、厚生労働省と自民党は、その選択をしなかった。

 なお5月9日現在も、参議院予算委員会において、社民党・共産党の議員が質疑を続けている。「生活保護世帯にとっての物価下落」という事実に根拠が薄いことは、少しずつ明白になりつつある。

次回参院選で
発言力ある野党をなくさないために

 筆者は、民主党を積極的に支持しているわけではないし、民主党のすべての議員を支持しているわけでもない。個人的には、民主党政権に「裏切られた」という思いもある。

 しかし、発言力のある野党があり、その政党にベテランといえる政治家たちがいることの意味は、軽んじられるべきではない。野党が「永遠の野党」でいるしかなく、「口先だけ、実行できない」と非難されつづけるとしても、一定の政治力を持つ異論の人々は必要だ。政治が民主的に運営されているということは、異論の人々に居場所があるということである。その人々が激しい批判を続けていれば、ものごとの変化は良くも悪くも妨げられる。望ましい方向への変化も妨げられるかもしれない。しかし、異論がない、あるいは異論の声が小さすぎる状態を、「政治的に健全」と呼ぶことはできないだろう。

 自民党政権が成立して半年が経過しようとしている現在の動きの一端として「社会保障制度改革国民会議」に注目していただきたい。生活保護基準引き下げに反対する人々は、生活保護当事者に対する影響だけではなく、一般低所得層への影響、さらには医療・年金などへの悪影響が国民全体に及ぶ可能性を危惧していたのだが、その危惧が現実のものになろうとしている。現在、同会議では意見を募集している(2013年5月15日まで『意見募集』)ので、ぜひ、この機会を逃さず、ご意見を表明していただきたい。

「年金が取られ損になる将来はイヤだ」「医療を受けられずに殺される高齢者になりたくない」「自己責任論に怨怨怨怨怨」といった一言だけでも、貴重な意見であろう。異論や違和感がありながら何も言わずにいたら、ただ押し流されてしまうだけだ。

 次回は、生活保護当事者の声を紹介する。8月に予定されている生活保護基準引き下げに対し、当事者は、今、どう感じているのだろうか? そして、どのように対処しようとしているのだろうか?

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