ままならない人生に葛藤しながらも自由に生きたいと願う女性たちの友情を、光に満ちた淡い映像美と幻想的な世界観で描き、2024年・第77回カンヌ国際映画祭にてインド映画として初めてグランプリに輝いたドラマ。
ムンバイで働く看護師プラバと年下の同僚アヌはルームメイトだが、真面目なプラバと陽気なアヌの間には心の距離があった。プラバは親が決めた相手と結婚したものの、ドイツで仕事を見つけた夫からはずっと連絡がない。一方、アヌにはイスラム教徒の恋人がいるが、親に知られたら大反対されることがわかりきっていた。そんな中、病院の食堂に勤めるパルヴァディが高層ビル建築のために自宅から立ち退きを迫られ、故郷である海辺の村へ帰ることになる。ひとりで生きていくという彼女を村まで見送る旅に出たプラバとアヌは、神秘的な森や洞窟のある別世界のような村で、それぞれの人生を変えようと決意するきっかけとなる、ある出来事に遭遇する。
パルヴァディ役に「花嫁はどこへ?」のチャヤ・カダム。ドキュメンタリー映画「何も知らない夜」で、山形国際ドキュメンタリー映画祭2023インターナショナル・コンペティション部門の大賞を受賞するなど注目を集めたムンバイ出身の新鋭パヤル・カパーリヤーが、長編劇映画初監督を務めた。(映画.comより)
<2025年8月3日 劇場鑑賞>
私は普段、とてもよくインド映画を見るのですが、この映画はかなり雰囲気が違っていて戸惑いました。まだまだ女性が、親の言う通り、会ったこともない人と結婚する風習が残っていたり、ヒンズー教徒の女性がイスラム教徒の男性と結婚できなかったり、あるいはこの映画では示されなかったけれど、生まれの違い(つまりカースト)で人生がどうにもできなかったり、そういう描写はどの映画にもあって、この映画が特別だということはないのですが、たぶん私が思うに、これほど静謐な映画に仕上がったのは、ダンスシーンがないとかいうことではなく、彼女たちが単独で暮らしているからではないかと思うのです。ムンバイに出稼ぎに来ているのだから当たり前なのですが、両親や親せきに囲まれていない、ということがこの映画の雰囲気を違ったものにしていると思います。
責任ある地位にいると思われるプラバ。まだまだ若いアヌ。自由なアヌをプラバが注意することもしばしばです。でも、なんだかんだ言っても、部屋をシェアして一緒に暮らしています。それにしても、ドイツに出稼ぎに行ったプラバの夫は、なんで電話の1本も寄こさないんでしょうね。無記名で炊飯器なんか送ってくるし(ドイツ製だから、たぶん夫)。名前くらい書けよ、不審物を送ってるんじゃないんだから、と思ったのは私だけではないはずです。そして、同じく地方出身のパルヴァディ(病院食堂勤務)が立ち退きの憂き目にあって、故郷に帰る彼女を一緒に送っていく、ということで、女3人の旅が始まるのですね。そしてムンバイも幻想的な明るさでしたが、パルヴァディの故郷は静かで美しく、ほとんどは夜のシーンでしたが、どこか包むこむような静けさがあるのでした。
彼女たちの病院はとても忙しそうだったのですが、「こんな長いお休みが同時に取れたのね」と不思議に思うほど、彼女たちはゆっくりと自分を見つめなおす時間を過ごしてゆきます。いいね。私もこんな時間を過ごしたい。でもパートだから「お給料減る〜」って金縛りにあうだけかもしれませんけど(笑)。
でも、美しいのはここまで。現実は、パルヴァディは黙って立ち退いたわけだし(亡くなった夫に何も聞かされてなくて、家の登記書も持ってなかったので、補償もなく立ち退いた)、アヌの異教徒恋人問題が解決したわけでもない。プラバも夫に会えたわけではなく、明日からまた仕事に忙殺される。ここ、一縷の希望が欲しかったかもです。まぁしかし、人生ってそんなものですけどね。個人的には「カンヌ映画祭、グランプリ!」と言われるほどは感動しなかった映画でした。
ログインしてコメントを確認・投稿する