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2025年07月16日19:45

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減胎手術の話

まず最初に言っておくと、自分は産婦人科医で以前は不妊症が専門。
体外受精も含めた不妊治療を行なっていた。
つまり「多胎妊娠を作る(可能性のある)」立場。
博士号をとったあとはいわゆる地域中核病院を転勤して歩いた。
つまり「多胎妊娠になった患者を診療しお産までとる」立場。
今はお産をとらない外来のみのクリニック。
つまり「多胎の妊婦を発見して大きい病院に紹介する」立場。

まず不妊治療だが、体外受精なら子宮内に戻す卵子の数で児の数が決まる。
ごくまれに1個しか受精卵を戻してないのに戻した後で双子化することがあるが
珍しいので例外とする。
多胎は何よりも「妊娠した母体」のリスクとなる。
子が生まれても母親がダメになったのでは意味がない。
だから、かなり前から「1個の受精卵のみ移植」と
不妊学会などでは申し合わせが行われているのだが、強制ではない。
子宮内に戻す受精卵の数が多いほど妊娠成立の可能性が高いこともわかっている。
「単一移植をお勧めしたのですが患者さんの強い要望で」と言われたら反論はできない。

体外受精でなく排卵誘発剤の場合。
たった一個の卵子のみ排卵させるのはある程度以上の技術となれが必要。
ずっと前から使われている、たとえばクロミッドという排卵誘発剤は
排卵する個数に関しては全くコントロールできない。
多数排卵した結果、多胎になってしまう可能性はある。

先ほども書いた通り、多胎妊娠は母体に命の危険をもたらすことがある。
ゆえに、不妊症専門施設では以前から減胎手術が行われている場合がある。
もちろん技術を駆使して多胎を作らないのが一番よい。
でも世の中はそううまくはいかない。

前からやってることがなんで記事になったのか?がちょっと変な記事なんだが
たぶん「自分とこで作った多胎の後始末」ではなく
減胎を希望する患者を一定数手術して経過や影響を調べる、研究が行われた、
その報告ではないかと思う。
何にだって医学的根拠、エビデンスが必要な時代なのだ。
「胎児の数を減らす研究なんてとんでもない」と思う自由はあるが、
患者の同意がとれているなら医学的な研究として成立する内容である。

勤務医だった時代は、双子は「30週から32週で入院」させて
「34から36週で帝王切開」であった。それが一番結果がよい。
ただし、母体が安定していれば「妊婦健診」を頻回にして入院させず、
37週まで経過をみて、陣痛誘発で自然分娩もありえる。
自然陣痛を待ったのでは胎児が育ちすぎて難産になることもあるし、
双子は生まれた直後に状態悪化しやすいので、
小児科医やNICU待機をお願いするために、平日昼間分娩にできたら安全性が高まる。
緊急帝王切開になる場合でも、昼間のほうが手術室準備などスムーズにいく。
ただし、いつもそううまくいくわけではなく、
小児科医に「まだですか?!」といういらついた電話をもらい
こっち側で「すみません、まだかかりそうです」とペコペコ頭を下げたことは
何度もある。

自然妊娠の三つ子が入院していたとき、一番子宮奥にいた子が
成長が悪く状態もあまりよくなく、もし子宮内死亡すると
元気な残りふたりも状態悪化する可能性があったので、
「大きいほうのふたり」の状態に合わせて帝王切開したことがある。
母体の状態もぎりぎりで「一番奥のお子さんは場合によっては‥」と話をした。
結果的に三人とも無事に子宮を出て保育器に入ったが、
一番奥の子は呼吸が止まる回数が多め、と聞いたので、ときどき保育器のそばで
「自分が産ませた子は元気に育つことになってるぞ」と励ました。
その子たちが退院する前にその病院から転勤したのだが、数年後
「三つ子ちゃん揃って小学校!」の記事を知り合いに送ってもらい、涙した。

開業してからは三つ子は見ていない。
双子は、分類上「ひとつの袋にふたりの子」が入っているタイプは
「片方状態悪化するともう片方もほぼ同時」なことがあるので
なるべく早く大きい病院に紹介することになっている。
最近では子宮内の手術によって胎児二人の血管結合を切り離して
安全な成長を確保することができるようになってきた。
そのためにも、早め早めに発見して紹介するようにしている。

■多胎妊娠の減胎手術実施=母子の負担軽減目的で―大阪大
(時事通信社 - 07月15日 19:31)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=8393526
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