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2026年07月15日11:24

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珍動物メモ

珍動物メモ

店に入ってきたクマは、誰にも襲いかからなかった。
慌てもしなかった。
ただカウンターの前まで歩き、クッキーを一つ選び、口にくわえて、そのまま静かに出ていった。
まるで、最初から買うものが決まっていた客のようだった。

その出来事が起きたのは、近所にある小さなコーヒーショップだった。
店内には客もいた。
店員もいた。
けれど、自動ドアのほうに大きな影が見えた瞬間、誰もすぐには動けなかった。
入ってきたのは、人ではなかった。
一頭のクマだった。
普通なら、悲鳴が上がってもおかしくない。
店内が騒ぎになっても不思議ではない。
しかし、そのクマは走らなかった。
暴れなかった。
棚を倒すことも、客に近づくこともしなかった。

ただ店内を少し見回し、まっすぐカウンターのほうへ向かった。
そして、そこに置かれていたクッキーを一つくわえた。
選び方があまりにも落ち着いていたため、見ていた人たちは余計に驚いた。
盗みに入ったというより、いつもの店でいつものおやつを取っただけのように見えたからだった。
クマはクッキーをくわえたあとも、急いで逃げなかった。
振り返って威嚇することもなかった。
何事もなかったように出口へ向かい、自動ドアを通って外へ出ていった。

店に残された客たちは、しばらくその場で固まっていた。
何が起きたのか、すぐには理解できなかった。
被害は、クッキー1枚。
壊れたものはなかった。
けがをした人もいなかった。
けれど、野生動物の担当者によると、クマが人の多い屋内へ自分から入ってくるのは珍しい行動だった。
本来なら、クマは人の気配が多い場所を避ける。
しかもその地域では、最近クマ用の捕獲わながいくつか設置されていたという。

その話を聞いた地元の人たちは、少し複雑そうに笑った。
「そりゃあ、罠よりクッキーを選ぶよね」
そんなコメントまで寄せられた。
もちろん、可愛い話だけで終わらせてはいけない。
クマは野生動物であり、近づくことは危険だ。
店内に入ってきたのが一頭の落ち着いたクマだったから、今回は大きな事故にならなかっただけかもしれない。
それでも、防犯カメラに残ったその姿は、多くの人の記憶に残った。
大きな体で店に入り、誰にも迷惑をかけず、カウンターのクッキーを一つだけ選んで帰っていく。
まるで、自分なりに一番平和な方法で、甘いものを手に入れようとしたみたいだった。
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