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2025年10月06日23:59

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ノーベル生理学・医学賞2025 大阪大学特認教授坂口志文氏が受賞する 研究分野の免疫学 制御性T細胞の性質を解き明かし、癌やアレルギー治療に繋げる

10月6日、ノーベル賞ウィークの先陣を切って、生理学・医学賞が発表された。受賞者3名のうち、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの坂口志文特認教授が含まれていた。今回は坂口特認教授の専門分野、免疫学の「T細胞」の性質に迫っていく。

 写真=2025年ノーベル生理・医学賞2025の受賞者 FNNプライムオンライン 2025年10月6日18時36分付け https://www.fnn.jp/articles/-/941685
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 目次
第1章 2025年ノーベル医学・生理学賞の受賞者坂口志文氏
第2章 T細胞と癌細胞の関わり
第3章 FoxP3と呼ばれるたんぱく質と大腸がん
     


第1章 2025年ノーベル医学・生理学賞の受賞者坂口志文氏

 2025年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大阪大学特認教授の坂口志文氏の功績について、2025年5月5日に更新した作品にて紹介させていただいている。

 下記の日記 第5章 自己免疫疾患を予防する たんぱく質「FoxP3」の正体を掴め!
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1989910159&owner_id=32437106

 写真=ノーベル医学・生理学賞2025を受賞した坂口史文教授 掲載元 産経新聞 2025年10月6日20時4分付 https://www.sankei.com/article/20251006-QH3WES7IAFK2VH5U3Q4FEI4ILM/
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 坂口氏の研究は、免疫学である。1995年には、アレルギーやリュウマチなどの症状にかかわるT細胞の存在を明らかにしていた。Tとは、胸腺(thymus)の頭文字のことである。血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種のことを差す。血中リンパ球の60〜80%をT細胞で占める。骨髄由来の未熟なリンパ球が胸腺で分化・成熟し血流や末梢組織に移行していく。 つまり異物から守る機構(免疫応答)の司令塔となる細胞集団なのである。

 実のところT細胞は2種存在する。一つはキラーT細胞という。ウイルス感染細胞やがん細胞を殺傷し排除する細胞性免疫に関わる。もう一つのヘルパーT細胞は抗原刺激に応答して、他の免疫細胞のはたらきを調節する。異なる役割を果たす2つのT細胞の指令役を「制御性T細胞」という。

 写真=T細胞の簡単な解説図 やさしいLPS T細胞(Tリンパ球)より
https://www.macrophi.co.jp/special/1990/
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 将来的に、根本的治療法がないアレルギーや、臓器移植に応用できるか期待される。

    第2章 T細胞と癌細胞の関わり

2022年10月8日、最先端の研究施設を備えた国立がん研究センターは、新たな成果を発表した。制御性T細胞のがん組織における活性化プログラムのキーとなる分子を見つけ出したのである。

 以下報告文 がん+プラス 2022年10月31日
https://cancer.qlife.jp/news/article19190.html

「同研究センター研究所腫瘍免疫研究分野/先端医療開発センター免疫トランスレーショナルリサーチ分野の板橋耕太研究員、西川博嘉分野長らの研究グループが明らかにした。

 研究グループは、がん組織内で制御性T細胞が活性化して増殖し、がんの進展やPD-1/PD-L1阻害薬の治療抵抗性に関与していることを突き止めていた。がん組織における制御性T細胞の活性化メカニズム、特に遺伝子の働きやDNA構造の安定化に関わるクロマチンの詳細な状態に関しては、未解明だった。

 クロマチンとは、真核細胞内に存在するDNAとタンパク質からなる構造である。日本語では染色質ともいう。遺伝子の発現を制御する動的な構造体でもある。

 以下 クロマチンの解説 写真掲載元 ココミ生物 + 化学 【高校生物】「染色体・DNA・クロマチン」の違いを解説より
http://kokomiro-seibutu.com/2018/12/04/sennsyokutai1/

 簡単に解説すると、核の中に存在するDNAは、実のところとてつもなく長い。体細胞1個のDNAを引き伸ばすと、およそ2m。核一個に収まるべく、ヒストンと結合する。落ちついた先のヌクレオソームではしっかりと巻き付く。この基本的な構造を「染色体」という。
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 さてクロマチンは、ヌクレオソーム同士が集まり、糸状になった繊維のことをさす。分裂を行なっていない時期(つまり間期)の細胞の核では、染色体はクロマチン繊維の状態で存在している。

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分裂時に変化をとげていく。細胞の核内の染色体は、凝縮される。糸状だったクロマチン繊維が集結し、棒状となる。我々に馴染み深い、いわゆる「染色体」の状態である。

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 国立がん研究センターの研究グループは、がん組織内の制御性T細胞の働きぶりに迫るため、実際の臓器を用いて実験を試みた。肺がん組織から制御性T細胞と他のCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞を採取した。各々のT細胞の細胞核内の、クロマチンの状態と遺伝子発現の詳細な解析を実施する。その結果、肺がん組織内の制御性T細胞の特徴がわかってきた。がん組織内の他のT細胞や肺がん患者の血液中の制御性T細胞のいずれとも全く異なるクロマチン構造と遺伝子発現のプロファイルを有していることが明らかになった。研究チーム、がんの微小環境下に適応するために、制御性T細胞のクロマチンは特徴的な構造変化が起こっていると結論付けた

 もう一つわかった事がある。がん組織内の制御性T細胞は、他のT細胞や血液中の制制御性T細胞と異なるクロマチンの構造を有していたのである。網羅的な解析データから、がん組織内での制御性T細胞の分化と活性化のキーとなる分子を探索したところ、転写因子の「BATF」を同定した。BATFは、肺がん組織内の制御性T細胞の遺伝子発現制御機構を再構築することにより、適合して活性化するためのプログラムの中核として機能していたのである。

 がん組織内で制御性T細胞が適応していることを突き止めると、転写因子のBATFの機能を検証する。初めに遺伝子操作によってBATF遺伝子の働きをなくしたノックアウトマウスを作製した。マウスのがん組織中の制御性T細胞の数や、制御性T細胞/CD8陽性T細胞の比は著減し、その抑制活性も有意に低下した。

 最後に制御性T細胞のみでBATFの発現が失われるマウスを作製し、がん細胞の増殖への影響を検討した。このマウスではがんの増殖が著明に低下するのである。がん組織内で制御性T細胞が十分に活性化して抗腫瘍免疫応答を抑制するためには、BATFが必須であることが明らかになった。制御性T細胞を標的としたがん免疫療法の新たな可能性が示されたのである。

 研究グループは展望について語った。

 「本研究では、転写因子のBATFが、がん組織内の制御性T細胞のクロマチンのリモデリングに重要であり、制御性T細胞の活性化プログラムのコアを担っていることを発見しました。血液、正常組織、がん組織内の制御性T細胞を詳細に解析して得られた結果は、がん組織内の制御性T細胞を標的とする免疫治療開発のみならず、制御性T細胞が発症に関わる自己免疫性疾患の理解などを始めとして、様々な医学研究に応用されることが期待されます」
                          <終わり>

      第3章 FoxP3と呼ばれるたんぱく質と大腸がん

制御性T細胞をいかにコントロールするのか、次の研究課題である。その制御性T細胞の維持に必要なたんぱく質が、別のたんぱく質と結合して働いていることを確認した。2つのたんぱく質を分離することにより、制御性T細胞の動きを抑えられたのである。その制御性T細胞の内部で特異的に働くマスター遺伝子(タンパク質)である『FoxP3』に着目する。FoxP3と親和性が高いたんぱく質「Ikzf1」の構造を変えてマウスに投与した。経過観察したところ、自己免疫疾患を起こして、間もなく死亡したのである。生態解剖したところ、制御性T細胞から免疫物質の一種を多く出すようになっていた。制御性T細胞が、免疫物質の一種と反応し、機能不全に陥り、自己免疫物質を多く放出したのである。

 実のところ、2019年時点で年間15万人が診断された大腸がんの進行にも制御性T細胞がかかわっていることが新たにわかった。

 以下 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 

「プレスリリース 制御性T細胞が大腸がんの進行に関与していた!―腸内細菌のコントロールによる大腸がん治療に期待―」概要より 引用
https://www.amed.go.jp/news/release_20160426.html

大阪大学免疫学フロンティア研究センターの西塔拓郎博士、西川博嘉准教授、坂口志文教授らの研究グループは、大腸がんの組織内部の深くまで進行したリンパ球において、従来、制御性T細胞と見なされていたFOXP3陽性細胞の中に、FOXP3を弱発現する細胞群が多数存在し、がん免疫を促進することを明らかにしました。また、この細胞群は、免疫を抑制する能力を持たない活性型T細胞であり、大腸がんに付着する腸内細菌により腫瘍内で増加したIL-12などの炎症性のサイトカイン※4によって誘導されることを解明しました(図)。さらに、この様なFOXP3を弱発現する細胞群が多数浸潤※5する大腸がんは予後(治療後の経過)が良好である一方、抑制活性をもつ制御性T細胞が多数浸潤する大腸がんは他のがん腫と同様に、制御性T細胞の浸潤が予後不良の原因になることを示しました。」

写真=解説図 腸内細菌が腫瘍に浸潤することで腫瘍内炎症反応を惹起し、
FOXP3を弱発現する活性化T細胞を誘導し、腫瘍免疫を亢進する
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がん免疫治療において抗腫瘍免疫に働く細胞群として、制御性T細胞は大きな注目を集めており、この細胞群による免疫抑制をコントロールすることは、がん免疫治療をより効果的にするために必須のものであると考えられています。

本研究成果により、未だ一部の腫瘍でしか、がん免疫療法の効果が認められなかった大腸がんにおいて、制御性T細胞を標的としたがん免疫療法の可能性が示唆されました。また、腸内細菌が腫瘍内炎症を介して腫瘍免疫を高める可能性があることが示され、腸内細菌のコントロールによる大腸がん治療への応用の可能性が期待されます。

                      <引用終わり>

制御性T細胞は、他の免疫細胞の手綱を握る存在だった。自己免疫疾患の抑制、また臓器移植の際、拒絶反応を緩和させる効果が期待される。生涯二人に一人が癌にかかる時代、治療法の確立は、健康長寿に大きく近づく。

以下 参考記事 写真掲載元 感染症と免疫のQ&A コラム
免疫細胞ががんの味方をする?!
山本雅裕教授に聞く「Th1型制御性T細胞の除去は安全にがん免疫を誘導する」
https://biken.yawaraka-science.com/clum/detail/18

2023年7月、大阪大学の山本雅裕教授は、癌治療へ新たな知見が得られたと発表した。特定の免疫細胞だけを特定し、除去できる新型マウスの開発に成功したのである。この新型マウスを活用し、制御性T細胞(Treg細胞)のサブセットの一つであるTh1型制御性T細胞(Th1-Treg細胞)が、さまざまな腫瘍に蓄積していることが判明した。確実に体内から制御性T細胞を除去すると、自己免疫疾患を起こす。サブセットの一つであるTh1-Treg細胞のみを除去した場合は、自己免疫を起こさずにがん免疫を誘導したのである。T細胞を人為的にコントロールすることにより、将来的に癌の誘発を未然に防ぐことも可能になると期待される。

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今回の研究で画期的だったのは、Th1型(Th1-Treg細胞)やTh2型など、亜集団(サブセット)の存在が示唆されたことである。亜集団を除去することにより、免疫反応を起こさせた。臨床治験を経て、実用化が待たれる。

 医学・生理学の分野は、我々人の運命を大きく左右する。アトピー性皮膚炎や、ハウスダストを含めアレルギー患者は、効果的な治療薬を求めてやまない。ノーベル生理学・医学賞の坂口教授を輩出した大阪大学の研究は、大きくスポットライトを浴びている。


 以下 過去のノーベル賞受賞関連日記

 2024年ノーベル平和賞 被団協

��2024年10月12日付 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1988580928&owner_id=32437106

 2023年ノーベル医学・生理学 物理学 化学 受賞について

��2023年10月4日付 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986061884&owner_id=32437106

 2022年ノーベル医学・生理学受賞

��2025年1月9日付 医学の観点から旧約聖書のアダムとイブの実在性について DNAの二重らせん構造の発見物語!女性化学者ロザリンド・フランクリンの功績 ホモ・サピエンスとネアンデルタール人 デニソワ人  刑事事件のDNA鑑定
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1989175955&owner_id=32437106

2019年ノーベル物理学賞について 太陽系外惑星の発見

��2019年10月9日付 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1973251701&owner_id=32437106


■【速報】ノーベル生理学・医学賞に大阪大学特任教授・坂口志文さん
(TBS NEWS DIG - 10月06日 18:43) 
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=266&from=diary&id=8505783
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