<緊迫する中東情勢2025 第4回 ガザ情勢 2025年2月21日以降 >
1月15日にガザ地区で停戦協定が発布されて以降も、緊張状態が続いていた。ついに3月18日に、イスラエル軍の空爆で、事実上停戦協定が破棄され、再び人道危機に直面した。詳しく検証する。
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目次
・第1章 双方身柄交換が進む
・第2章 停戦協定第2段階 ガザの復興を見据えて
・第3章 ハマスとアメリカの交渉
・第4章 イエメンの親イラン組織フーシー派と米軍の衝突
・第5章 防衛力を強化するイラン
第1章 双方身柄交換が進む
トランプ氏のガザ所有発言により、アラブ諸国は戦後のガザ地区の復興に向けて、独自案の策定に勤しむ。2月21日にサウジアラビアの首都リヤドにて、湾岸協力機構(CCG)に加盟する首脳級会合を開いた。会合の決定事項は2025年3月4日にエジプトの首都カイロで開催される緊急首脳会合で明らかになる。主催者のムハンマド皇太子は、19日にエジプトのシーシ大統領と同地で会談した際、復興計画を提案された。エジプトの治安当局筋によると、アラブ諸国で最大200億ドル拠出する見込みだという。またAFP通信などによると、エジプト案の復興期間は3〜5年で3段階に分かれる。最初の半年はガザに安全地帯を設けて住民を集め、住居などを提供する。第2段階では国際会議でインフラ(社会基盤)整備の資金を募り、第3段階でイスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」へ向けた政治的な議論を始める
詳細 2月19日のエジプトシーシ大統領のサウジアラビアのリヤド訪問
写真=シーシ大統領 2024年10月ロシアのカザンにて 掲載元 Reuters 2025年2月19日午前9時55分付
https://jp.reuters.com/world/us-politics/B3SAM73RH5NXJJFPKVAWUENCDI-2025-02-19/
詳細 リヤドでの会合について 読売オンライン 2025年2月21日19時18分付
ガザ紛争の方においては、双方拘束者の解放第2段階を待つ。イスラエル軍は21日に、強い調子でハマスを非難した。20日にハマスから国際赤十字を通して、イスラエルに引き渡された人質4遺体のうち、1体は収容者とは異なると、声明を出した。イスラエル本国でDNAを鑑定した際、収容者とは別人だったのである。他3体は、母親と男児2人である。3人の遺体について、イスラエル側は、ハマスのテロ行為の犠牲者と決め付けた。対照的にハマスは、イスラエル軍の空爆により、亡くなったと、主張した。
詳細 4体の遺体について 読売オンライン 2025年2月21日17時49分付
https://www.yomiuri.co.jp/world/20250221-OYT1T50114/
ハマスは、戦闘再開を懸念したのか、22日に、予定より3人多い6人のイスラエル国籍の人質を国際赤十字に引き渡した。イスラエル側は602人のパレスチナの囚人を釈放する。停戦協議発布後、ハマスの人質解放は7度目となる。米ニュースサイト「アクシオス」によると、ハマス側は27日にイスラエル国籍の人質4遺体を引き渡す意思を表明したという。
一方、イスラエルのネタニアフ首相は、7度目の刑務所からのパレスチナの囚人の解放に待ったをかけた。ハマスが人質解放を履行したにも関わらず、態度を改めたのである。協定に従えば、602人が釈放されるはずである。延期の理由を「我々の人質を冷笑的にプロバガンダに利用している」と説明した。27日に、順調に人質と遺体引渡しを行えば、囚人を釈放すると一方的に条件を出した。
詳細 囚人開放延期 BBC NEWS JAPAN 2025年2月23日付
https://www.bbc.com/japanese/articles/cx2e7p4knldo
イスラエルのネタニアフ首相は、停戦第2段階へ移行する気があるのか、疑念は深まっている。人質の生還、遺体の引渡しが済めば、休戦協定の目的を達成したことになる。ハマス側が、協定違反だと敵対心を募らせると、戦闘が勃発しかねない。
レバノン南部とのヒズボラとの停戦に応じているイスラエル軍は、余力があると、さらに新たな軍事作戦を展開する。2月23日に、カッツ国防省は、ヨルダン川西岸地区のジャニンに戦車部隊を進めたと明らかにした。同地区に軍事行動を起こすのは2002年の第2次インディファーター以来、22年ぶりとなった。国防省によると、ジェニンを含め、3箇所の難民キャンプから4万人全てを退避させたと主張した。民間人を安全な場所へ誘導して、武装勢力と戦えば、国際社会からの非難は最小限に留まるとの考えが見える。パレスチナ当局によると、2025年に入って以降、ジェニンでのイスラエルの軍事作戦により、27人が死亡、西岸地区全体でも70人が命を落としたとのことである。戦車部隊を展開する前から難民キャンプの建物10棟を破壊したとみられる。
詳細 イスラエルのヨルダン川西岸の軍事作戦について BBC NEWS JAPAN 2025年2月25日 7時21分付
https://www.cnn.co.jp/world/35229739.html
イスラエルとの停戦期間が延長された2月23日、レバノンの首都ベイルートでは、5ヶ月前に暗殺されたヒズボラの最高指導者ナスララ師の葬儀が行われた。遺体を収めた棺が地上に現れた際、上空をイスラエル軍の飛行機が通過したという。イスラエル軍は、レバノン東部と南部のヒズボラの武器庫を爆撃したと発表した。葬儀会場には数万の観衆が詰め掛け、30年以上組織のトップに立ったナスララ師の死を悼んだ。後継者と目されていた故サファディエン師の功績をたたえる儀式も同会場で行った。現在組織のトップに立つカセム師は、今後もナスララ師と歩むと、ビデオ演説で誓った。
写真=ナスララ師の葬儀 BBC NEWS 2025年2月24日 12時6分付
https://www.cnn.co.jp/world/35229734.html
イスラエル軍は、レバノン南部の国境沿いにとどまり続けている。ヒズボラとの間では一触即発の状態である。すべてはガザの停戦協定にゆだねられている。
第2章 停戦協定第2段階 ガザの復興を見据えて
ガザの方では2月25日、ハマス側は、イスラエルに捕らえられている620人の囚人の釈放を条件に、人質4遺体を引き渡すことで合意に達したと明らかにした。完了すれば、3月1日までの期限内で、停戦協定の第一段階が履行したことになる。続いて第2段階への移行へ向けて協議を重ねていく。なおAP通信によると、25日までの半月の間にパレスチナ自治区ガザで子供6人が寒さによる低体温症で死亡したとのことである。
詳細 読売オンライン 2月26日18時2分付
停戦期限の3月1日、イスラエル側は、さらに42日間の延長を求めた。対照的にハマス側は、否定している。1月19日に始まった第1段階の停戦期間の間にイスラエル国籍の人質33人とタイ国籍の人質5人、合わせて38人が解放された。パレスチナ人の収監者は、約2000人が釈放されている。イスラエル側は、いまだに囚われの身となった59人(そのうち死者33人)を取り戻して、政権の支持率向上に繋げる意向が見える。ハマス側が、拒否する理由は、イスラエル軍が協定に反して、ガザに留まっているからである。
詳細 3月1日 21時20分 読売オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/world/20250301-OYT1T50126/
3月4日、エジプトの首都カイロにて、緊急のアラブサミットが開かれた。招待された国連のグテーレス事務総長は、議場にて、停戦へ向けて、メッセージを発した。議長を務めたエジプトのシーシ大統領は、ガザの復興計画について説明した。米国トランプ大統領のガザ所有発言を真っ向から否定する。ガザの住民が故郷にとどまれるように復興計画を進め、仮設住宅を建て、空港建設を盛り込んだ。政治については、統治機構ミッションを立ち上げる。ハマス排除の文言はなく、統治機構の選定基準については明確にしていない。復興費用530億ドル(日本円8兆円)、期間は5年間を想定している。
イスラエル政府とハマスの間での停戦期間は延長されている。仲介交渉においても、新たな展開があった。ルビオ国務長官は3月10日、ロシア軍によるウクライナ侵攻に伴うサウジアラビア行きの機内にて、ガザでの休戦交渉について、記者団の前で語った。米国のボーラー人質担当特使とイスラム組織ハマスが行った人質解放を巡る直接協議は「1回限り」のものだったと明かした。現時点では「成果を上げていない」と不調に終ったとの見方も示した。
写真=ボーラー人質担当特使 掲載元 ARAB NEWS 2025年3月17日(月)午前8時3分27秒
https://www.arabnews.jp/article/middle-east/article_143692/
ハマスの幹部は3月9日に、ロイター通信のインタビューに応じる。ボーラー人質担当特使に向けて、米国とイスラエルの二重国籍を所有している拘束者を中心に解放を進めていくと約束したという。政権のウィトコフ中東担当特使とボーラー人質担当特使は、イスラエルとハマスの双方のパイプ役の主力は「カタール」と一致している。ボーラー特使は、イスラエルメディアN12のインタビューにて「トランプ政権は残り59人の人質解放へ向けて全力を挙げている」と宣した。「今週中に何らかの動きがあり、人質が帰還する可能性がある」との見通しを示した。
詳細 ハマスと米国関係者の接触について Reuters 2025年3月10日午後1時22分
ハマスと直接交渉に望んだボーラー人質担当特使に対して、イスラエルを取り巻く近隣諸国を幅広く扱うウィトコフ中東特使は、強気の姿勢で臨む。3月10日にFOXニュースのテレビインタビューにて、ハマスの武装解除とガザ地区からの撤退を命じた。トランプ大統領の紛争終結後の「ガザ所有」発言を意識したとみられている。アメリカ主導で復興を進めるにあたり、リゾート開発を行う。現地人の雇用を生み、焼け野原からの再生へ舵を切る。治安維持を米軍が務めることにより、イスラエルの安全保障を担うことになる。さすがに3月4日のエジプトの首都カイロで開催された緊急サミットでは、反対意見が表明され、トランプ大統領も口を閉ざしている。イスラエルメディアは、3月10日に休戦延長に向けて、カタールに高官を派遣したと報じた。米国側も、2人の特使がカタールで交渉に臨む。イスラエル側は、残りの人質解放へ圧力をかけるべく、3月2日ガザ地区への人道物質の搬入を停止し、9日に送電線を断った。ハマス側は、恒久的な停戦を望む構えである。休戦延長を繰り返すのみでは、過去の例から再び軍事衝突が起きかねない。依然としてガザの行方は不透明さを増している。
詳細 米国のハマスのガザからの撤退要求について KYODO 2025年3月11日付
https://nordot.app/1271947195773682608
第3章 ハマスとアメリカの交渉
ハマスは3月14日、イスラエル国内で捕縛した米国籍の男性一人を、国際赤十字に引き渡した。合わせてイスラエル国籍の4人の遺体を返還した。アメリカから派遣されたボーラー人質担当特使との交渉により、ハマス側が要求を呑み、停戦交渉において、有利な条件を引き出す。中東全般を担当するウィトコフ特使によると3月14日付けで、その2日前の12日にハマスに停戦交渉で言い分を聞くと約束したと明かした。停戦期間をさらに4月下旬まで延長し、人道物資の搬入を認めたのである。カタールに拠点を置くTV局アルジャジーラによると、ハマスはイスラエル軍のガザからの即時撤退を盛り込むように停戦協定で求めたという。ウィットコフ氏は「ハマスは実現不可能な要求をすることを選んだ」と非難声明を出した。停戦期間が過ぎれば、「相応の対応をとる」と残りの人質解放を迫った。
写真=4人の遺体返還の模様 詳細 ハマスの人質解放について 掲載元 TBS NEWS DIG 2025年3月15日午前5時40分
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1791210?display=1
イスラエルの北に接するレバノン情勢では、将来を見据えて、新展開へ向っている。3月11日、米国とフランスの仲介で、イスラエルは未画定の国境問題を協議する作業部会を設置することで合意した。実のところ2022年に、東地中海の海洋国境を画定する協定に署名していた。陸地ではレバノン南部を実効支配するヒズボラが、事実上政府から独立した組織であり、イスラエルとの国境画定は難航していた。イスラエル首相府は11日、国境付近で拘束したレバノン軍兵士や民間人計5人の解放にも合意したと発表した。イスラエルとの戦闘により、ヒズボラは大きく消耗していた。レバノン議会でも影響力を失った今、国境画定する絶好の機会である。地域の安定化へ、アメリカが役割を担っている。
詳細 レバノンとイスラエルの国境問題 JlJl.com 2025年3月15日午前7時12分付
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025031401179&g=int
3月15日、ロイター通信は、ガザ北部のベイトラヒヤにて、イスラエル軍の砲撃により、11人の命が失われたと報じた。犠牲者のうち9人は、ピンポイントで空爆を受けた自動車の搭乗者だった。慈善事業のスタッフや報道関係者が乗り込んでいた。少なくとも同関係者3人が犠牲になったとパレスチナメディアは伝えた。攻撃を正当化するイスラエル軍は、ドローン操縦士2人は、我が治安部隊に脅威を与えるテロリストだと断定していた。ドローン機材を回収して車両に乗り込んだ容疑者数名の殺害行為をいわゆる正当防衛と主張する。テロリストとして特定した経緯やドローンの詳細については伏せている。
同日、ガザ中部のジュールエルディークでもイスラエル軍の空爆で2人死亡した。
ガザ地区を実効支配したハマスは、イスラエルが停戦合意を反故にしようとしていると非難する。1月19日の停戦発効後に殺害されたパレスチナ人は150人に達したとメディアの前で訴えた。
写真=ベイトラヒヤにて:ロイター通信より 詳細 Reuters 2025年3月16日、午前9時21分付
https://jp.reuters.com/world/security/6LAY3GCHDRIBXOAWFXYWEAOIEY-2025-03-16/
第4章 イエメンの親イラン組織フーシー派と米軍の衝突
イスラエルとハマスの停戦協議の行方は、中東地域の治安を大きく左右する。イスラエル軍が、ガザ地区への物資搬入を停止している事態を受けて、イエメンの親イラン武装組織フーシー派は動き出した。3月7日付けで、4日以内に検問所を開放して、ガザの住民が必要とする物資を届けなければ、紅海の船舶を攻撃すると、声明を出した。
イスラエルに肩を持つアメリカ軍も、フーシー派に対しては、強硬姿勢で臨む。3月15日に、フーシー派が実効支配するイエメンの首都サヌアの軍事基地を標的に、米軍は空爆を開始した。トランプ大統領は自身のSNSにて、攻撃を正当化したうえで、フーシー派に警告を発した。「攻撃をやめなければ、見たことがないような地獄が降りかかるだろう」と書き込んだ。
フーシー派を支援するイランに対しては「支援を直ちにやめろ」、「世界の航路を脅かすのならアメリカは全面的に責任を負わせる」と強い調子で非難した。
詳細 アメリカ軍のフーシー派への攻撃 掲載元 日テレNEWS 2025年3月16日11時47分
https://news.ntv.co.jp/category/international/f19dfd85f3944dc3ba30baf002f777e2
イランのアラグチ外相は3月16日未明、自身のXにて、米国への非難声明を出した
。「イランの外交政策を指図する権限はない」と敵対姿勢を貫いた。ガザ情勢については、「イスラエルの大量虐殺への支援をやめよ。イエメン市民の殺害をやめよ」とメッセージを発した。
一夜明けた3月16日、フーシー派保健当局のアニス・アル・アスバヒ報道官は、子供5人と女性2人を含め、死亡者53人、負傷者98人とソーシャルメディアに投稿した。
フーシー派のメディア、アルマシラによると、空爆被害を受けた箇所は複数に上る。指導者アブドルマリク・フーシー氏の謁見場所になることが多いサーダ州ダヒャンの発電施設の他、軍事拠点がある南西部タイズも施設が損壊した。中東駐留部隊を所管する米軍中央司令部は、15日の空爆について、イエメン全土を対象とする大規模な作戦の始まりだと予告した。フーシー派の軍事部門の報道官は16日、紅海上で、米空母「ハリー・S・トルーマン」や複数の軍艦に対し、弾道ミサイルとドローンによる攻撃を仕掛けたと、報復宣言した。米政府関係者はロイター通信に対し、軍機を投入してドローン11機を撃墜したと、防空能力をアピールする。フーシー派が標的にした「ハリー・S・トルーマン」は接近せず、無傷だったことを証明した。
写真=「ハリー・S・トルーマン(空母)」ウィキペディアより
国連のグレーレス事務総長は同3月16日付け、フーシー派とアメリカ軍に対して、自制を求める声明を出した。
詳細 フーシー派の報復宣言 アメリカ軍の攻撃による死傷者数について BBC NEWS JAPAN 2025年3月17日(月)
https://www.bbc.com/japanese/articles/cd7ejz2xvpdo
報復宣言したフーシー派は、3月17日に、直近24時間以内で2度目の攻撃を行った。2度目は、紅海の北部に展開中のアメリカ軍の空母を対象としたと明らかにした。アメリカ軍も引き続き、2度目の爆撃を繰り出す。フーシー派は、同国の北部が空爆を受けたと被害状況を伝えた。
詳細 3月17日の米軍とフーシー派の攻撃の応酬 NHK NEWS WEB 2025年3月17日20時17分付
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250317/k10014752371000.html
フーシー派は、2025年1月15日にガザでの停戦協定が発布して以降、軍事活動を控えていた。3月2日に、イスラエル軍が、ハマスに残りの人質解放を迫るべく、検問所を封鎖したことにより、報復感情を募らせていたのである。
3月18日、ガザ各地にて、停戦協定発布後、最大規模のイスラエルの軍事作戦が展開された。ガザ保険当局は、死亡者413人と発表している。戦時内閣を指揮するネタニアフ首相の攻撃を正当化する声明では、人質解放を渋るハマスを悪と決め付けていた。「拘束する人質解放を繰り返し拒否し、米国など仲介者の(停戦に関する)提案を拒絶した」と最大限の言葉でハマスを非難した。ロイター通信が、ネタニアフ首相の声明を報じている。対してAP通信は、ハマス側の声明を発信した。「停戦合意の破棄を決断した」とハマスは、イスラエル軍が協定違反を犯したと訴える。
停戦協定第一段階は3月1日には終っている。ハマスは、協定に従い、人質33人を解放した。第2段階へ向けて、イスラエル側は33日間の停戦延長と引き換えに、ハマスに残りの人質解放を要求したのである。ハマス側は、協定の第2段階で約束されたガザ地区からの撤退を拒むイスラエルに不信感を募らせ、残りの人質解放を拒否した。断固として主張を曲げないハマスに対して、アメリカのボーラー人質担当特使が、一度だけ直接働きかけた。詳しい会談の様子は伏せられている。アメリカは、イスラエルを全面擁護し、ハマスから先に、残りの人質解放を迫り、心証を損ねた可能性が高い。現に報告を聞いたルビオ国務長官も、直接会談は「進展がなかった」と認めている。民間人が犠牲になることを想定したうえで、ハマスの基地を攻撃して、人質解放を迫るイスラエルの強権的な手法に、アメリカは黙認しているのである。ホワイトハウスのレビット報道官は、事前に軍事作戦の計画を知らされていたと明かした。新たにイスラエルは、ガザの一部の区域に住む住民に退避を要求した。
詳細 イスラエル軍の3月18日の攻撃 JlJl.com 同日12時7分付
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025031800401&g=int
第5章 防衛力を強化するイラン
ハマス、フーシー派、ヒズボラの後ろ盾となるイランは、防衛力を一段と強化している。同国の精鋭軍事組織「革命防衛隊」は、2025年1月上旬から2ヶ月以上に及ぶ異例の大規模演習を実施した。例年は3日程度、イスラエルとの緊張状態が高まったことにより、新兵器を開発し、軍の組織力を高めた。3月3日には、ドローン(無人機)を搭載できる初の空母と称する艦艇「シャヒド・バゲリ」から、偵察・爆撃用無人機「ジャス313」を飛行させる訓練が行われた。同国は、イラク北西部のシーア派の親イラン武装組織を通じて、アサド政権のシリアを経て、レバノン南部のヒズボラへ至る地続きのルートを確保していた。アサド政権の崩壊、ヒズボラの戦力消耗を受けて、俄然緊迫感を増している。ハマスも長期にわたるイスラエルとの戦闘により、大きな打撃を蒙ったことは明らかである。核武装の一環として、60%濃縮ウランの製造を続け、イスラエルに到達可能な航続距離2000キロの無人機1000機も配備した。革命防衛隊のアリモハンマド・ナイニ報道官は1月6日、外国メディアも招いた異例の記者会見を開き、「米国やシオニスト政権(イスラエル)は、イランが弱体化したと主張するが、我々はいかなる戦いの準備もできている」と牽制した。4月と10月に、イスラエルからそれぞれ一度ずつ本土にミサイルによる被害を受けたことをきっかけに、防空網も強化する。核施設上空を旋回して敵のミサイルなどを迎撃する無人機のほか、レーダーの性能をチェックし、地対空ミサイルを発射するなど、テストを実施した。
写真=イラン北東部で軍事訓練を受ける兵士 詳細 イランの訓練 読売オンライン 2025年3月17日午前7時付
https://www.yomiuri.co.jp/world/20250317-OYT1T50021/
イランのニュースサイト・ヌールニュースは3月17日、イラン領空域付近で米軍の海洋監視型無人機「MQ4C」を確認したと報じた。イラン空軍から提供を受けた情報では、詳しい位置は伏せられている。米軍のMQ4Cは、イラン軍のF14戦闘機と無人監視機に遭遇後、空域を離れたとのことである。フーシー派への支援をけん制する意図がこめられていた。
トランプ大統領は、歴代最もイスラエル寄りと公言する。イランに対しては、最高指導者ハメネイ師宛に核開発の中止を要請する書簡を送ったという。ハメナイ師はラマダン中の3月8日、アメリカとイスラエルを意識したのか「いじめをする国々」との言葉で批判を展開した。イランはアメリカに従わず、ロシアや中国など非民主義陣営と結託する。ガザの人々へ連帯を示すものの、新たな戦争の勃発の懸念から、介入は最小限にとどまった。外からイスラエルとアメリカへ非難を展開する。3月18日の国連の安保理で、パレスチナのマンスール大使は、「(ガザの人々は)イスラエル軍によって無差別に殺害されている」と窮状を訴えた。アメリカのシェア大使代行は「責任はハマスにある」持論を述べ、「民間施設からロケット弾の発車準備をしている」とイスラエルの軍事作戦を支持した。
3月19日、ガザ地区の民間防衛隊によると、イスラエル軍が未明に実施した空爆により、ガザ市とハンユニスを中心に、13人が死亡した。
詳細 ハメネイ師の言葉 BBC NEWS JAPAN
https://www.bbc.com/japanese/articles/clyj97dxwr0o
詳細 3月19日未明の空爆 AFP BB NEWS 2025年3月19日17時20分付
https://www.afpbb.com/articles/-/3568563?cx_part=top_topstory&cx_position=2
イスラエルへ攻撃を繰り出す親イラン組織フーシー派は、親米で王政のサウジアラビアと敵対関係でもある。アメリカは、サウジアラビアには恩がある。ロシア軍とウクライナ軍の戦いにおける停戦交渉の場として提供を受けた。フーシー派を叩くことで、イスラエルとサウジアラビアを助けることになる。サウジアラビアとイスラエルが、共通の敵を持つことで、国交正常化も進みやすい。ムハンマド皇太子は、あくまでもイスラエル国交正常化の条件として、「パレスチナの主権維持」を挙げている。ガザ紛争の勃発により、両国の関係は一歩遠のいた。トランプ大統領の政策によって、両国は距離が縮まろうとしている。ガザ紛争後の行方をめぐって、今中東地域を越えて、欧米の間でも大きく揺れている。
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