リミックスして巻き込め! ―― ビジネスチャンスをすぐつかむための“DJ力” ――
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=390500&media_id=33
小林節正という人がどんな人物なのか知らないけれど、ここで言っていることを読む限りでは、何を今さらという感じが拭えない。
ストリート系ファッションビジネスをリードしているのは、デザイン業界としては遅れてきた発想の人なのだろうか。
デザイン専門学校で学生相手に講議をしているのではなく、社会人を対象にしたビジネスセミナーにしては、言っていることは「そんなこと今さら言うまでもないこと」の域を出ていない。
>ゼロからオリジナルを生み出すのは不可能
>生活を取り囲むすべてが、実は「すでにリミックスされてきたもの」
>純粋なオリジナルなどありえない
そんなことは周知の事実ではないのか。
学生レベルでもその程度の認識は既に持っているものだと思っていた。少なくとも美大のファインアートでは、僕がいた20年以上前からそんな言説は常識だった。
それともデザイン界はいささか天狗になっていて、自分に万能感を持って、ゼロから何かを作り出しているような錯覚におちいっていたのだろうか。
>「ありものを組み合わせて新しい潮流をつくる」
>一切デザインせずに組み合わせに特化し、それをオリジナルにしてしまえ
デザインとは組み合わせであるというのは、デザインのいろはではないか。
>あとは時代の流れを読むセンスとデザインセンスを磨けばいい
だから、それこそがデザイナ−の求めるものであって、そこにみんな苦労しているのだろう。
何が求められているのか。何を組み合わせればいいのか。バランスはどうか。
そういうことを悩むのがデザインするということではないか。
つまり、この人の言っているデザインとは、表徴としての形や図柄をどうこうするということであって、それまでそういうことに傾注していれば、本質的なことについてはあまり考える必要もなく、デザインの仕事が出来ていたのだろう。
羨ましい限りだ。
まぁ、彼の主張していることは、リミックスミュージックのイメージで言っているのだろうことは想像できる。
演奏などしなくても、作曲しなくても、そこら辺から洒落たフレーズを拾ってきてつなぎ合わせれば、曲ができる。
同じようにデザインもパーツを拾ってくればいいのだと。
折しもデジタル技術が浸透し、手業で描きおこす作業が省力化されたために、そうした方法論があたかも最新のテクネーのように思えたのかもしれない。
しかし、そんな状況だからこそ、デザインにたずさわる者は、本質が問題視されるデザインの現場においてどうすればいいのか暗中模索となり、成功者の声を聞きたくてこういうセミナーに訪れるのだろう。
ここで述べられている話で僕が興味深かったのは、「メッセージボードとしてTシャツ」という発想だ。
>ファッション同士でなく、ファッションにメッセージが組み合わさり、新たなファッションが生まれた
というのはまたぞろ表面的な物言いだ。
そもそもファッションとはメッセージだったではないか。スタイルという主張を示すのがファッションだったわけだから。
ここで問題とすべきは「メッセージボードとしてTシャツ」の持つメッセージの可変性と直截性だろう。
それは冬にTシャツを売ることを目的にしたのでは、あまりに近視眼的すぎる。
思うに情報化社会の急速な発達によって、ファッションの中にそうした多様でインスタントなメッセージの発信手段が必要とされてきたのではないだろうか。
それまで、全身レザーでマッチョな生活スタイルを表したり、ゴスロリでまとめあげて自分を趣向を示したり、あるいは就活以外では着れないようなリクルートスーツで社会や会社に謙る姿勢を表明したりと、ファッションのメッセージは既存のスタイルが優先だった。
画一的でパーソナリティを主張できなかったそうしたスタイルに、手軽に個性の主張を加えることができるのが「メッセージボードとしてTシャツ」なのではないか。
もし、潜在的にそうしたニーズがあるのなら、それは他業種にも応用が効くかもしれない。
いや、もしかしたらこれも「そんなこと今さら言うまでもないこと」
と言われるのかもしれないが・・・
http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0801/23/news184.html
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