吉良 光
【世界中で個人情報漏洩パニック。あなたの情報も既に漏れている。状況と今すぐできる対策について】
・この1カ月、日本だけで約5,000万件が漏れた。デンマークでは国の住民台帳の8割が抜かれた
・原因は、攻撃する側がAIを手に入れたことと、日本を守っていた「日本語の壁」が消えたことである
・国は「自分で守って」と言うだけである。だから、漏れても困らない形を自分で作るしかない
今、世界中で個人情報が漏れています。
しかも、ものすごい速度と量で。
今日は4つの話をします。
・世界中で何が起きているのか
・情報が漏れると最悪何が起こるのか
・なぜ今なのか
・自分と大切な人をどう守るか
少し長いですが、ぜひ最後まで読んでください。
■ 世界中で、情報漏えいパニック
まず日本から。
9月11日から10月5日までに公表された、大きなものだけ並べます。
・Gyazo 約2,362万件
・焼肉きんぐ 約1,079万件
・ムラウチドットコム 約772万件
・タイムズカー 約660万件(うち免許証などの画像が約160万件)
・infoQ(GMOリサーチ&AI) 最大約95万件
・セイコーマート 約57万アカウント
・OZmall(スターツ出版) 最大約45万件
・デジタル庁 約24.6万件
足すと、約5,000万件。
重複もあるので延べの数字ですが、日本の人口の4割に当たります。
たった3〜4週間で、です。
そして、これは日本だけの話ではありません。
一番ヤバいのはデンマークです。
10月5日、デンマーク政府が発表しました。
国の住民登録データベースに不正アクセスがあり、約880万人分の情報が抜かれた、と。
デンマークの人口は約600万人です。
人口よりも多い個人情報??
なぜ880万人なのか?
この台帳には、亡くなった人や国外に移った人も含めて約1,100万人が登録されていて、そのうち約8割がやられたからです。
抜かれたのは、氏名、住所、そして個人番号。
企業に与えていた正規のアクセス権限が悪用されました。
企業のサーバーではなく「国の台帳」そのものです。
韓国では2025年11月、「韓国のAmazon」と呼ばれるCoupangで、約3,370万件の顧客情報が漏れました。
韓国の人口の半分を超える数です。
たった一人の元社員が持っていた認証キーが、退職後も使える状態のまま残っていたと報じられています。
アメリカでは2024年、身元調査会社のNational Public Dataから約29億件のデータが流出しました。
氏名、住所、生年月日、そして社会保障番号。
アメリカ人にとって、日本のマイナンバー以上に重い番号です。
この会社は、その後破産しました。
国も、大企業も、もう安全な場所ではありません。
■ 情報が漏れると、何が起こりうるのか
「いやー、自分の情報なんて漏れても大した価値ないでしょ」
そう思っている人ほど危ないです。
最悪中の最悪の話をします。
今、ネットで口座を作るときは、身分証の画像と、自分の顔の動画で本人確認をします。
ここで、身分証の画像と顔写真が両方手に入ったら、どうなるか?
僕はネットで顔も出しています。
多くの人は、一度は自分の顔写真出したことがありますよね?
自分はSNSに顔なんて載せない?
スマホの中の写真には、誰の顔もありませんか?
それは、iCloudやGoogleDriveで自動同期されていませんか?
そう。必ずあるんです、あなたの顔写真も。
その顔写真をAIに読み込ませて、まばたきしたり首を振ったりする動画にする。
それで顔認証を突破して、僕の名前で銀行口座を作る。
その口座を、詐欺グループや反社会的勢力に売る。
大げさな話ではありません。
インドネシアでは2024年、盗んだ身分証の画像とAIで作った顔、偽のカメラアプリを組み合わせて、金融機関の顔認証を突破しようとした不正が1,100件以上見つかっています(セキュリティ企業Group-IBの調査)。
日本で口座の売買は、それ自体が重い犯罪です。
今後一生、新しい口座を作れなくなります。
政府は2026年4月、罰則を「3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」に引き上げる改正案を閣議決定しました。
それくらい重い扱いです。
あなたの名義の口座が、身に覚えのないまま詐欺に使われる。
疑いを晴らすまでに、とんでもない手間と時間がかかる。
最悪、そういうことが起こりえます。
ちなみに、マイナンバーは番号だけで何かができるわけではありません。
本当に怖いのは、顔写真付きの身分証の画像です。
タイムズカーで漏れたのは、まさにそれでした。
もっと身近な被害もあります。
infoQでは、漏えいの後、会員のポイントが勝手にAmazonギフトコードに換えられました。
611件、合計286万9,500円分。
運営会社によると、二次被害の確認は今回が初めてです。
楽天ポイントを何十万も貯めている人、いますよね?
それが、ある日まとめて消える。
2025年1〜5月には、ネット証券の口座が乗っ取られ、勝手に株を売買された金額が約5,240億円にのぼりました(金融庁)。
さらに、日テレの報道では、中国語の闇サイトに「日本の免許証1000枚」が122ドルで出品されていました。
1枚あたり約20円。
本物かどうか、タイムズカーの流出と関係があるかは分かっていません。
でも、免許証の画像が1枚20円で売られる世界に、僕たちはもう住んでいます。
■ なぜ今なのか� Ч況發垢訛Δ�AIを手に入れた
一番大きな理由はこれです。
2025年11月、AnthropicがClaudeを悪用されたサイバー攻撃を公表しました。
国家の支援を受けたとみられるグループが、攻撃作業の8〜9割をAIに自動でやらせていた、という内容です。
穴を探す。
侵入する。
データを抜く。
腕のいいハッカーが何日もかけていた作業を、AIが24時間、休まずに回せるようになった。
守る側は人間の手作業。
攻める側はAI。
漏えいが連発するのは、ある意味当然です。
■ なぜ今なのか�◆�日本を守っていた「壁」が消えた
もう1つは、日本特有の理由です。
日本はこれまで、日本語に守られてきました。
海外の詐欺グループにとって、日本語は難しすぎた。
詐欺メールを送っても、文章が不自然ですぐバレる。
(みなさんも経験ありますよね)
日本独自のサービスや習慣も分かりにくい。
わざわざ日本を狙う理由が薄かったんです。
それが、生成AIで一気に崩れました。
セキュリティ企業のプルーフポイントによると、世界の新種のメール攻撃のうち、日本を狙ったものの割合はこう変わっています。
・2023年 4.3%
・2024年 21.0%
・2025年 83.3%
2年で、4%から8割超へ。
世界中の詐欺メールの新作の大半が、今は日本に向けて作られているということです。
AIを使えば、誰でも自然な日本語が書ける。
「日本語がおかしいから怪しい」は、もう通用しません。
しかも日本には、アプリの本人確認で免許証の画像を送る習慣があります。
便利な仕組みですが、裏を返せば、身分証の画像が企業のサーバーに大量にたまっているということです。
日本語という壁がなくなった今、日本は「守りが薄いのに、お宝が多い国」になってしまった。
■ 国は「自分で守って」と言うだけ
そんな中、日本政府は何と言ったか。
10月6日、古川デジタル大臣が会見でこう呼びかけました。
「自分の情報は自分で守るという意識を持って」
対策として挙げたのは3つ。
・パスワードを使い回さない
・多要素認証を使う
・怪しいメールやリンクを開かない
どれも正しいです。
でも、ちょっと待ってください。
今回の流出は、どこから起きたのか?
・デジタル庁 VPN機器の脆弱性を突かれ、保守担当者のアカウントで侵入された
・infoQ サイトのソフトウェアの脆弱性を突かれた
・デンマーク 企業に与えた正規の権限を悪用された
・Coupang 元社員の認証キーが生きていた
全部、預かった側の穴です。
あなたがパスワードを使い回していなくても。
多要素認証を設定していても。
怪しいメールを1通も開いていなくても。
預けた先が破られたら、あなたの情報は漏れます。
しかも、デジタル庁自身が9月11日に、政府のシステムから職員などの情報約24.6万件が漏れた可能性を公表したばかりです。
国のデジタルを担う役所が、自分の足元を守れていない。
その1カ月後に、国民へ「自分で守って」。
個人に備えを呼びかけるのはいいんです。
でも、報道を見る限り「国としてこう守ります」という具体策は出てきません。
不正アクセスが起きたら「自分の情報は自分で守って」。
災害が起きたら「自分で備えて」。
生活が苦しくても「自助が大事」。
税金は取る。
責任は自己責任。
じゃあ聞きます。
僕たちは、何のために税金を払ってるんですか?
自分たちのシステムを守ること。
情報を預かる企業に、守らせるルールを作ること。
破られたら、責任の所在をはっきりさせること。
これは国民1人1人にはできない、国にしかできない仕事のはずです。
ちなみにEUでは、個人情報を漏らした企業に、世界売上の最大4%の制裁金を科せます。
守る責任は、まず預かった側にある。
本来、これが筋です。
■ 今すぐできる対策
とはいえ、国に文句を言っても、明日の漏えいは止まりません。
だから、考え方を変えます。
漏れることは、防げない。
でも、漏れたときの被害は、小さくできる。
自衛の目的を、ここに置き直してください。
今日からできることを6つ挙げます。
�〇箸辰討い覆ぅ機璽咼垢蓮⊂辰港阿法崗綵颪�」する
・クレジットカードなどの決済情報を、まず削除する
・登録している名前や住所を、でたらめな内容に書き換える
・それから退会する
登録は一瞬なのに、退会ボタンが見つからないサービス、多いですよね。
しかも、退会してもデータはサーバーに残っていることがほとんどです。
システムの作りとして「削除済み」の印を付けるだけで、データ自体は消さないことがよくあるからです。
だから、消すより先に、中身を無意味にしておく。
これなら、後で漏れてもほぼ困りません。
電話番号の変更にSMS認証が必要な場合は、povoのような維持費の安いサブ回線を使う手もあります。
�▲僖好錙璽匹鬚笋瓩董▲僖好�ーに切り替える
パスキーは、サービスごとに専用の鍵を作り、そのサイトの正しいドメインとセットで端末に保管する仕組みです。
入力する行程がないので、偽サイトにだまされて打ち込むこともない。
偽サイトでは、そもそも鍵が反応しません。
フィッシングにはめっぽう強いです。
ただし万能ではありません。
最近の攻撃は、ログインした後の「通行証」を盗む方向に移っています。
鍵を保管しているアカウントや端末の守りが甘ければ、まとめてやられます。
端末だけに保管していると、なくしたときに自分も入れなくなります。
鍵を預ける先の守りと、なくしたときの戻し方。
この2つはセットで考えてください。
��ポイントを貯め込まない
ポイントは、現金と同じように狙われます。
使う予定のないポイントは、早めに使う。
何十万ポイントも眠らせておくのは、もはや財布を道に置いているのと同じです。
�じ�座を2つ以上の銀行に分ける
1つの口座が乗っ取られたり止められたりしても、生活が止まらないようにする。
カードも、別々の決済網のものを2枚持っておく。
�ジ酋發�1週間分、手元に置く
世界で一番キャッシュレスが進んだ国の1つ、スウェーデン。
その中央銀行が今年3月、全世帯に「大人1人あたり約1週間分の現金を手元に」と勧めました。
デジタル化が進むほど、止まったときの弱さも増すからです。
便利にした張本人が、こう言っています。
��身分証は、本当に必要なときにしか出さない
免許証やマイナンバーカードなど、本人確認に使うものの画像は、一度渡したら取り返せません。
「本人確認のために画像をアップロード」と言われたら、一度立ち止まる。
そのサービス、本当に必要ですか?
■ 「大きいものに守ってもらえる時代」は終わった
AIで攻撃は速くなった。
日本語の壁はなくなった。
国の台帳ですら抜かれる。
そして国は「自分で守って」と言う。
なら、答えは1つです。
大きいものに守ってもらう前提を捨てる。
国も、大企業も、もうあなたの情報を守り切れません。
守れるのは、あなただけです。
この記事を最後まで読んだあなたは、もう何をすればいいか分かっています。
あとは、今日1つやるだけです。
まずは、使っていないサービスを1つ思い出してください。
今夜、そのアカウントの中身を書き換える。
そこからです。
あなたは今、いくつのサービスに個人情報を預けていますか?
長文読んでくださり感謝します。
明日も、よい人生とよい旅を!
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