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2024年04月23日06:01

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「ナチ刑法175条」感想

「ナチ刑法175条」

 これは、1871年に制定され、1994年まで存在した同性愛を禁止するドイツの刑法175条により、ナチス・ドイツ時代に迫害された同性愛者たちを追ったドキュメンタリー。
 本作は、2000年製作、日本では2001年の山形国際ドキュメンタリー映画祭にて「刑法175条」のタイトルで上映されたが、その後、一般上映なく、今年、デジタルリマスター版公開に合わせ、劇場公開される事となった。

 かつて、ドイツで施行されていた同性愛者を差別する刑法175条。同法により、ナチス支配下で男性同性愛者が弾圧されていた事実を、6人のゲイとひとりのレズビアンが証言する。
 当時、約10万人が逮捕され、1万5千人が強制収容所に送られ、第二次大戦後の生存者はおよそ4000人。(尚、彼らは戦後、そのまま刑務所に収監された)本作製作時には生存が確認出来たのは僅か10名に満たなかったと言う……

 本作は、映画「大いなる自由」でも描かれた、同性愛を禁じる法律による弾圧を描くもの。同様の法律は多くの国に存在したが、ドイツが特異なのは、やはりナチスによる苛烈な弾圧が存在したからだろう。
 むしろ、意外だったのは、第一次大戦後のワイマール時代――日本だと丁度“大正モダン”時代か――は、法律で禁じられていたものの、野放し状態でゲイやレズビアンの社交場の存在する程度には認められていた、と言う事実。それが、ナチス政権下、ある事件をきっかけに弾圧に転じた、と言う急変ぶり。そこで語られる「人々はすぐ無関心になる」と言うのは、現代にもそのまま通じる、重い言葉だと思う。
 
 あと、意外だったのは、レズビアンに対する扱いで、19世紀に法が制定された当時は、「女性には性欲がない」と見なされ、法の適用が男性のみであったのは頷けるが、ワイマール時代を経た後では、そうも行かない(実際、法は改正されて男女共に適用されるようになっていた)と思ったのだが、実際にはナチス政権下で逮捕されたレズビアン女性は5名で、ほとんどが野放しであったと言う……その理由が「女性同性愛者でも、子供を産む役には立つから」と言うのがナチスらしい……つまり、レズビアンだろうが、種付けしてしまえばいい、と言う事か……

 貴重な証言や、当時の映像記録を集めた本作の製作は有意義なもので、実際、本作は国立博物館のライブラリーに収蔵された、と言うが、映画としてはあっさりした出来で、物足りなさも残る。
 しかしながら、商業映画としてエンタメ化するのをよしとせず、記録映像としてまとめ上げた、その真面目さもドイツらしくあるが……
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