新年度の予算とか事業計画とか、あれこれ忙しく、ストレスフルな日々を過ごしている。
やれやれ。
まぁ、だいたい見通しはついたけど。
実家の母から、食料が心もとないから買い物に行ってほしい、と電話がきたのは木曜日の夕方だった。
帰りに買い物して寄る、と伝えたものの、会計事務所のTさんと仕事しているうちに時間は9時を回った。
さすがに遅いので、その日は無理と母に話し、まぁなんとかなるとのことだったので、金曜日の帰り、買い物して実家に寄った。
「忙しいのに悪いね」
母はしきりにいっていたが、それくらいは近所に住んでいるし、負担ではない。
食料を冷蔵庫に入れたり、ちょっとした片づけをして帰ろうとしたとき、それまでソファでうつらうつらしていた父が立ち上がった。
「ってけ」
と言われてたような気がするが、はっきりと聞き取れなかった。
「あぁお父さん。元気?体調はどう?」
倒れたのは5年前になるか。
そこそこ元気ではあるが、もともとよくしゃべっていたのが、最近はめっきり口数が減った。
昔何かの本で、幸田露伴とか鶴見俊輔だかは晩年はほとんど口を利かずにひたすら本を読んでいた、という話を読んだ記憶がある。俺もそうなるのかなぁ、と思っていたけど、黙ってテレビを見ているか寝ている父をみるに、そういう面は感じる。
そのときは何を言われたかわからなかったんだけど、台所から母がきて、
「ほんとはもっとしなくちゃいけないんだけど」
と言いながら、一万円札を出した。
「え?いいよ、そんなの」
「いいから」
「いい、いい」
苦笑しながら、母を制した。
あぁ、そういうことかと思った。
父は、「もってけ」と言ったのだ。
何かあると、すぐにこづかいとか出す父だったからなぁ。
いや、買い物のお金は受け取っているけど、さすがに50代でシャチョウを継いでいる身で、年金生活に入った親からこづかいをもらおうとは思わない。
めっきり口数の減った父だけど、そういうところは変わらないね。
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