mixiユーザー(id:8729247)

2024年04月28日16:44

133 view

あんまり聞かない病名ではあるが

子宮仮性動脈りゅう破裂。

あんまり聞いたことない病名で、研修医の教科書にはないかもしれない。

動脈りゅうは知ってる人も多いと思う。
動脈の壁がなんらかの事情で薄くなって動脈の圧で広がって、
広がり切ってしまうと破れて出血する。
動脈ってのは心臓からの血液が脈動しながら運ばれていく血管なので、
破裂すると脈動性にぴゅーぴゅー出血して自然に止血はしない。
失血死しちゃうわけ。

子宮仮性動脈りゅうは、これとはちょっと違う。
お産(普通の分娩でも帝王切開でもありえる)のとき
子宮の動脈の一部が傷ついて、でも小さい傷なので
上から組織(子宮の筋肉とか帝王切開で他組織かぶせて縫うとか)がのっかって
「動脈に傷がついて出血してる」とすぐにわからないことがある。
出血した血液が凝固して一時的に止血してくれることもある。
ただ、動脈はそんなことくらいで出血をあきらめたりはしてくれない。
なにせ全身に血液送る仕事なんだから、多少の組織や凝血塊は
時間をかけて跳ね飛ばし、あるとき突然の大出血が始まる。
この記事になった人は、子宮の内側のどこかで動脈が傷ついたので、
子宮からの出血がどっと増えたからわかりやすかったけど、
帝王切開のあとで子宮の傷の動脈からの出血だと、
外からわからない、痛みもないことがある。
ただ「術後の貧血が強いんですけど?」って感じ。
お産は出血して当たり前、多めの出血も仕方ないこともあり、
とりあえず「じゃあ3時間後にまた」採血とかになるが、
前の値より明らかに一定以上の数字低下があると
「…これはどこかで出てますね」となる。

ワシが医者になって10年くらいのときは
血管造影などそんな気軽に依頼することができず、
せいぜいCTをとってあたりをつけて、
手術室と麻酔科を頼んで再開腹してた。
出血してる部位は、周辺組織に血液がしみこんで全体的に赤黒くなってる。
「このへんだ」ってのはすぐにわかるけど、
実際に出血している動脈を見つけて挟んで縛らないと出血は止まらない。
全体的に血がしみこんでる組織の中で細い動脈を探すなんてすごく大変!
でもやるしかないの。
「このへんか?」「これか?」と言いながら数か所つまんで縛ってつまんで縛って。
神経とか他の血管とか膀胱とか挟まないように気を使いながら続けていくと、
ある瞬間から手元の組織の「血のしみこみ具合」が明らかに変わる。
ちょっと手をとめてガーゼで抑えたりしながら見守ると、
血がしみこんで膨れてたあたりがひっこんでいくのがわかる。
…そのくらい、動脈出血ってすごいんだけどさ。
で、とりあえず閉腹してまた数時間おきに採血する。
最初の値から大きな変化なければ「…終わったな」と思ってちょと寝られる。

今は血管造影して塞栓術ですか。
血管外科の先生と造影室をたたき起こすわけだな(笑)。
すみません、お世話になります。よろしくお願いします。
もう一度傷を開く必要はないし、局所麻酔なので患者さんに説明しながらできる。
止血したことも画面で確認できる。

いい時代になりましたな。

ただし、造影室に全部任せて産婦人科主治医が寝れるわけではない。
術後に患者家族に説明しなくちゃならないし、
術後の採血結果はやはり数時間おきに確認が必要。
でも、患者の負担は格段に少ない。
塞栓術で一時的に卵巣機能不全とか起きることもあるけど、
大丈夫、死なない。ホルモンなら補充ができるし、排卵促進剤も使えます。

第1子出産の今野杏南、子宮からの出血止まらず緊急搬送「出産は本当に命懸け」
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=7842501
14 3

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2024年04月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    

最近の日記