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さしゃの二次小説(ハリポタ)コミュの本編第十六章 惨劇9

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ハリポタ二次小説 レナスの物語

第十六章 「惨劇」9 翼



事は一刻を争う、緊迫した状況だった。

夥しい量の出血が床にまで広がり、狂った様に全身がガタガタと痙攣をするレナス。
瞳孔は開き、口から血泡を吐き出している。



全ては、片翼をもぎ取られた為。



倒れたレナスを力強く支えるスネイプと、その脇に立ち、目の前にいるヴァンパイアを警戒するシオン。


ヘルは、この上な、至福の時の様な笑みを浮かべ、もがき苦しむレナスを見下ろしている。


「翼を失っては、血族に迎えたとしても、マスターのお役には立たないわね…。まぁ…元々欠陥品の出来損ないだから…仕方ないけれど…。」



その言葉に噛み付いたのは、スネイプとシオン、ほぼ同時だった。



「貴様…」

「利用しようと企んだ挙句…、役に立たなくなったら、ゴミ同然の扱い…か…。」



ギリギリ睨みつける2人だったが、その視線を冷ややかに受け流すヘルだった。



「あら…?利用してるのは…貴方達も同じでしょう?」

「何……?!」

「ほら…よぉく御覧なさいな。貴方の腕の中にいる、出来損ないの流す【血の役割】を……」


スネイプはレナスを抱く腕に力を込めた。
未だに痙攣は止まず、震える手が何かを求めて彷徨っている。その手を握り返すと、凄まじい握力で握られる。骨がミシミシ音を立てるにも関わらず、スネイプはその手を放そうとはしなかった。

そして、徐々に赤く染まっていくスネイプの手。それは、今まさにレナスが流した血。


そして、スネイプは目を見開き、息を呑んだ。疑いたくなるような現実を目の当たりにして。


手に付着した血液が染み込んで、そして消えていく。
スネイプが負っていた、ほんの小さな傷と共に…。


「解ったでしょう?」


長い爪を携えた人差し指を突き出し、レナスへと向けるヘル。


「いくら出来損ないとは言え、その娘はヴァンパイア。その血を、口に含めば同族になり、浴びればどんな傷をも消し去る回復薬になる。」


「少なくとも、この娘の血を浴び、【利用】する事によって、貴方は今無事で居られるのよ?」


「皮肉よねぇ?」


「貴方を庇って血を流し、翼まで失って…。そして血液を失えば、それだけ死に近づくのに…、その血で貴方達は助けられるのだから…。それを【利用】と言わなくて、一体何と言うのかしら?」






「あぁ…」







「【食い荒らしてる】って言い方のほうが良かったかしらね?」









腕の中に居るレナスが徐々に動かなくなっていく。それを支え見つめたまま腕に力が入らなくなって行くスネイプ。
その頭の中には、黒く混沌とした物が広がっていくのだった。




≪我輩は……≫


気付かぬうちに息を荒くし、内に現われた者に支配される。


≪我輩は…レナスを……?≫




「スネイプ殿!」



シオンの呼びかけで我に返るスネイプ。
視線を上げ、シオンを見遣るが、そのシオンはヴァンパイアに視線を向けたままだった。


「余計な事を考える暇があるなら、さっさと主を地上にお連れしていただけませんかね…?」

「し、しかし…」

「このまま放っておけば、主は確実に死に至る…。オレが何とかしますから、貴方がお連れしてください。」

「待て!俊敏な貴様が連れて行け!ここは我輩が…」


無駄な問答とでも言うかのように、シオンは溜息をついた。


「お解りになりませんか…?」

「何…?」

「幾らオレが貴方より、能力が上で、俊敏で、長身で、ついでに足が長くて、男前とはいえ…」


「ふざけているのか?それとも、舐め腐っているのか…?どっちだね…?」


「立ち上がるのもやっとの貴方が残った所で、この場を抑えられなければ、無意味とは思いませんか…?」

「………………。」


冷静に物事を考える事に全神経を集中させた。
まるで呼吸を整えるように、本来の自分を手繰り寄せる。


確かにシオンの言ってる事は正当だった。
今、自分が残った所で、このヴァンパイアを足止めできるはずも無い。

スネイプの頭の中に拭えない感情があった。
レナスが倒れたのは自身を庇ったせい、是が非でもレナスを死なせる事があってはならない。
そんな責任を感じての事だったのだろうが、無謀にも程があると、改めて痛感するのだった。

残る選択肢は一つだけ。

又しても、忌々しい筈のコウモリに頼らなければ成らないのは不本意だったが、それも仕方のない事。
自身の不甲斐なさを噛み締め、やっと言葉にする。



「……此処を…頼むぞ……」



少し驚いたように…、しかし次に薄く笑んだ後小さく頷いたシオンを見届けると、スネイプはレナスをその腕に抱き走る。


「逃げられるとでも思って…?」


更に力を増幅させたヘルが低く唸る。
ヘルがスネイプに向かって光の刃を振り下ろす。
これもヘルの本来の力を発揮したためだろうか、今までの光の刃より、何倍も大きく見えた。


「そうは…行きません…」


シオンが間に割って入ると、刃が弾かれ、あらぬ方向へ飛んでいった。
それを見届けるヘルが、ギリギリと睨みつけ、完全にターゲットを変える。


「本当に…小憎たらしいボウヤだこと…!」

「貴女に気に入られても、得など有りませんので…」


頭に血が上ったヘルが、更に長く伸びた爪を振り下ろす。
とっさに短刀の鞘で受けるのはシオン。





キィィィ――――……ン……!!






鍔迫り合う金属音。
耳を覆いたくなるような高音が頭の中にまで響くかのようだった。



「少しは骨がありそうだから、貴方を血族にと思ったけど…辞めにするわ。肉を裂いて引きちぎって、骨の隋までしゃぶりつくしてやる!!」

「貴女の穢れた唇に触れられると思うと…吐き気がします、よ…!」


蹴り上げた足が、ヘルの前髪を掠った。
数歩飛びのいた先でシオンを狂気の眼差しで睨みつける。


「スネイプ殿…!」


シオンが走るように促した時には、既に扉に手を掛けていたスネイプ。




あと一歩踏み出せば外に出られる。


地上へ続く階段へ向かう事が出来る。




レナスを救う希望が持てる……!







「……逃がさない…」






女の低い声。
一歩踏み出した時、スネイプの身体が、磁石で反発するかのように扉から弾かれる。
そしてレナスごと宙に浮き上がり、まるで人形の様に地に叩きつけられた。


「っぐ……!」

「レナス!スネイプ殿!!」


レナスへの衝撃を避けようと、受身も何も取らぬまま、背中を強打し、呼吸を根こそぎ奪われ、鮮血を吐き出す。
息は吐き出される一方、肺を満たす筈の呼吸も、今となっては血の臭いしかしない。


「無駄よ…、もう此処から出る事は出来ないわ。残念だったわね?」


狂気に満ちた光の無い瞳がスネイプに向く。
その視線を遮るかのように2人を庇うように立つシオン。


「退路を…絶たれましたか…。」


シオンの呟く言葉を耳にし、何とか腕を張って起き上がるスネイプ。それでもレナスを手放そうとはしない。
片手でレナスを支え、片手で自身の体重を支える。もはやそれが限界。シオンはそれを十分理解していた。


「……このままでは…レナスが…」

「流石にまずい、…ですね…」


言葉を重ねて行くスネイプとシオン。
赤い影が動き、飛び上がる。


目の端で捕らえた時には遅かった。




「3人仲良く、逝きなさい…!!」




拳から放たれる光の刃。いや、もはや刃などと言うものではない。
空間を覆い尽くす大岩にも似たものを瞬時に作り上げ



放つ!!



薄暗かった空間が凄まじい光に包まれた






目が眩む






目の前に何かの気配があったようにも思う
しかし、それが何か確認する事さえ出来ずにいたのはスネイプ





余りにも一瞬の出来事








光の衝突



ダメージを覚悟するかの様に瞳を強く閉じ、レナスを庇う









静寂









衝撃が一向にやってこない






光が弾けたのが瞳を閉じていたのは理解できた
しかし、それ以上は何も無い







先ほどの薄暗さを取り戻し、元の空間へと戻った





恐る恐る瞳を開けるスネイプ





シオンが何かしたとでも言うのか…?





光に目が眩み薄暗い空間に慣れるまで数秒掛かった





顔を上げ状況を確認する




顔に降りかかる水滴





何だ?と顔を拭う





酷くヌルヌル、ベトベトした
それでいて生臭い




目の前に立ち、天井に向かって手を翳すシオン



拭ったソレが血液である事を、瞬時に認識する
そして、それが、シオンの血液である事も……



「………お前…」

「流石に…少々、キツかった……よう…だ…」


こぼれ出る言葉は、痛みに歪み、やがて崩れるように片膝をついた。


光が目を眩ます中に起こった事を記憶の片隅から辿るスネイプ。


シオンが、全員を庇おうとした事。
それによって、魔法の様な何かを繰り出した事。
しかし、それが弾かれ、貫かれた衝撃が全てシオンに向いた事。


其の中で一瞬見えた、シオンの姿。しかしそれは完全なものでは無かったのだろう。

そうでなければ、この様にシオンが傷つく事など無かっただろう。
そして、1人だったら尚更。



「あら…随分しぶといのね…?」


不敵に笑う女が近づいてくる。
一歩、また一歩。

立ち上がろうにも、その力も残っていない。
それは、シオンもスネイプも同様だった。


倒れたレナスと歩み寄るヘルを交互に見比べるのはシオン。

何かが頭に巡る。


そして意を決したかのように、拳を握る。



「諦めるしか…無いようですね…」

「…?貴様…何を考えている?!」



シオンの【諦めた】という言葉とは裏腹に、決意に満ちたオーラは一体何だ?
言葉と行動の矛盾に、スネイプの身体が更に緊張を露にしていく。


「出来れば【ヴァンパイアを滅する】事だけは、したくなかったのですが、ね…。…それも仕方の無い事…」

「何……?」


スネイプの力の入らぬ身体をほったらかしにし、頭だけが素早く回転を始める。

ヴァンパイアを殺す事が、この男には可能だったとでも言うのか?今まさに自分達を抹殺するほどの力を秘めた、このヴァンパイアを?
ならば何故、初めからそうしなかったのか?

恐らくレナスならば、例え自分の命を狙ったも者でもとどめなどさそうとはしない。そうレナスが望んだのだろうか?命じられたとでも言うのか?

しかし、果たしてソレだけが理由なのだろうか?
到底そうは思えない。


それ程までに、今のシオンは見せた事もない空気を纏っていたのだ。
おそらく、これこそが本来纏っているモノなのだろうと、スネイプは直感した。


「貴様…一体…」

「……スネイプ殿…」

「………?」


言葉を遮られた事に、特に不快を露にする事もなく言葉を飲み込むスネイプ。
黙ってシオンが繰り出す言葉の続きを待った。


「今から行う事を…誰にも言わないと…お約束願えますかね…?」

「何だと…?」


意外な言葉にスネイプは顔を挙げる。
するとシオンが振り返り、その顔を覗かせた。



【特に……他の何を置いても、レナスにだけは…知られたくありません…】

「何を…言ってる…?」

【ご自身の使い魔が…こんな……】


そういった顔の額から顎にかけて鮮血が滴り落ちている。
如何見ても、これ以上動けるわけがない。


それでも、シオンは言葉を続けた。



【こんな姿を曝して…嫌われたくはありませんので……】



まるで、半分冗談とも取れる言葉だった。
しかし、その言葉を連ねる表情はどこか寂しげで、儚げだった様にも感じ取れた。

いつもは疑ってかかっていたシオンの言葉。
しかし、今は何故か、その言葉の一つ一つが素直に流れ込んでくるのを、自然と受け入れているスネイプ。


「貴様は一体何者だ…?」

「【ただの使い魔】…。そう言いたかったのですが…、もはや難しいかもしれませんね…」


心の苦痛を押さえ込むような笑顔を、スネイプの前で始めて見せたシオン。
目を開くスネイプ。

シオンの右腕が徐々に変わっていく。


そして見る見る大きく成り、変貌を遂げていく、異形の形へと。
しかし、薄暗い中、その姿をしっかりと確認できるわけではない。だが、何ともいえない恐ろしい物に睨みつけられ、指さえも動かす事の出来ない、重い重圧。


「今更何をしようと言うの?!出口も無い、ただ死に行くだけの虫けらの分際で…!!」


ヘルが拳を振り上げた。




来る!




ビリビリと、体の芯から痺れるような空気が流れる。




再びやってくるであろう攻撃の鼓動を感じ取り身構えた時だった。








「もう、それくらいにしたら…?」







現われた声。
何処だ?と視線を走らせら時、腕を振り上げたヘルが止まる。


よくよく見れば、その腕を掴む男が脇に立っている。



「貴様は…!」


「……ヘル…、迎えに来たよ。」


動揺を隠せないヘル。
そして男の姿が徐々に露になっていく。





「まさか…」




スネイプが呟く。
目を見開き、





【ナック・パーキーソン……?!】






****続く*****

コメント(4)

先の展開を推測したいけど
(*`艸´)お口チャック ←妄想族
たぶん…
とんでもない、意外な展開かもよ(^_^;)
ええええふらふらふらふらふらふらふらふらふらふら
ナックがなぜがまん顔がまん顔?!
そういえば、この十六章の最初に居た気が…もうやだ〜(悲しい顔)もうやだ〜(悲しい顔)もうやだ〜(悲しい顔)バッド(下向き矢印)バッド(下向き矢印)

しかもヘルを知ってる口調顔(口笛)顔(口笛)バッド(下向き矢印)バッド(下向き矢印)バッド(下向き矢印)

私たちが知らないところで、何が起こっているのですかウッシッシウッシッシウッシッシウッシッシ
璃っちゃん

ナックさんなんででしょうねぇ〜。
なんていいますかね、うん、まぁ複雑なかんじなの( ̄0 ̄;

何かが起こってるのは事実。
レナスの運命なのねん。

運命の女神様は、この運命に飲まれていくだけなのかな…。

何年もかけて書かねば。

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