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2026年02月11日06:50

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専門家のバトルを砂かぶりで

 カイシャの工事が始まるので、設計士さん、工事業者さんを交えて打ち合わせ。

 昼に始まったけど、2、3時間はかかったか。

 建て替えなんてのは別として、うちのカイシャとしても金額的、規模的にも比較的大きい工事になる。

 去年から打ち合わせして、設計してもらって、業者さんの入札をお願いして、と、ここにくるまでもけっこうな手間、暇、時間、お金がかかっている。

 過去、カイシャで大きな工事がなかったわけではないが、そのときは俺の父がシャチョウだったり、カイチョウだったり、事務的手続きにはコードネーム=ジイがいたりで、俺が直接かかわることって、実はなかったんだよね。

 横でみてはいたけど。

 工事業者さんの選定にも、それなりにひと悶着あった。

 当初、設計士さんが自分とかかわりのある会社を使いたいと言ってきたんだよね。

 ただ、うちの業態から考えて、決め打ちはできない。

 数社に声はかけないといけないという流れはある。

 その中で、よくうちの工事をしてくれていたWさんの会社にも声をかけた。

 ただ、Wさんは設計士さんの息がかかったところが来るなら、出来レースになりがちだから、ちょっと遠慮したいという。

 カイシャ内のT君は、小さい工事でもすぐに来てくれるWさんを信頼している。

 Wさんと、もう一社、質は高いけどそのぶん価格も高い、うちの業界で定評のある業者さんに声をかけ、出来レースとかナシで、厳密に三社で入札としましょう、という話になった。

 設計士さんは、しぶっていたが、理屈はそうなので抗わなかった。

 設計士さんが引っ張ってくるK組は、過去に何回か仕事をしてもらっている。グループの中でも建て替えをやってもらったところもある。

 ただ、数千万から億という大きな工事は、すごくがんばるんだけど、その後のアフターケアは薄いんだよね。

 営業のYさんも、にこやかで腰は低い。ただちょっと、うさん臭く感じるところはあって、電話をかけると「はいはい、すぐ手配しまーす」って威勢はいいけど、その後、なかなか業者がこない。

 そのうち、うちから連絡することはなくなった。

 まぁ、そういう会社なのだと思う。

 今回設計士さんがK組をつかいたい、といってまたYさんを連れてきた。

 正直、前にK組に連絡してから5、6年はたっているから、Yさんも異動していると思ってたんだけどね。「おひさしぶりです」とにこやかに親しげに声をかけてきたときは、「こいつかぁ」という気分だったのが正直なところ。現場監督の印象は悪くなかったんだけど、あの人やめたって話だったからなぁ。

 去年の11月くらいに、ヤクイン会で工事着工のOKをもらい、12月頭には細かいところをつめ、年内に入札、年が明けて1月中に着工というつもりでいた。

 ただ、12月頭の打ち合わせ後、こちらは動いているのに、その後、設計士さんからの連絡が途絶えた。

 それでなくとも忙しい年末。

 気がつくと、年末になってようやく設計があがったので、各業者にまわしますとの連絡がきた。
 
 えー?新年度間に合うのかなぁ、と一抹の不安が出てきたのは否めない。

 設計士さんから工事会社をせかしたらいい加減な見積もりだしてくるから、といわれ、結局入札で各業者さんが見積もりを提出する期限は1月末になった。

 当日になって、まずWさんが見積もりを持ってきた。

 設計士のところに持っていくと、裏で情報をもらされるかもしれない、と、「厳封して、シャチョウのところに持っていきますから」と言ってたからね。

 まぁ実際には、封筒に封はしてなかったけど。

 その後、設計士さんから電話があり、

「K組が降りました」

「は?」

「この時期、職人が集まらんというんです。工期に間に合わないということで。あと、このくらいの値段では、ということでしょう」

 リフォーム程度では、K組のメガネにはかなわない、ということだろう。

 設計士さんは俺の知らない別の会社に声をかけ、そこが見積もりを持ってきた。

 いきなり知らない会社が、「設計士さんに言われてきました」と見積もりを持ってきたので、びっくりしたけど。

 設計士さんに連絡すると「K組が降りるというので、私がよく使うところに声をかけておきました」という。

 そういうの、うちに知らせないでありなのか?と思わないでもないが。

 結局、Wさんのところが一番低い見積もりを出してきたので、Wさんのところに決めたんだけど、それでも設計士さん、あれこれ言っていたなぁ。

「あっちの会社なら、もう少し下げさせることできますから」

 横で聞いていたT君が「それじゃ、入札の意味ないじゃないですか」と、不信感丸出しの目であとからゆっていたね。

 へそを曲げた設計士さんは、その後「私はもう口を出さん方がいいでしょうから」とか言ってきたが、施工管理のお金も払っている。「いや、それでは困ります。しっかりみていただかないと」と言って、打ち合わせになったのだった。

 設計士さんとWさん、それに現場監督のIさんに、名前ははっきり聞いたことないけど、よく来てくれる職人さん、うちからも俺とT君など入って、5、6人でシャチョウ室の打ち合わせ。

 設計士さんとWさんの会社の方々は、お互いにこやかに、でもけっこうなバトルを繰り広げていた。

 たぶん、そこそこ緊張感のある場面だったのだろう。

「いや、そっちに持っていきますか?」
「できるでしょ」
「ここ、これくらいしか・・・」
「〜は、どれくらいにになってる?」
「もちろん、うちはできないとは言えませんから、設計士さんにやれといわれたらやりますけど」

なんて専門用語をまじえたバトルが繰り広げられ、何を言われているかわからない俺は、ただその緊張感をまじかで楽しませてもらった。

 打ち合わせが終わった後、職人さんが俺のところにきて、
「どうも、いろいろすみません。あれこれいいまして・・・」

なんて謝ってきたけど、
「いえいえ。とても大事なことを話されていたのでしょうから、当然のことです」

と答えた。実際よくわからなかったし、現場で働く方々が意見を突き合わせることは、よい仕事には必須のことと思う。

 へんに仲いいところ同士でなあなあにやられるより、俺としては信頼できると思うんだけどね。

 職人さんは、「これやってうまくいったらいいけど、下手したら無駄手間でおわりますよ」という一方で、設計士さんは「これでいけるでしょ」と専門的な知識で応戦する。

 素人の俺としては、真剣に意見を戦わせたうえで、いい仕事をしてもらえたら、特にそれ以上いえることはないな。

 
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