mixiユーザー(id:809122)

2008年01月12日22:25

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観測者の設定

いやいや、『MM9』の感想で当初書こうと思っていたのは、パラダイム・シフトのことではなくタイム・スケールのことだった。

この本が本格SFとして怪獣をリアルに描いている最大の点は、ちゃんとタイム・スケールに則した描写をしているところだ。
つまり、大きさの違うものは、時間の流れも違っているということ。

我々人間とハエの感じている時間の流れが違うように、怪獣のような巨大な存在は時間の流れがその分ゆっくりしている(人間に比べて)はずなのだ。

『MM9』では人間の14倍の大きさの少女の形をした怪獣が出てくるのだが、その少女が普通に動く姿は1/3.7のスローモーションで動いているように人間には見えると描写されている。少女から見れば人間は3.7倍のちょこまかしたスピードで動いていることになる。


SF映画やアニメで僕がどうしても受け入れられないのが、動きのスケール感がうそ臭いことだ。
巨大ロボットのくせに、(スケール的に)人間よりすばやく動くなんてありえない。ジュラシック・パークの恐竜が小さなトカゲのような動きをするなんてのは、全然リアルじゃない。
巨大なものはその分動きがのろくなるものだ。それがどんなに運動機能が高かろうと、物理法則を超えて動くことは出来ないのだから。

カンフー映画でも、迫力を出すために格闘シーンだけやたら早回しをしたりするが、早いばかりでリアル感がなくなり、迫力という点では逆効果だと感じてしまう。

タイム・スケールを忠実に描かなければリアル感はなくなってしまうのだ。
惑星のように巨大なデス・スターが、2秒で爆発するなんてことはこの宇宙空間ではありえないのだ。
もしそれがありうるとすれば、それを見ている人間が衛星ぐらいに大きい場合だけだ。


つまりタイム・スケールによるリアルさの表現とは、観測者の設定までちゃんと考慮しているかということと言えるだろう。


以前骨王さんに教えてもらった松本憲生というアニメーターの作画について、非常に感心したのだが、その演出の素晴らしさは、登場人物の動きの演出だけでなく、それを見ているカメラの動きまで演出計画の中にあるという点だった。
http://jp.youtube.com/watch?v=2U108Bco6TE

キャラクターの動きだけなら、他のアニメーターもすごい人が多々いるが、結構カメラ(視点)は定点かせいぜい平行移動が多い。
http://jp.youtube.com/watch?v=2uN5Hrt_1mc
http://jp.youtube.com/watch?v=SweuOFkG8S8&feature=related
http://jp.youtube.com/watch?v=p4fyehYpJpY
http://jp.youtube.com/watch?v=CVQzIpHOE9Q&feature=related

それが松本憲生のアニメは、カメラも登場人物のように動き回る。アニメなのに手ブレもすればフレームアウトもする。自転車をこぐシーンではカメラまで横揺れしている。
これは観測者まで演出しているということであり、ビジョンとしてそれだけリアルだと言うことだ。

例えば遠くで起きている爆発シーンで、爆発と一緒に音がしたらうそ臭い。それを見ている人間に音が届くのは音速分あとになるはずだからだ。
巨大なものの動きは、近くで見ればものすごいスピードでも、ロングショットで見ればスローに見えるはずだ。
ショッキングなハプニングが起きたら、見ている者も動揺し、正確に対象を捉えられなくなるはずだ。
そこまで考えてカメラワークを演出するのがリアルな表現というものだろう。

特にCGやアニメは、自在に描けるために、逆に見えすぎてリアルでなくなる傾向があるように思う。
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