ウェッジウッドなどの陶磁器メーカーでも、18世紀から植木鉢は色々生産しています。ただしジャスパーやバサルトはそこそこ高価であったと思われますので、織物職人や炭坑労働者が中心のフローリストたちが普段からどんどん使うということは大変だったろうと思います。
ですから、直接植え込んで育てるというよりは「飾り鉢」あるいは「鉢カバー」として使われるのが多かったのではないかと思います。つまり花が咲いて展示する時だけ上等な鉢にすっぽりと植え込んで陳列するわけです。「世界のプリムラ」にも掲載したオーリキュラシアターの3DCG復元図の中にある鉢も多分そのようにして使ったのだろうと思います。この型の鉢はフランスのセーヴル窯等でも作られていました (飾り鉢が非常に発展するのは19世紀後半位からですが)。
日本ですと、植物と鉢は時間をかけてしっくりとなじみ合うことが良いとされるのですが、つまり西欧ではあまりそういう美意識はないということですね。むしろ汚れのない、いつでも新品のようなきれいな鉢の方が良いという美学なんでしょうね。でもこれは茶器などでもそうですね。
私がこれまで目にして来た古いオーリキュラの絵では、今でも使われている素焼のいわゆる Long Tom に植えられているのがほとんどですが、珍しくオーリキュラが美しい鉢に植えられている画像がありますので、アップしておきます。1789年から1791年の間に出版されたもので、葉に粉がないのでアルパインオーリキュラの早い時期のものと思われます。
「世界のプリムラ」には誤植がいくつかあって、誤解されそうで困っています。桜草との比較で桜草の花型が「非科学的」とあるのは「非幾何学的」です。ここで訂正しておきます。