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2005年09月02日20:38

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ギュスターブ・モロー展・前期

Bunkamuraギャラリーで開催されている、『ギュスターブ・モロー展』に行きました。

モローは、私が好きな画家の中でブッチギリでメジャーな画家です。何せ、日本で画集が出ている!(笑)

会場内は、平日でも結構人がおりました。流石は象徴主義の巨匠です。
と思ったら、説明書きにこんなコトが。
『モローは、歴史画家を自認していた。』
そうなのか!モローさんは自分では「歴史画家だ。」と仰ってたのですね。
確かに、ギリシャ神話も聖書も幅広い目で見れば、歴史画よね。後世の人が、モローの独特な画風を見て“神秘の画家”と言ったのであって、モローは、きっと歴史画を描いていたのよね。

今回、まぁ、絶対意識が飛ぶな・・・(^_^;)と思って行ったのですが、意識が飛ぶどころか、初めてのコトがありました。

初めて絵を見て泣きそうになったよ!

『旅する詩人』という絵があるのです。
女性と見まごうばかりの美貌の詩人が座っている。傍にはペガサスが寄り添っている。場所は岩場らしい。絵は全体的に暗目の色調。ペガサスの頭上には白い星らしき物。そして赤い鳥のような物(に私は見えた)が詩人の後方に飛んでいる。
詩人は確かに美青年なのだが、どこか淋しそうで、悲しそうな表情をしている。「何でこんな顔をしてるんだろう?」と不思議に思ってジ〜ッと見ていたら、何か泣きそうになったのです。

この絵。説明を読んだら、この絵を描いた前年に、モローの恋人(モローは結婚してないのね。生涯母親と暮らしたの)のデュルーが亡くなっているんだって。
ちょっと思ったんだけど、ひょっとして、この淋しそうな詩人はモロー自身なのかなぁ〜と。そして、後ろに飛んでる赤い鳥のような物は、彼女の魂なんじゃないかと・・・。
もう彼女に会うことは出来ない悲しさを、こういう風に描いたのかなぁ〜と。そんなコトを思ったよ。

モローは、歴史画家を自認してたけど、やっぱり私には幻想の画家だ。
美女と戯れる幻獣達が素敵だ。
処女にしかなつかない、一角獣(角が生えてる白馬ね)。美女を魅了したキマイラ。美人の妖精とグリフォン。

今回、『キマイラ』の水彩画が来ているのですが、以前、ウィンスロップ展を見に行った時、これの油彩ヴァージョンを見ました。とっても綺麗でした。モローは、朱や紅の使い方に非常に特徴があり、又、綺麗だと思うのですが、油彩のキマイラも、そうでした。キマイラは、本当は頭部がライオン、胴が山羊、尾が龍の化け物なのですが、モローの描くキマイラは、上半身が美貌の青年。下半身も馬っぽい。美形のケンタウルスといった感じ。
この美貌の怪物に美女が惚れ、首にしがみつく。キマイラは吃驚した表情を浮かべ、飛び立った瞬間・・といった感じの絵なのです。

今回、他にもウィンスロップ展で見た物の習作や、水彩、小さいヴァージョン等が見られて面白かったです。
『聖セバスティアヌス』や『ヤコブと天使』などがそうなのですが、見比べると楽しいね。
特に、『聖セバスティアヌス』。美貌の聖者が縛られ、矢を身体に沢山受ける・・という、西洋画ではお馴染みの題材。
私、コレ、大好きなんですは(笑)。
本来、嗜虐嗜好のある私は、美貌の男や美女が、縛られたり、矢を受けて、苦痛の表情になる・・というシチュエーションが大好物なのです。
以前もどこかで書きましたが、苦痛の表情は、快楽の表情に似ているもの。
それで、どこか甘美なイメージになるんですね。
セバスティアヌスは沢山画題として描かれてるけど、結果、皆、どこかこの甘美さに魅かれた部分もあると思うよ。本来の宗教的意味合い(殉教ね)とは別にサ(笑)。

同じ意味で、『プロメテウス』もそうですね。
プロメテウスはギリシャ神話で、人間に火を与えた神様です。それがバレて、神から罰として、岩山に括りつけられて、鳥に肝臓を啄ばまれる。でも、プロメテウスは不死身だから、1日たつと肝臓は元通り。そして又、鳥に啄ばまれる。一生果てることのない苦痛をプロメテウスは受けなくちゃいけない。
モローの『プロメテウス』も、その場面が描かれていました。鳥が怖い(^_^;)。

あと、『ガニュメデス』がぁぁぁ〜(大喜び\(^o^)/)。

ガニュメデスは、トロイアの王トロスの息子。あまりの美貌ゆえ、全能の神ゼウス(ユピテル)に目をつけられ、大鷲に化けたゼウスにお酌係りとして連れて行かれます。
はい。出たな、ギリシャ神話で1番メジャーな同性愛物(笑)。
同性愛イメージの濃いこのテーマも、洋画では好んで用いられますな。
モローのガニュメデスは少年というより、青年っぽいです。そして、連れて行かれるというより、大空に飛翔する感じだ。だから怖がってないの。男前が鷲を背にポーズを決めてる感じですよ(笑)。

他にも『サッフォーの死』も魅力的なテーマですね。
サッフォーは紀元前7〜6世紀の女流詩人。ファオンという男性に惚れて失恋し、身投げした・・・という逸話があるのです。それを描いたもの。モローの描いたサッフォーは凄く豪華な衣装を着ています。飛び降りるというより、浮かんでいるようにも見えます。

余談。この身投げの逸話は事実ではないのです。
サッフォーはレスボス島というところで、女性ばかりあつめた女性島を作ったそうなんですが、この“レスボス島”が、現在の女性同性愛者という意味の“レスビアン”の語源。
「レズビアン」と発音する人が多いと思うけど、レスボス島が語源だから、実際は“レズ”と濁点は付かず“レス”と発音するのが正しかったりします。

そして、私の今回1番のオススメは、『ケンタウロスに運ばれる死せる詩人』
死んでしまって肌も青白くなった詩人を、ケンタウロスが運んでいるのですが、もう、何か、もう、萌え(笑)。いや、腐女子視点で非常に良いのです。ちょっとこう、同性愛チックな部分もあり、ロマンティシズムもありで。
これ、水彩とガッシュで描いてるのね。うわぁ〜。良くこの発色が出るな。これは、前期のみの展示なので、見たい方は11日までに行って下さいませ。

モローの描いた絵で多分1番有名な『出現』(サロメね)もあったよ。細かい文様の綺麗なコト!!

思うに、モローって、絵の印象から妖しい人というイメージだが、実際は、真面目で忍耐強くて、実直な人だったんじゃないだろうか?じゃなきゃ、こんな細かい作業出来ないと思うよ(笑)。
お母さん思いだしね(まぁ、マザコンってコトかも知れないケド(^_^;))。

結果、私、この美術展に5時間半おりました(^_^;)。
でも、図録も買ったし、ポストカードも買ったしね・・・。
多分、後期も行きます。同じくらい会場内に留まると思うんですが・・・もう、物品買っちゃったから、次回は何も買わないかも。しかも、アンケート答えて当たったので、観覧料も無料・・・(^_^;)。あ・・・何か買います。やっぱり、何か買ってきますぅ〜。だから、せめて、4時間はいさせてくれ(笑)。
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