{緊迫する中東情勢2025(5)シリアの国作りに向けて 3月以降}
以下関連日記
緊迫する中東情勢2025(3)シリアの国作りに向けて 第1章から第3章
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緊迫する中東情勢(4)ガザの停戦協定の行方 2025年3月19日付 2月21日から3月19日未明
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緊迫する中東情勢(5)バーレン王国の歴史 2025年3月20日付
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今回は緊迫する中東情勢(3)シリアの国作りの続編である。アサド政権が崩壊して、シャーム開放機構のシャアラ暫定大統領主導の下で、新たに国作りを行う。西欧諸国からテロリストと指定されたシャアラ暫定大統領は、国内で混在する各宗教や宗派に歩み寄る姿勢を示した。同国北東部を実効支配するクルド人とも対話を行い、国軍の統治下に入るように要請した。欧米は、シャアラ大統領が、特定の民族や宗派に固執しないか、いまだに疑念をぬぐえない。3月7日から3月9日の3日間にわたって、アサド政権の残党との武力衝突により、民間人を含めて、推定1400人の死者を出した。第8章では、暫定政権をサポートするトルコの政治事情についても考察する。
第4章から第8章
第4章 ラタキア県での武力衝突。
暫定政権が立ち上がり、2025年2月27日に、各民族や宗派に配慮した国民対話会議を主催したシリアは、内戦の懸念が再熱している。3月6日に、旧アサド政権の残党が潜伏しているとみられる北西部ラタキア県にて、暴動が起こった。残党とみられるメンバーが、郊外の暫定政権が管轄する検問所や拠点を襲撃した。政権側の鎮圧命令により、銃撃戦が繰り広げられたのである。隣接する西部都市タルトスにも飛び火した。
写真=シリアの勢力図 掲載元 公益財団法人 中東調査会 2025年3月11日付
https://www.meij.or.jp/kawara/2024_135.html
在英NGOのシリア人権監視団(SOHR)は、3月9日付けの報告書にて、一連の戦闘にて暫定政権側で231人、武装勢力側で250人が死亡した。民間人と合わせた死者は1400人を超えたと記した。旧アサド政権は、国内の人口比わずか14%のイスラム教シーア派の一派アラウィー派で要職を固めていた。暫定政権側は、国民対話会議にて、アラウィー派もメンバーに組み込む姿勢を示しているものの、アサド政権の残党を排除している。SOHRは、治安部隊とその同盟勢力などが、政権の残党か民間人が区別を付けずに虐殺行為を繰り返したと糾弾した。シリア国営通信(SANA)は、別の見立てを立てている。暫定政権の治安当局筋は3月7日、「組織化されていない群衆による個別の違反行為があった」とし、民間人を巻き込んでいないと否定した。国外からの非難を恐れて、3月10日には、軍事作戦の終了を発表した。
詳細 朝日新聞DEGITAL 2025年3月10日20時40分付
https://www.asahi.com/articles/AST3B3R94T3BUHBI01DM.html
暫定大統領のシャアラ氏は、ラタキア県の軍事作戦については、口を閉ざしている。批判を和らげるため、軍事作戦終了宣言を出したその日、大きな仕事を担っていた。3月10日付け、クルド人が主体となるシリア北東部を実効支配していたSDF(シリア民主軍)との間で、国軍の傘下に入ることで合意に達した。シャアラ暫定大統領とSDFのアブディ司令官は、記者団の前で握手を交わす。SDFは、アメリカのバックアップを受けて、IS(イスラム国)との戦闘で最前線に立った。IS掃討に貢献したものの、西隣のトルコとの軋轢が深まっていた。トルコは、自国のクルド人独立運動を掲げるPKKと、シリアのSDFのつながりを指摘していた。SDFの交戦勢力として、シリア国民軍(SNA)を支援していたのである。シャアラ暫定大統領は、トルコの意向からクルド人問題に神経を尖らせていた。転機は2025年2月26日に訪れた。トルコの刑務所に収監されているPKKの指導者オジャラン氏が、トルコ政府との和解へ向けて、戦争終結宣言を出したのである。トルコ側も、オジャラン氏の融和姿勢から、SDFに対する警戒感が和らいだとみられている。暫定政府とSDFの間で交わされた文章には、クルド人の主体性が明記されていた。SDFの支配地域の空港や国境検問所、石油施設などを含めた民生・軍事機関が、シリア国軍に管轄権が移行される。クルド人部隊SDFとトルコをバックにしたSNAは、2025年1月9日にシリア北部マンビジュで武力衝突を起こしていた。一般市民を含め37人が命を落としたと、在英イギリス監視団が報じている。SDFとSNAは、シリア内戦時からそれぞれ異なる地域を支配し、武力衝突も起きていた。いかにルーツが異なる2つの民兵組織が、和解へ向うのか、シャアラ暫定大統領の取り組みにかかっている。
写真=アブディ司令官(左側)とシャアラ暫定大統領(右側)出展:ロイター通信
掲載元 Reuters 2025年3月11日午前11時20分
https://jp.reuters.com/world/security/EEDQRN3735M7VMX4I66E76J4RY-2025-03-11/
第5章 暫定憲法を発布。ラタキア県で不発弾による被害・
3月13日、シャアラ暫定大統領は、正式な政権移行へ5年と定めた暫定憲法の草案に署名した。2024年12月8日に首都ダマスカス入りをした際に多数の宗教や宗派に歩み寄ると宣言した。ただし、自身も過激派としてアサド政権打倒を掲げた経緯から、イスラム法を明文化している。以下5項目が暫定憲法の骨子である。
�� 正式な政府への移行期間の目安5年
�� 表現の自由を認める
�� 女性の社会的自由や尊厳を遵守する
�� 大統領はイスラム教徒である。
�� イスラム法が立法の根拠になる
シリアの中には、人口比でキリスト教徒がおよそ10%存在する。大統領の座をイスラム教徒に限った暫定憲法に、宗教や宗派の差別意識が働いていると否定的な見方もある。
シャアラ暫定大統領は「シリアにとって新しい歴史が始まる」と意気込んだ。欧米からは、徐々に経済制裁を緩和されているとはいえ、ラタキア県での武力衝突後、過激派の本性を表したと批判されていた。暫定憲法にて、女性の社会的自由や尊厳を確かに保障した。解釈次第では、制限つきの可能性も否定できない。服装を規定し、職種や地位も絞り込まれる。資源のない同国において、人権を重んじる西欧諸国を意識して、イスラム法とのバランスをとりながら、運営していくとみられる。
詳細 暫定憲法について NHK NEWS WEB 2025年3月14日21時36分付
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250314/k10014750301000.html
3月7日から9日の3日間に渡って、アサド政権の残党と暫定政府軍の争いがあったラタキア県では、3月15日に大きな事件が起こった。民間の救助団体「ホワイトヘルメット」によると、不発弾の爆発により、建物が倒壊した。女性5人と子ども5人を含む16人が、下敷きになって死亡、けが人は18人に上る。
2011年から続いた内戦により、国内各地に地雷や不発弾が残る。「シリア人権監視団」によると、2025年以降、不発弾と地雷により、275人が死亡している。
写真 掲載元 詳細 3月15日のラタキア県の爆発事故 詳細 TBS NEWS DIG 2025年3月17日(月)9時59分付
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1792946?display=1
内戦が長引いた同国では、地雷や不発弾の存在、民族間の軋轢による衝突を含め、安心して暮らせる保障はない。引き続き、先進国を中心に派遣された監視団が、内情を探っている。現地からの報告を下に、西欧諸国を中心に結成されたEUもサポートに入った。
3月17日、シリアの復興について協議する欧州連合(EU)主導の会合が、ブリュッセルで開かれた。アサド政権崩壊後の同国を建設的・包括的に支援するべく、各国・機関が計58億ユーロ(約63億ドル)の資金を拠出することで一致した。
年次会合は2017年に始まり、当時のアサド政権を除外して、毎年行うようになった。今回2025年の会合には、暫定政府のシェイバニ外相が出席した。昨2024年の会合では、75億ユーロの補助金と融資が集ったものの、政権崩壊後の2025年はさらに少なくなった。EU当局によると、米国の拠出額の減少が直結したとのことである。
EUの外相に当たるカラス外交安全保障上級代表は、暫定政府が進める国つくりについても切り出した。初めに西部の湾岸都市ラタキア県で3月7日から9日の間発生した武力衝突により、多数の市民が犠牲になったことに遺憾を示した。翌3月10日に、クルド人勢力主体の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」が暫定政府に合流するとの文章に署名したことを受けて「希望の時」でもあると、明るい見通しを語った。
EUによると、シリアでは人道支援に必要な国民は1650万人、うち1290万人が飢餓の危険性が高いとみている。
詳細 EUのシリア支援年次会合 Reuters 2025年3月18日午前9時34分付
https://jp.reuters.com/world/security/MKJSHQ6TVNMLPPQL7ULP5INZEE-2025-03-18/
隣国との間でも争いの火種がくすぶっている。シリアとレバノンの国防相は3月17日、越境攻撃により双方合計死亡者10人、負傷者52人が出たことを受け、停戦に合意した。シリアの国営通信が伝えている。両国間で、連携を図っていくことでも一致した。
暫定政府とレバノン南部を実効支配するヒズボラは敵対関係にあった。あくまでも中立を宣言するレバノン政府が、シリアの暫定政府との間に入り、緊張緩和に努めた。ただし一連の軍事衝突は、暫定政府とレバノン軍との間で起こった。レバノン軍によると、事の発端は3月17日に起こった。レバノン北部の町カスルで、シリア人3人が死亡したことに始まる。シリア暫定軍は、自衛権を発動し、カスルのほか、レバノンの国境沿いの村落を砲撃したのである。パトロールに当たったレバノン軍が、シリア暫定軍に応戦し、紛争に発展する懸念が高まった。
シリア国軍によると、領内を警備に当たっていた自国の兵隊3人が、レバノン南部を実効支配するヒズボラの兵隊に連れ去られたと訴えている。シリア国営通信は、拉致された兵隊3人について、翌17日に処刑されたと報じた。レバノン大統領府は3月17日、軍事行動を容認することはできない、と和解の姿勢を示した。シリア暫定軍も応じたことにより、協定が成立したのである。
詳細 シリアとレバノンの国境での衝突 CNN.co.jp 2025年3月18日13時17分付
https://www.cnn.co.jp/world/35230635.html
シャアラ暫定大統領は、内戦時の最大の支援国家のトルコ、スンニー派の盟主を名乗るサウジアラビアやUAEと外交関係を築く。サウジアラビアやUAEはオイルマネーで潤い、支援を引き出していくとみられている。トルコとも関係を築き、クルド人とのパイプ役になることで、地域の安定化につながっていく。シリアの国作りもいまだに不透明な状況が続いている。
第6章 暫定内閣発足、イスラエルとの戦い
シャアラ大統領は、ついに決断の時を迎えた。3月29日に、暫定大統領の権限として、新内閣を任命した。宗教や宗派の人口比を考慮して、内閣の多くはイスラム教スンニー派で占める。社会労働省には、キリスト教の女性1974年生まれのヒンド・カバワット氏を任命した。カバワット氏は、各宗教・宗派へ歩み寄りに向けて調整役を図ってきた。過去には、米国ジョージ・メイソン大学の「世界宗教・外交・紛争解決センター」にて宗教間平和構築のディレクターを務めてきた。強権的な手段をとるアサド政権下で、国外から抗議をあげてきたのである。スイスのジュネーブに拠点があるシリア交渉委員会(アサド政権に対抗するシリア反体制派組織)の副代表を歴任している。暫定内閣において、農業灌漑相のバドル氏も女性である。シェイバニ外相とアブカスラ国防相は留任している。
詳細 シリア暫定内閣の選任 Reuters 3月31日午後2時53分付
https://jp.reuters.com/world/security/ZYFFSKCY5FKL5GVCU55CYPKG4U-2025-03-31/
写真=ヒンド・カバワット氏 掲載元 アゴラ・言論プラットフォーム 2025年4月1日11時55分
https://agora-web.jp/archives/250331062922.html
オーストリア国営放送のウェブサイトは、シリア新政府の閣僚のうち3人はドイツとの深い関係を持っていると報じた。新たな保健相ムサブ・アル=アリ氏は、ドイツで医師として働き、「シリア人コミュニティ・ドイツ中央連盟」での活動暦がある。教育相のモハメド・アブドゥルラフマン・トゥルキ氏は、旧東ドイツのライプツィヒ大学で学位を修めている。カバワット氏自身も、過去にはドイツ経済省と協力して、女性の権利向上に努めたことがある。シャアラ暫定大統領の政策次第によって、国外からの支援体制が変わる。
アサド政権時代にも阻害されてきたクルド人は、暫定政府との間でいまだに溝が埋まっていない。シリア国内において、クルド人の支配地域は3割にのぼる。3月10日に、クルド人部隊シリア民主軍(SDF)を、国軍への統合に成功していた。政治面においては、いまだに不和が生じている。シリア北部・東部の自治行政(AANES)は30日、「この内閣はシリアの多様性を反映していない。12月に打倒されたアサド政権と同様、権力を一手に集中させている」と批判を展開した。
国軍の中には入っても、行政においては完全に二つに分かれていた。つまりは安全保障面では協力しても、それぞれ異なる政策をとることになる。共通の敵は、イスラム国に変わりはない。
クルド人から成る東部自治体からは、確かに暫定内閣の組閣人事に反対された。西欧からは、ゆかりのある人物を起用したことにより、一定程度警戒感が和らいだとみられている。シャアラ暫定大統領は、過去に後戻りできなかった。3月7日から3月9日にかけてラタキア県で旧アサド政権の残党との武力衝突が起きると、西欧諸国からは過激派に後戻りしたと糾弾された。シャアラ氏自身は、過激派としての一面を否定する。「穏健なイスラム原理主義者」だと独自の言い回しで、西欧諸国に立場をアピールした。暫定憲法の内容通り、特定の宗教や人種差別を否定し、女性の人権を尊重する姿勢を示していた。ただしクルド人部隊SDFも参加する国軍は、元を辿れば複数の民兵組織の集合体。差別をせずに、国作りを進められるのか、欧米諸国はいまだに懐疑的である。
経済についても復興の道程は遠い。2025年2月の国連開発計画(UNDP)の報告書によると、2011年の紛争開始以降のGDP損失は8,000億ドルと推定された。現在のGDP成長率(1.3%)が維持された場合、紛争前の経済規模に回復するには2080年までかかる
今後15年で復興を達成するには少なくとも年間5%の成長率を達成する必要がある。2011年からの長引く内戦がなかったと仮定した場合には、年間14%の成長を記録しない限り、元の経済状況に戻せないのである。貧困率は、紛争前の33%から90%に急上昇した。人々の追い討ちをかけたのは、エネルギー生産の減少率80%に表れている。送電網や上下水道などインフラ施設は大きく破壊された。国際的に援助を求めている。
詳細 シリアの経済事情 ビジネス短信 2025年3月18日付
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/03/f6f47c3794e64ecd.html
シリアの国づくりに向けて、外部要因で戦闘のリスクにもさらされる。安全保障上の脅威となるのは隣接するイスラエルだった。2025年3月1日に、ネタニアフ首相とカッツ国防省は、シリアへ軍事的にけん制した。名目は、シリアの首都ダマスカス南郊にまとまって暮らすイスラム教ドゥールーズ派保護である。既に国際的にシリア領と認定されているゴラン高原には、自国部隊を展開させていた。イスラエル国内にも人口比1,5%ながらドゥールーズ派のコミュニティーが存在する。4月2日、ついに行動に打って出た。中部ハマの空港とダマスカスのバルゼ地区の科学センター付近を空爆した。シリア国営メディア(SANA)は、爆撃を受けて、死者が出たと報じている。イスラエル軍は、ターゲットの施設について、誘導ミサイルや化学兵器開発を行っていたと、友好国に理解を求める声明を出した。
第7章 イスマーイール派について
イスラム教シーア派のイスマーイール派から分派したいわれるドゥールーズ派は、ユダヤ教とも実のところ愛称がよい。イスマイール派は、シーア派の主流十二イマーム派のうち、7代目のイマームの信仰の違いを指す集団である。西暦765年に第6代イマームのジャアファル・サーディクの後継者をめぐり、分裂した。
以下 ウィキペディア イスマーイール派より引用
「長男であるイスマーイール・イブン・ジャアファルを後継者に指名していたが、イスマーイールが死去したことで別の子であるムーサー・カーズィムを後継者に指名していた。多数派はこの指名を認めてムーサーをイマームと認めたが、一部はイスマーイールの子であるムハンマド・イブン・イスマーイール(英語版)がイマーム位を継ぐべきであると主張した。このときムーサーをイマームと認めたのが十二イマーム派であり、ムハンマドがイマームであると主張したのがイスマーイール派である」
引用終わり
イスマーイール派は、ユダヤ教と初代教会(キリスト教初期)の諸派の間で融合した宗教的思想と体系の集合体であるグノーシス主義の影響を強く受けている。その起源は、10世紀の北アフリカにあった。当時地域を治めていたファーティマ朝第6代カリフのハーキム(在位:西暦996年から西暦1021年)を神格化するグループから派生したとみられている。ただしハーキムは、根っからイスラムの教えを重んじた。飲酒や歌舞音曲は厳禁、男性には黒いターバンの着用を義務と化した。異教徒には弾劾する。キリスト教には木の十字架を、ユダヤ教は常に鈴をつけるように命じた。外見的特長から、判別できるようにしたのである。キリスト教会や修道院、ユダヤ教のシナゴーグを閉鎖した。禁令を破ると、厳しい刑罰を課した。庶民から畏怖されたとはいえ、強権的な手段で統一するカリスマ性には、宗教家からは崇拝の対象にもなる。実のところカリフのハーキムの死因は行方不明である。崇拝するグループは、自発的に失踪してガイバ(幽冥界のお隠れ)に入ったと信じ、布教に勤しむ。ハーキムを神格化し、復活の日にマフディー(救世主)として降臨すると説いた。ハーキムの下で抑圧された人々は、受け入れがたい内容だった。イスマイール派の教義からは排除され、弾圧を受けた。国を追われて、シリアの山岳地帯でひっそりと身を寄せたのである。彼らをドゥールーズ派という。
第8章 トルコは政治的混迷
さて、シリアの暫定政府を支えたのは、ハマスと同じ支持母体ムスリム同胞団がバックに付く公正発展党のエルドアン大統領だった。
詳細 イスラエル軍のシリアへの攻撃 Reuters 2025年4月3日午前6時27分
https://jp.reuters.com/world/security/B7OHIGGNZFMIXOKNDCR76GTX6E-2025-04-02/
当のエルドアン大統領は、今公の場に姿をみせられない事情がある。そのきっかけは、政敵排除に動いたことによる、デモ鎮圧行為にある。独裁者として終身大統領の座を目論むエルドアン氏は、経済の低迷により、支持率は低下傾向にあった。昨2024年4月1日に投開票が行われた統一地方選挙選の結果にも現れている。自身が属する公正発展党(AKP)は、野党第一党共和人民党(CHP)に敗北を喫した。初代大統領ケマル・アタチュルクが立ち上げた同党は、世俗主義正統である。イスラム色の強いAKPとは全く立場が異なる。AKPは。インフレを抑制できず、人々の給料水準以上に、物価が上がる世界を変えられていない。厳しい暮らしを強いられた国民の不満の矛先は、政権へと向く。3月23日付け、トルコ警察は、次期大統領選挙戦にて当選が期待されていたCHPに所属するイスタンブールのイマモール市長を汚職の罪で逮捕、訴追したと明らかにした。警察によると、在職中に犯罪組織の設立と運営、収賄、恐喝、個人情報の違法記録、不正入札をしたと弾劾した。イマモール市長は、拘置所の中から、身の潔白を訴えている。
トルコ警察は3月19日に、100人以上を汚職の罪で訴追している。2019年より現職に就くイマモール氏は、貧困層へもやさしく、改革を求める市民から支持を集めた。逮捕のタイミングも、イマモール市長支持派から、エルドアン大統領の陰謀説を疑うきっかけになった。同日CHPの予備選が告示された。次回2028年の大統領選挙戦において、党を代表する候補を選定する手はずを整えていたのである。CHPによると、23日に投開票された予備選には約1500万人が投票した。そのうち約160万票が党員の票で、残りはイマモール氏への連帯を示すために別の投票箱で投じられた非党員票だという。なお外国の機関は詳しく検証できていない。共和人民党の支持者は逮捕の報道から5日連続、イスタンブール市内を中心に、抗議行動を起こしている。逮捕直後から1週間で、デモの参加者のうち1800人が身柄を拘束されたとみられている。
詳細 BBC NEWS JAPAN 2025年3月24日付
https://www.bbc.com/japanese/articles/ce98ee8zzrro
実のところ2023年5月の大統領選挙戦に先駆けて、イマモール氏は汚職嫌疑をかけられていた。前年となる2022年12月14日、トルコ裁判所は公務員を侮辱した罪で2年7ヶ月の禁錮刑と政治活動禁止の判決を言い渡していた。被告となったイマモール氏は直ちに控訴し、上級審の審理開始まで職務に復帰する。ただし控訴中に市長職を務めることはできても、大統領選挙戦の出馬は辞退せざるを得なかった。2023年5月28日の大統領選挙戦の決選投票にて、エルドアン氏は、CHPの候補者クルチダルオール氏に辛くも勝利した。次の選挙戦は5年後の2028年になる。2014年8月28日に第12代大統領に就任して以降、権力基盤を強化していた。2017年に憲法改正手続きを踏み、無所属を原則とした大統領は、党所属が可能になった。政治制度も、議院内閣制から大統領制に移行する。任期は2期10年と定められているものの、議会の要求により、前倒し選挙することで、事実上延長が可能になった。
当のエルドアン大統領は、前倒し大統領選挙戦を見据えて、一刻も早くライバルを排除したかったのである。警察の逮捕については、口を閉ざしたままである。国内で支持を失い、欧米からも非難されている以上、公の前に姿を現せない。ただしトルコは、NATO軍においても貴重な戦力として重宝される。加盟32カ国のうち、戦力はアメリカに次いで2番目となる65万の兵を抱える。ロシアとも顔が利き、外交にも役立つ。兼ねてからNATOの異端児として振舞っていたエルドアン大統領の人権抑圧行為に、アメリカも無視を決め込んでいた。エルドアンはほとぼりが冷めたタイミングで、大胆に行動に打って出ていくとみられている。
4月4日に、代わりにトルコのフィダン外相が、NATOの外相会合が開かれたベルギーの首都ブリュッセルにて、シリア情勢について、ロイター通信の記者に語った。
シリアの安全保障は自国で決めるべきだと、認識を示した。イスラエル軍のシリアへの空爆は、領土侵害だと糾弾した。イスラエル軍の攻撃を受けることにより、防衛力が弱まり、IS(イスラム国)のテロ行為を促進させると、警戒感を訴えた。
写真=フィダン外相 掲載元 インタビュー News Weak 2025年4月5日(土)午前5時33分
https://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2025/04/545306.php
暫定政府が発足し、憲法制定や選挙までの期間は目安で5年、シャアラ暫定政権は、近隣のアラブ諸国に加えて、人権を重んじる西欧諸国とも対話を重ねていく。イスラエル軍とISから領土侵害を受けると、再び戦争の道を突き進み、正式な政権発足も遅れる。外敵リスクにさらされる中、安全保障政策の構築にも難しい舵取りを迫られていた。内戦のさなか疲弊した経済は、復興の道筋も定まっていない。全てはシャアラ大統領の政策にかかっている。
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