ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

さしゃの二次小説(ハリポタ)コミュの本編第十二章 特訓と成果5

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ハリポタ二次小説 レナスの物語

第十二章 「特訓と成果」5 凄い奴



「自分の事なのに、他人の方がギルの事を知ってる…。でもね…。私にも…身に覚えが無い事じゃないよ…。」

「え…?なんで?」



見上げて来るギル、隣で沈黙を守り固唾を呑んでいるアル、後ろで見守ってるシオン。
彼らの視線は、再び私に注目する。


「私もね、ヴァンパイアや、サキュバスの事全然知らなかった。調べた史実はすべて覆い隠された【嘘】だったから。それを教えてくれた人が居るの。」


あの時…クロウディアが教えてくれた。
ハーグリーヴス家の陰謀…ヴァンパイアと言う者達の事を。


「めちゃくちゃ凹んだ…。ショックっていうか…、空回りしてた自分が心底情けなくて。」


そう…、あの時、落ち込みかけた私を救ってくれたのは、あの時一緒にいた、クロウディアや、アル、シオンだったから。




「そうやって、正してしけば良いと思った。間違ったのなら、正していけば良い。そうやって、生きていけば良いんだ。知識を得れば、経験していけば、気付く事が出来るから。」



口調は相変わらず冷たい。
そんな自分に、心底嫌悪感が沸いてくる。
速くなる鼓動が煩い。



「ごめん。」



一瞬、息が止まり、今まで聞こえていた筈の自分の鼓動さえも聞こえなくなった。
そうさせたのは、…ギルガの呟くような…
謝罪の言葉だったから…。


「俺…何にも考えてなかった。勉強は【嫌な物】で、役に立つからやってる事だなんて…思ってもみなかった。」


解ってるよ…。そんな事…。
13歳で勉強の意義なんかわかってる奴、居るわけがないだろ。


「俺さ…、皆も同じかも知れないけど、やっぱ魔法省からこてんぱんに言われてて…。早く角とか出ない様にしないとって思って…。」


あぁ…、なるほど。


「だから、手っ取り早く、課題とかちゃっちゃと終わらせて、訓練しなきゃって、思って…。」


勉強と訓練は、全くの無関係。
だからこその、あの発言。

これで、納得が行く。
無知故の……、近道の様で……、遠回りな道。


「俺、頑張るって…決めたから……。それなのに……。」


まるで消え入りそうな程弱々しい声。
決意を固めたは良かったけれど、その後停滞したままの自分に不安を覚えて…落ち込んで。
焦って…、兎に角前に進まなきゃって足掻いて…。


その解決方法を見出すまでに時間がかかってしまう…。



まるで…


私みたいだ…




幼い頃から時折暴走する、ヴァンパイアの血。
何とかしたいと、ずっと思っていたけど…どうするのが一番良いかなんて、考えついたのは、ホグワーツに入学してから。
薬の開発の許可を得ようとしたけど、その許可が下りるまでに、正直4年という歳月がかかっている。


今だってそう。
何も進んでいない。熱だって出る。時々監禁されなければならない程に暴走する、この血。



同じように戦ってるんだ…。この子も…。


今…あたしにできる事。


自分の為にじゃない。


この子の為にできる事。



「近道をしたいのなら、真面目に授業を聞くといいよ。」


自分でも驚くほど、柔らかい口調で投げかける。その場にいた全員の驚いた視線が私に向くのが解った。


「学んで得られる知識は、必ず自分の肥やしになるから。さっきのドラゴン族の事だて、本来なら1年生で知っていておかしくない事なんだよ?まぁ…その得た知識が、必ずしも正しいとは限らないんだけどね…。」


小さな体の頭に添えられたような緑。私は、そこにそっと手を乗せると、彼のピンピンと跳ねた髪が指に絡み付いてくる。
思ったよりも柔らかい感触が心地よかった。


「今できる事を…やれば良いんじゃないか?焦ったって、つまづいて転ぶだけだもの。訓練して出来る様になる事もそうだけど、学ぶ事も必要だな。今できる事をしていくのが、一番遠回りで……それでいて、一番の近道なんだから。」


ね?と笑顔を向けると、顔を上げて、まっすぐに見上げて来る、水色の瞳。
自分自身にも言える言葉。
他人にだったら言えるのに、自分にだとままならない言葉…。


「レナス…怒ってるんじゃないの…?」

「そりゃ、無駄だなんて言われればね…。」

「ごめん…。」

「だから、もういいって…。」


さらに微笑むと、ギルも安心したのか笑って見せた。


「言ったでしょ?間違ったのなら正していけばいい。人間はね、生きてさえいれば、その間違いを正すチャンスなんか、いくらでもある。手遅れだなんて事は…無いから。」


自分達を包む空間から一気に緊張が解けて行く。
ハラハラと見守っていたアルも、柔らかく微笑んでいて、シオンもほっとした表情を浮かべてる。
当のギルも、ニカニカ笑ってる。
そんな空間が心地よくて…照れくさくなった。


「まぁ、ギルが授業ちゃんと聞いて、課題を自分で出来るようになれば、こっちの手間も省けるしな。」

「うえ!ひでぇ!!」


悪戯っぽく言って見せると、困った様に返してくる。
相変わらず、素直になれない自分。


だけど、彼の反応が、なんだか嬉しかった。


「その分、訓練に時間を作れるだろ?そのくらい気付けよ。」

「うおおおお!!その手があったか!!すげぇ!気付かなかった!!」

「……………。」


そっか…、きっとギルは…、赤ん坊の様に、繊細で…、素直なだけなんだ。


「もしさ…。授業で解らない部分があったら、教える事は可能だよ。私達で解る範囲だったら…の話だけどね。」

「う〜ん…?でも、それじゃ、また遠回りにならない?」

「それは、お前の努力次第。でしょ?」



【何人たりとも、学ぶ権利はある。それを望む者には、な。】


それがダンブルドアの教え。


学ぶ事を許してくれたダンブルドア。
それを後押しして、見守ってくれるマクゴナガル。
心配して、時々息抜きをくれるハグリッド。
協力を惜しまないでいてくれるセブルス。
一緒に頑張ろうと、傍で励まして、応援してくれるアル。
これから歩む道への、チャンスをくれるクロウディア。
情けない弱音を聞いても、沢山の優しさで支えてくれるシオン。


こんな私の傍に居てくれる沢山の人達+一匹?
あ、いや…いいか…このさい、シオンも人間で。


ギルだってその中の一人。


お前と居ると、楽しいよ。
躓いた感情が、お前のアホな発言聞いてると、どこかへ行っちゃうんだよ。


君も…もう、私にとって【特別】な人なんだよ?
それを、放っておける訳ないでしょ…?


「一緒にがんばろう?」


膝をついて、ギルの視線にあわせる。
沢山の感情が渦巻いて、中々素直に言えないけれど。


その言葉を聞いて、彼は、思い切り首を縦にふった。


「必ず、守ってやる…。必ず…。」

「レナス…?」


突然出てきた言葉。
大切な者への、新たな決意なのか…?


必ず…守ってやる。押し寄せてくる不安。
良く分からなかった、この時は…。


「話は…済んだ様、ですね。」


背中から、声をかけられ振り返る。
こちらに優しく視線を投げてくる、その深紅の瞳。
視線の高さを合わせた私とギルの頭に、軽く手を添えてくる。

耳元に近づいていてきて、小さな声で囁いた。


「たった今、制服の汚れた部分を作り直して置きましたので…。」


そういえば…。
先程ギルが、よだれやら鼻水やらで汚した部分を見てみると、跡形もなく綺麗になっている。

何事も無かったかのように立ち上がったシオンに、フッと微笑んで、有難う。と、目配せをする。
それに、言葉無く返してくる彼の表情も、また柔らかかった。


やっぱ、シオンって…凄い奴だ。


「お茶にでも…しましょうか?お茶請けも用意しなければ…ですね。」

ニコッと笑ったかと思うと、シオンは私達全員を自室へと促す。


「お茶するする〜〜!!!先生ケーキがいい!!ある?!」

「はぃはぃ、…少々お待ちいただきますが、ね。」

「うっほう!!たのしみ〜〜!!」


先に歩調を進めたシオンの後ろを、ぴょこぴょこと付いていくギル。
私とアルは、呆れた様にそれを見送る。


「良かったね、レナス。」

「うん、まぁ…。」


自然と表情が柔らかくなる。足を進める事もないまま。


「どうしたの?」

「いや……。ギルって、案外凄い奴なんだなって思って…。」

「例えば?」

「ん?う〜〜ん……私には…難しい事をやってのけるから…かな。」


不思議そうに小首を傾げてくるアルに対して、つらつらと言葉を並べる。


「私は…あんな風に素直になれるギルが、すごいって思う。真似したくても…なかなか出来ないからさ。正直…羨ましいよ。」


羨んだって始まらないのは解ってる。
けど、私が長い時間かけてやってる事をさらりとやってのけている。見習う部分。

そういえば、肉が好きって言ってたっけ…。私は無理だけど…。
あ、ニンジンが嫌いって言ってたな…。私は好きだけど…。


きっとソレと同じ様に、それぞれ苦手な部分があって、得意な部分もあって…。
そうやって、補い合って行くんだよね。


人間って、そう言うもの…なのかも……。


いろんな人達に、沢山の物を貰ってる私。
まだまだ、力不足で結局頼ってしまってばかりだけど…。
いつか、いつの日か、私が大人になったら、その人達に、返して行きたい。


それって、すごく…



素敵な事だって、思うから。




「ギル君って、まるで赤ちゃんみたいだね!嫌いな事は嫌い。好きな事は好き。自分の道にまっすぐ〜!みたいな?」


クスクスと笑うアル。その笑顔に、内心ほっとした自分が居る。
アルも同じように思っていたのか…ってね。


あ、思い出した…。この感じ。


沢山沢山遊んであげて、あやして、笑って泣いていた…。
まだ当時は1歳くらいだった。



ハリー……。



きっと、彼は覚えていない。
一緒に暮らした私の事を。


あれから、8年たってしまった。


今頃彼は、マグルの世界で8歳を迎えてて、私が卒業する頃には、9歳になる。


12歳を迎えてから、彼はホグワーツに入学する。

あと…約4年か…。


それまでには、何もかも自分で出来るようになって、教師になっておきたいな…。

なりたいなぁ…。


「赤ちゃんだって思ったけど、少しだけ大きくなって、嫌いな事でもやらないと!とか、克服しなきゃって思う様になった。これって、すごく大切な事だって思うよ。そこに導いたのは、レナスなんだよね。私は、レナスの事も凄い人だなって思うよ?」



あ……。
そっか……。
こゆことか…。


直接、自分を支えてくれた人達に返せなくても…、



あたし、ちゃんと出来てるんじゃん。



ちゃんと…



今のあたしにでも、できる事あるし



今のあたしにも、返せる形があるじゃん



ギルにしたみたいに



少しだけ……
少しだけ返せた




皆がここまで、育てあげてくれた私が
今度は、小さな小さな形だけれど、伝える事が出来た



あたし…ちょっと



やるじゃん




初めてだ……




こんなに、自分を誇らしく思ったのは…




ってかさ…
そんな風に言うアルも、十分凄い奴だって思うけどね。


「しょーがない。お子ちゃまの成長を、これからも見守っていきますか!」

「あははは、子育てだね。」


笑いあって話す。
たまらなく愛しいと思える時間。


「ねぇ!2人とも!早くケーキたべようよ〜!クイクリーケーキ!!」


いつの間にか、シオンの自室からぴょこっと顔を出したギルが、私達に催促をしたかと思うと、走り寄ってきた。


アルと顔を合わせて、半分呆れたけど…これがギルなんだと思った。


「クイクリーケーキって…?」

「急いでケーキ食べるぞ!って意味だよ〜!」


だいぶ間違ってはいる…。
仕方ないな…。


「まだ、課題終わってないんでしょ?」

「な、何故それを…!!」


目を見開き、口をあんぐりさせて、図星を突かれたような表情。


「看て上げるよ。あたし、今日は何も予定無いしね。」

「うおお!すげぇ!!じゃあ、よろしくお願いしますぜ!アイウォンチュー!!」


やっぱりここでも、素直なギル。
意味不明な言葉の使い方が、出来の悪い……弟?みたいな感覚を残して行く。


でも、尊敬できる部分も沢山あって…。


居なくなったら……嫌かも。


「レナスって、やっぱ、すげぇー!!」

「は?何?急に…。」




「だって、俺に無いもの、いっぱい持ってるから!!」



こっちの台詞だ!




そんな風に言ったら、どんな顔をするんだろう…。



猫のような目をくりくりさせて、照れるかな?
それとも、驚くかな?



素直になれない私は、やっぱり、言葉を飲み込んでしまう。



無駄なんかじゃない。決して。
私が今してる事。

心強く後押しをしてくれる、みんなの暖かい手。



ありがとう。



大好き。



みんな、大好き。




「じゃぁ…お茶しながら、やっつけちゃおっか。今度は、本物の先生も傍に居る事だしね。」


そういって、足を進めると、暖かいものが手に触れてくる感覚があった。

視線を落とした先には、緑の髪を弾ませるギルがいる。
彼の温かい手。
子供特有の高い体温。

そして、ギルの反対の手は、ずうずうしいのか何なのか、しっかりとアルの手を握ってる。


堪らなく愛しく感じる。


嬉しそうに笑顔を向けてくる…、まるで弟みたいな男の子。
不思議だ…。






守ってやる…。必ず。

何があっても。必ず守ってやる。





そんな言葉を反復させながら。
紅茶の香りを漂わせる部屋のドアノブを手にとって開く




そこには、いつもの優しい笑顔に出迎えてくれるシオンが居た。


この優しい時間が何時までも続く。


あたしは、そう思っていた。



でも、私は、このとき



これから起こる、出来事を、予知できないでいた。



おぞましい出来事を。




****続く****

コメント(6)

ここはもう、何もいう事はありません。

全てを託しました。

長年に渡って、ずっと伝えたかった事です。

たとえ、沢山のものを与えてくれた本人達へじゃなかったとしても
こんな私にも、返せるものがある。

きっと、どんな人でも、そうだって思う。
いまそこに居るという存在だけで。
それだけで、救われる人とか、支えられる人って居ると思う。

そして、それを感じてる人は、身近に居る。ってね。
ええ話やなー(ノд・。`)

(何故関西弁?あせあせ(飛び散る汗))

…うん、私にもそんな事が出来るんだ…って、思える様になりたいですo(^-^)o
頑張ろう♪(^o^)/オーハート
人と言う字は…人と人が支えa(略)

おぞましい出来事って、まさか…ギルガ君関連ですか?
みけちゃん

大丈夫!みけちゃんにも、必ずあるよ。
というか……ちゃんと見えてるから、大丈夫(*´∇`*)
自信をもってね☆☆

今回は、久々に、何かが降臨したよ。
伝える事って大切よね☆☆
しらけさん

まさに武田せんせいっすね!

おぞましい出来事は……
連鎖が連鎖を呼び、螺旋と化し迫り来る。

きっとソレも…運命の女神に科せられた、試練なのかもしれないね…。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

さしゃの二次小説(ハリポタ) 更新情報

さしゃの二次小説(ハリポタ)のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング