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2025年12月08日11:12

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Facebookから転載

恋人の女性は「他国のスパイ」

会社の仕事を終えて、いつものように駅へ向かって歩いていると、前方から見知らぬ男が二人、まっすぐこちらに近づいてきた。
「少し、お話を聞かせてもらえますか」
声こそ丁寧だが、雰囲気はどうにも威圧的で、断れる空気ではなかった。
逃げても無駄だと直感し、私は観念して彼らに従うことにした。
そこから、恐ろしい話がはじまった。
ーーまず前提として、私は最近、かわいい恋人ができたばかりだった。
久しぶりの恋愛で、浮かれていた部分もあると思う。

しかし、男たちは身分証を見せながら言った。
彼らは公安であり、その恋人の女性は「他国のスパイ」だというのだ。
あまりに突拍子もない話で、最初は冗談だと思った。
もちろん、私は会社の重要な情報なんて彼女に話した覚えはない。
「そう思っている人ほど危ないんです」

公安の一人が、淡々と続けた。
「そのスパイは、情報を引き出すのが抜群にうまい。たとえば『エリテーション』という手口があります」
聞き慣れない単語に、思わず聞き返す。
「エリテーション?」
「はい。これは、こちらから直接“質問”しない方法です。代わりに、断定的な言い方や、わざとズレた推測を投げかける。すると相手は、自然と“訂正”したくなったり、“補足”したくなったりする。その過程で、相手のほうから自発的に情報をしゃべってしまうんです」

そこで、彼らは例を挙げた。
女:「いつも仕事、マンネリで退屈なんじゃないの?」
男:「いや、今度、大きな取引があるんだよ」
女:「出張出張って言うけどさ、アメリカなら大谷さんの試合も見られるね?」
男:「いや、今回はアメリカじゃなくて、ベルギーに行くんだ」
彼らの説明を聞きながら、私はぞっとした。
まさに、そんな会話をした覚えがあったからだ。
彼女はただ会話を楽しんでいるように見えた。
私も「いやいや、そうじゃなくてさ」と、軽い気持ちで訂正しただけのつもりだった。
なのに、その一つ一つが「大きな取引がある」「行き先はベルギー」といった情報になっていたわけだ。

私たちが他国のスパイに狙われるかどうかは、人によって違うだろう。
けれど、世の中には、こうした話術や心理テクニックを巧みに使ってくる人間がいる、ということだけは覚えておいてほしい。
何気ない会話のつもりで、「つい本当のことをしゃべってしまった」という経験があるなら、それはすでに、どこかで“エリテーション”のような技術に巻き込まれているのかもしれない。
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