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2024年05月19日04:55

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2022年度NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第47話「ある朝敵、ある演説」に寄せて

1221年(承久3年)の今日(5月19日)、承久の乱で、後鳥羽上皇の執権・北条義時追討令を受け、北条政子が御家人に対し「前将軍源頼朝の恩は山よりも高く海よりも深い」と結集を訴えました。(新暦6月10日)


 で、大河での北条政子(小池栄子)の演説などを中心に。

 1221年(承久3年)5月14日、後鳥羽上皇(尾上松也)が挙兵。翌日には北条義時追討の宣旨が発せられました(承久の乱)。
 鎌倉には5月19日にその報がもたらされ、御家人らの動揺は隠せない状況に。
 そんな御家人らに尼将軍・北条政子は、安達景盛(ドラマでは新名基浩)に代読させ源頼朝(ドラマでは大泉洋)の恩顧を訴えました。ここらが史実とドラマの違うところ。史実では政子は御簾(みす)の内にいて、この代読を聞いていたことになっています。しかしそれではドラマは盛り上がらない。

『吾妻鏡』によると、 
 「故右大将軍(頼朝)が朝敵を征伐し、鎌倉に幕府を創って以来、官位といい、俸禄といい、その恩は山よりも高く、海よりも深いもの。感謝の気持ちは浅くないはず。しかしながら、反逆者が事実でない事を訴え、道理からはずれた院宣が発せられた。
 名声を大切にしようと思う者は、藤原秀康・三浦胤義を討ち取り、源氏三代の将軍(頼朝・頼家・実朝)が遺したものを最後まで守りなさい。
 ただし、後鳥羽上皇のもとに参ろうと思う者は、今すぐ申し出なさい」

 これを聞いた者たちは、命を懸けて恩に報いる決意を返答したのだと伝えられています。涙で返答できない者もいたのだとか。

 しかしドラマの中ではその名台詞は途中までで、政子自身の言葉で御家人達の心を動かしました。尼将軍という呼ばれ方もずっと後のこと。
 この日の「鎌倉殿の13人」では、義時追討の宣旨がばらまかれ、義時(小栗旬)は鎌倉を守るため、自分の首を差し出す決意を固めます。しかしこれに姉・政子が動いたのでした。

「私のために、鎌倉を戦場にはできない」
義時は、そういって政子のところに行きました。義時は、自ら執権を降りることを決めたのです。

北条政子「なりませぬ。承服できません。京に行ったら首をはねられるわ」
義時「それは、行ってみなければわかりませぬ。私を憎む御家人たちも多い。あとは、太郎に任せます」
北条政子「もう一度、よく考えて。小四郎」
義時「もとは、伊豆の片田舎の次男坊。それが、上皇様が口にするどころか、兵を差し出す。征夷大将軍・源頼朝と並んだのです。面白い人生でございました」

 そして、義時は御家人たちを招集しました。御家人たちが勢ぞろいしたところ、義時は後鳥羽上皇との経緯を話しはじめます。
義時「すでに聞いているものもおるだろうが…」
そこに、政子が現れました。
政子「待ちなさい。鎌倉の一番上にいるのは私です。あなたは下がりなさい」
 政子は、義時の話を止めて紙を取り出し読み始めます。
政子「頼朝さまが朝敵を討ち果たし、関東を治めてこのかた、その恩は山よりも高く、海よりも…」

 集まった御家人を前に、最初こそ大江広元(栗原英雄)が作成した原稿を読みかけますが、原稿を閉じ、自らの言葉で御家人達に語りかけました。
「本当の事を申します」と切り出すと、上皇が狙っているのは鎌倉ではなく義時の首であることを明かし、義時もそれに応じようとしていたと告白します。

「あなた方は本当にそれでよいのですか?」
「(義時は)一度たりとも私利私欲に走ったことはありません」
「ここで上皇様に従って、未来永劫西のいいなりになるか。戦って坂東武者の世を作るか、ならば答えは決まっています」
「頼朝様の恩に今こそこたえるのです」と呼びかけました。
 これには闇落ちしていた義時も思わず涙ぐみました。一瞬、「あの時の小四郎」が戻ってきたのです。

 劇中、のえ(菊地凛子)が涙ぐむシーンがありました。義時が腹をくくったのを見送るところです。
 これにはいくつかの解釈が可能です。夫が権力者の座から転がり落ちるのが悔しいからだとも取れましょう。しかし、「鎌倉あっての北条」という理念に従う義時の心根に感じ入ってのことだとも。こうしたダブルミーニング的な演技ができるのが、やはり菊地凛子という役者なのです。

本放送日 : 2022年12月11日

参考文献

『鎌倉殿の13人 後編』 NHK出版〈NHK大河ドラマ・ガイド〉
『現代語訳吾妻鏡』 五味文彦・本郷和人 (編) 吉川弘文館
『愚管抄 全現代語訳』 慈円(著) 大隅 和雄 (訳) 講談社学術文庫



※ 現在、曜日替わりで、日本中世史やイギリスの哲学者、トーマス・ヒル・グリーン、ジョン・スチュアート・ミルや西洋倫理学の歴史なども投稿しています。
いずれも長文で、かつ長期連載ゆえ、自分の日記で投稿し続けているのが現状です。お時間のある方、日帰り温泉や私生活報告ともどもお読みいただければ。
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