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さしゃの二次小説(ハリポタ)コミュの本編第十六章 惨劇2

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ハリポタ二次小説 レナスの物語

第十六章 「惨劇」2 血族



痛ってぇ…なんなんだよ…いきなり…。
竜巻でも起こったか…?


床に倒れこんだレナスが最初に見たものは、目の前に転がる小さな石だった。
もくもくと立ち上る砂埃で、何かの衝撃が直撃したのだと、思い込む。


ズキズキ痛む頭を押さえると、生暖かくヌルついた感触が、妙に気持ち悪かった。触った手を見ると、赤く斑に染まっている。さらに額を伝って床に滴り落ちる赤で、自分が負傷したのだと、時間差ながらやっと気づく。

まるで夢の中に居るような、白く濁った世界。
妙に痛みだけはハッキリしてる様が、吐き気を催した。焦点の合わない目を細め、ゆっくりと見渡しながら、何とか立ち上がる。


そして、そこに広がっていたのは、先ほどとはまったく別の光景だった。
視界に入る小さな石。しかし、大きな岩までもが転がっている。


「なんだよ…これ…。」


転がっているのは岩だけではない。
牢の要となっていた、鉄格子がひしゃげ、床に音を奏でていた。沢山の部屋についていた鉄格子は壁という壁に突き刺さっている。
狭かった廊下が、だだっ広い空間に生まれ変わった。


どうやら、部屋を隔てていた壁さえもを、抉り取ってしまったらしい。


地下水脈に当たったせいか、所々、水が吹き出て、レナスのローブを濡らし、髪からも水滴が滴る。
そして、額の赤を交え、彼女が着ている白いシャツを赤く染め上げる。


意識はハッキリしているものの、足元がおぼつかない。痩せ細った体で、自分を支えるのがやっと。

重くなったローブを脱ぎ捨てると、そのせいでバランスを崩し、再び床に沈みかける身体を支える。



ゾクッ……



「……………ッッ…?!!」


背筋が凍るほどの冷たい気配に、瞬時に向き直ったレナス。
砂埃と水しぶきの先に、視線を凝らす。

吐き出す吐息が白く色づく。
早鐘を打つ脈と共に、徐々にそのペースを増していく息遣い。


自然と眉が寄り、身構える。無意識に握り込んだ拳は、緊張によるものだろう。
この爆発を起こした原因になったモノかどうかはわからない。
自分の身に何が起こっているのかもわからない。



ただ…わかる事。



居る


何か…


何かがそこに…



確実に、自分を見てる何かが居る…!!!




「……誰だッ!!」



むせ返るほどの砂埃が、霧になった水滴によって晴れて行く。
そして見える一つの人影が一歩一歩近づいてくる。
水を踏みしめる、音がピシャリピシャリと、密閉された空間に鳴り響く。
地下の扉とは、正反対の方向から。


どこから沸いてでたのか…。


「まったく…。こんな場所に出るなんて…。私の腕も、眠ってる間に、鈍ってしまったのかしら…?」


透き通るような…それでいて、冷たい口調。
髪に指を絡め、てぐしを通す。

徐々に姿を現す。

揃った前髪を掻きあげる。
タイトな短い髪。
整った顔立ちと、長いまつげを携えた美しい女性。
黒いスーツの様な衣服と、裾だけが広がったタイトながらも長いスカート。


しかし、どこかがおかしい。



≪… 嘘 … でしょ ……≫


「にしても何よ、この水。うっとおしいったら無いわね。裾が汚れたじゃないの…!」


腕を振り払う女性。
突如嵐のような突風が吹き荒れ、壁に突き刺さった鉄格子もろとも水を吹き飛ばす。

鉄格子はレナスの頬を霞める。
次の瞬間その場所から、妙なゴポッという音と共に、赤が流れ出る。


「これなら、まだマシかしら?これだから、人間の世界は…。」


眉を寄せる女性が不機嫌を露にする。
噴き出した水が、一挙に収まっていた。どのような手を使ったかレナスにはわからない。


頬の痛み、頭の痛みは既に凌駕されていたほどに、レナスの頭の中は絶望しかけていた。


その瞳は、レナスを捉えた。


「あら…?」


タイトな短い髪は、血で染め抜かれたように赤く、その瞳さえも同じく深い赤色だった。
そして、前髪から時折覗く右の眉の上にある刺青のような物。


「見つけるのに少し苦労するかと思ったけど…。こんな場所に居らしたの?手間が省けたわ…。」


そして、極めつけは…
バサバサと大きく動く、背中に背負ったコウモリの様な、ドス黒い翼。


「随分汚い服を着てらっしゃるのね?それに…紋様はどうなさったの?それに、その傷は?あぁ…今の爆発に巻き込まれてしまったの?」


ヒールを進めるたびに、水溜りに波紋が広がる。
ゆっくりと歩み寄ってくる。光の無い瞳を瞬きもせずに見開きながら。



「【血族】ある筈のものは無いけれど、貴方で間違いない筈ですわよね…?ミシェイル様…?」


ニヤリと笑みを浮かべると伸びた犬歯が覗いた。




あの姿は…
最もレナスが恐れるモノ



紛れもなく…





「…ヴァンパイア……」





ゆらゆら揺れるレナスの脳裏。頭ではわかっている。体は警戒を怠らない。
しかし、どうしても体が動いてはくれない。


目の前のモノに何の手立てを打つことも出来ずに、ただ立ち尽くす事しかできない。


目の前、3メートル手前で、ぴたりと止まったヴァンパイア。
頭を下げ、会釈をしする。


「私は【ヘル】と申します。ハーグリーヴス家の者です。」

「な……」

「お捜し申し上げましたわ…」


そしてゆっくりと頭を上げる。


「ねぇ? 【 姫 君 】 …… 」


ゾクッ……!
その狂気に満ちた瞳で、一瞬のうちに血の気が引く。
硬直させたままの身体。しかし、それでも怯む事はしないレナス。


「捜した…だと……?」


額から汗が滴り落ちる。
目の前にいる強大な力を秘めた生き物。
いや既に命すらない化け物を目の前に、身体の芯から凍るほどの恐怖が支配していく。


「えぇ。貴女様は、我が君の血の抱擁を受けずに生まれた、唯一のヴァンパイア。生まれながらにして、我々の姫君です。」

「…姫……?」

「はい。」

「………」


震える手。その中の汗と共に、拳を握りこむ。

レナスの混乱とは裏腹に、【ヘル】と名乗る女の言葉は続く。



「貴女様は、最も邪魔な存在、アルバス・ダンブルドアを抹消する為に送り込まれた。そして、見事に信頼を得た。くだらない愛情のために、貴女に手出しを出来るはずありませんわ。十分すぎるほど役目を果たしました。」

「ダンブルドアを抹消する為というのは…知っていた。」

「時は満ちました、貴女様をお連れ致します。」

「……何の為にだ…?!」


レナスの剣幕に、眉を寄せため息をつくヴァンパイア。



ご説明しなくても、わかっておいででしょ?
闇の帝王、ヴォルデモードが失脚した今、我々の力は激減。【食事にもありつけない】現状が続き、我々は一時的に眠りにつくことにしました。
目覚めたモノは、ごく僅か。我々が作り上げたグール達も、数えるほどしかおりません。

貴女様の父君、ハーグリーヴス家当主・マスター・オーディーンは、大変愁いておいでです。このままでは、ヴァンパイアは滅びるしかない。


そうならないために、貴女様の優れた潜在能力が必要なのです。
人間達を支配するだけの力が。


胸に手を添え、優雅とさえおもえる仕草。
しかし、レナスにとってそんなものどうでも良かったらしい。


「本気で言ってるのか…?」

「なにか…?」


ギリギリと睨むレナス。決して交わる事のない感情が、こみ上げてくる。


「ヴァンパイアは元々人間のはず。何故支配などする必要がある!」

「貴女は歴史をご存知ですか?」

「ヴァンパイアの歴史を知らないとでも思ってるのか?!」

「ならば、ご存知のはずでしょう?人間はヴァンパイアを化け物とし、翼を切り落としては滅ぼして来たのです!!私達は生きたいだけ!それなのに…!!そんな惨酷な人間達をのさばらせても良いとお思いですか?!」

「人間を喰らっておきながら…どの口が言う?!!」


ボルテージがあがるレナスに対し、ヘルはクスクスと笑い出した。


「何がおかしい??!」

「フフ…可笑しいですよ…。こんなに可笑しい事が存在するのでしょうか?」

「なに…?」





【虫けらも同じじゃ、ありませんか…?人間なんて…。】





「貴様……!」

「所詮、人間なんてものは、我々ヴァンパイアの餌なのですから…もったいないじゃないですか…?餌に光は必要ありません。」




「黙れ!!」



ついに拳を振り上げた。
足元もおぼつかなかったが、今のレナスには関係ない。


振るう拳。
しかし、あっけなく腕を掴まれる。



「あらあら…。随分威勢のいいお姫様ね?」

「放せっ!!」


言葉と同時に振るった足は、宙を空振りした。

やっとの事で、レナスの腕を放したヘル。
一歩飛びのき、クスクスと笑う。


「やっぱり、あの人の娘ね?」

「………?」


笑っていたはずの顔が、殺気に満ちていく。強張る身体を奮い起こすのがやっとだった。


「たった一人愛した人。私のマスター。貴女が生まれる前までは、何もかもが旨く行っていた。あの女が貴女を産んでから…何もかもが狂った…!あの女さえ、貴女さえ居なければ…!!」


狂ったような瞳を向けた瞬間突風が吹き荒れる。舞う水滴。
髪が逆立つかのようなそれで、数歩たじろぐ。


ふと我に返るヘル。


「いけないいけない…。私ったら…。いけ好かなくたって、あなたは私の大切な方の姫君。こうしてお迎えにあがってるだけ、ありがたいと思ってくださいませんか?一緒に来ていただきますよ?」


乱れた髪を整えながらも、手を差し伸べるヘル。
しかし、その手を一瞬みやると、レナスはさらに深く眉を寄せる。


「断わると言ったら…どうする…?」


ピクリとヘルの眉が動く。
目を見開き、空気が凍りついていくのがわかる。

こめかみを伝っていく汗、視線を逸らす事さえ叶わぬ緊張感と、威圧がレナスを取り巻いていく。


「今……何と…?」


静かに言った言葉。
だが、その中には冷たく、這うものが含まれている。


「聞こえなかったか…?」


ニヤリと笑うレナス。





「貴様等の、仲間になる気は無いと言ったんだ!!」





恐怖を振り払うかのように叫んだ。
そして同時だった。


「あら…そう…?」


目の前のヴァンパイアが、レナスの隣に回りこんだ。
グイと顎を掴まれ、ヴァンパイアと向かい合う。

ほんの数センチの距離に見える、赤い瞳と髪。




「……それは…残念ね…!!」




何が起こったかはわからない。
瞬時に崩れた壁へと弾き飛ばされる。


「ぐッ……!!」


身体がひしゃげる程強く、岩の壁に打ち付けられ、背中を貫く痛みで、腹の底から赤を吐き出す。
そのまま床に倒れ、とても動ける状態ではない。


「…………ゲホッ……ゴホッ…」


半分痙攣を起こしながらも、口を開け激しく呼吸をしようとする。
しかし、喉につかえる鮮血がレナスの呼吸を邪魔していた。

腕に力を込め、立ち上がろうにも、どちらが天井か、どちらが床かさえも解らない。


≪だめだ……今のあたしじゃ……≫


何とか目を開いた。
目の前には、いつの間にか迫ってきた足がある。


「まぁ、逃げ出した貴女が、素直に来るとは思っていないわ。元々ね…」


髪を鷲掴みされ、無理矢理起こされる。
全身の痛みに顔を歪め、それでもヴァンパイアを睨み上げるレナス。


「あら…意外と可愛い顔してるじゃない…?さすが、忌々しいサキュバスの娘ね?」


髪を引っつかみ、無理矢理起き上がらせる。
顔を寄せ、赤い目がギョロギョロと動く。


「その鋭い目付き…たまらないわ…」


レナスの額を伝う赤い鮮血を、舌先で舐める。
そして、不気味に囁く。


「愛しくて、愛しくて…」




【殺してしまいたいくらい……】






「き…さま…!」


腕を払うと、その場からするりと消える。
掴まれた髪を放され、足に力を込めるが、体重を支えきれずに、膝をつく。


せめて…魔力が戻れば…



ドカッ!!


顔を蹴り上げられ、床に伏す。
それでも、身体を起こそうと腕に力を込めるが、応戦しようにも立ち上がることさえ出来ない。


くっそ……。



「素直じゃないわねぇ?姫?」


ハイヒールを履いた足が力を込めるレナスの手を狙い、降ろされる。



「あぁ゛っ!!」


ギチギチと肉と骨に食い込み、貫く。
痛みに歪んだ顔で、圧し掛かった足を必死にどけようとするが、叶わぬ行為だった。



相手はヴァンパイア。
筋力は並大抵ではない。そして魔力も…。


「半分人間だと、痛みを感じて不便ね?姫?」


今度は胸倉を掴まれる。


「ねぇ?姫?馬鹿なことはお辞めなさい。血の抱擁さえ受け入れれば、貴女は私達と共に、永久に生きる事が出来るの。」


掴んだ胸倉を捻り上げる、
しかし、それとは裏腹に、片方の手でレナスの頬に優しく触れてきた。


「今一度、お聞きしますわ、姫君…。私と共に…。そして血の抱擁を受け、完全なるヴァンパイアに成るのです。そして、憎い人間共を抹消し、安息の世を作りましょう?」


やっとの事で開いた、虚ろな瞳。
しかし、それでも眼光は衰える事はない。


「誰が…貴様らに…」

「あぁ、回答には十分お気をつけ下さいな。」

「…な…に…?」


再びニヤリと笑った


「私は目覚めたばかりで…力のコントロールが出来ないの…。手元が狂ったらどうします?貴女と同じような服を着た、子供達が沢山いるのでしょう?悲しみに染まったら…。貴女を殺して、他の子供達も殺して回るかもしれないですね?」


同時に、さらに上へと胸倉を捻り上げる。


「さぁ、姫?その上で回答なさってくださいな。私が悲しみに染まらないように…。」


開く事の出来ない瞳の奥に浮かんでくる。




殺される…?
皆が…?


せっかく…まるく収まりかけてたのに…。



動かなくなる。
モノになった、魂の抜け殻。


血に染まった子供達。



アルも、ビルも、ギルも…。
それだけじゃない。ダンブルドアも、シオンも、セブルスも…。


殺される…。


守れないの…?このまま…。
仲間になるしか…




「……私は……」











【エクスペリアームズ!!!】










どこからとも無く飛んできた光線がヘルを貫く。
壁まで弾き飛ばされたヘルの衝撃によって崩れた岩が、彼女の姿を隠す。


どさりと落とされたレナスは膝を突き、光線が飛んできた方向に視線をやる。



杖を構えるその人物。




「せぶ…るす…?」




そして、その人物は崩れた岩を睨みつけながら言葉を放った。





「悪いが…答えは【NO】だ……!!」





****続く****

コメント(4)

スネイプ先生ぴかぴか(新しい)かっこいいですハートハートハートハート
もう、むしろ、そのまま連れ去ってほしいくらいですよ目がハート目がハート目がハート目がハート
いえ…私を…爆弾爆弾爆弾爆弾


でも相手がヴァンパイアだなんて…
惨劇というタイトルが気になります…がまん顔がまん顔がまん顔がまん顔がまん顔
クラウドさん

このセブちんは、すっごく書きたかった〜〜〜!!!
そりゃもう!!5年くらい前から!!

野望を達成しましたとも(*^▽^*)
にしても…、これからが難易度が上がる感じです…。
璃っちゃん

こんなセブちんカッコイイなって、私も思うのですよ。
璃っちゃん…あんなセブちんに連れ去られたいの?
あんな事や、こんな事されちゃうよ??

い、いいの?

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