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2024年01月01日14:15

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【女性の悦び】ドキュメンタリー映画『春の画 SHUNGA』

 
2023年11月29日(水)、ユナイテッドシネマ橿原で鑑賞。客はおじ2、おば1(私)。

公式  https://www.culture-pub.jp/harunoe/
予告編 https://youtu.be/NLdmdWs-T_g https://youtu.be/rD-HTgzhKTQ

フォト


 
劇映画『春画先生』上映時に本作の予告編を見て、「ドキュメンタリーの方が断然面白そう!」と興味を持った。これは観に行って大正解。

日本初の「春画展」(2016)を観て感動した私は、『春画先生』の作品チョイスに(ちょっとコレジャナイ…)と違和感を感じていた。他方、本作の作品セレクトはバッチリ!

世界初の『春画展』(2013)を企画した大英博物館の男性キュレーターも、コペンハーゲン在住の男性春画コレクターも、口を揃えて「一番好きな作家は月岡雪鼎(つきおかせってい)」と言った。それを聞いて、私は(そうじゃろう、そうじゃろう♪)とニンマリ。やはりちゃんと分かっておられる。

大英博物館のキュレーターは「西洋の猥褻画と違い、日本の春画はハイアート。性的表現と美術的価値の両立は世界的にも稀で、深い感銘を受ける」「春画は女性の悦びを肯定している点で、西洋美術と全く異なる」と解説していた。全く同感だ。ちなみに、大英博物館『春画展』来場者は女性の方が多かったそう。



本作は監督も企画も女性である点が、『春画先生』との大きな違いだった。最初に登場した東京の版元さん(浮世絵版画の技術を継承するため、鳥居清長の傑作「袖の巻」復刻に取り組んでいた方)も女性だった。

実は『春画先生』を観た時、何となく「女をオモチャにしている」感じがして不愉快だった。でも、本作にはそういう不快さが全くなかった。同じ春画を扱っていても、作り手次第でこんなにも印象が違うのか!と驚いた。

…以下、このレビューの続きは、リンクした日記↓にて。
熱を入れて書きすぎたため「2000字」の制限に引っかかってしまった。笑


https://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=1833905&id=5612683


と言うわけで、続きをば。


例えば、春画鑑賞会の違い。

『春画先生』では、着飾ったセレブたち(男性多めで20人くらい)が、終始無言のまま、回転テーブルでゆっくり回ってくる春画をじっとりした目で眺める異様な風景が展開された。変態的で陰気、嫌な感じだった。

 【艶笑奇譚】映画『春画先生』  2023年10月23日
  https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986186905&owner_id=1833905


他方、本作で紹介される「リアルの春画鑑賞会」は、古美術商の浦上満さん(『春画先生』にも作品提供した浦上蒼穹堂オーナー)が気さくに作品を紹介し、5〜7人くらいのお客(圧倒的に女性多め)が感想をぺちゃくちゃ喋り合って盛り上がるという、実に楽しく寛いだ雰囲気だった。あけすけに性器の名称も飛び交う会話だが、そこには暗さや嫌らしさなど微塵もなかった。「性」の肯定は「生きること」や「生命そのもの」の肯定なのだと伝わってきた。
江戸時代の春画は「もっぱら女性のためのもの」であり、笑い絵と呼ばれたように「コミュニケーションツール」でもあった。だから、こういう鑑賞態度こそが正しいと思う。

また、日本古来の信仰には、御神体が性器というケースが多い。昔は生物学などなかったから、男女和合の「無から生命を生み出す」神秘的なパワーに、人々は畏敬の念を抱いたのだ。だから、「死の現場 = 戦さ」に赴く侍達に、生還できること(武運長久)を願うお守りとして春画が授けられたという。納得。



江戸時代の春画は、文字通り「世界最高水準のアート」だった。
その深遠な世界を、本作は代表作品を用いて初心者にも分かりやすく解説してくれた。

高度な版画技術を次世代に継承するため、鳥居清長の傑作「袖の巻」を復刻していた版元は「ただでさえ、髪の生え際などの表現は非常に精細。髪と違って細く縮れている上、複雑にからみ合う陰毛の表現はさらに難しい」と解説。驚くほど精密な作業に取り組む彫師は「原盤を見たい」と言っていた。また、浮世絵のグラデーションは刷師が作るものと知り、これも作業工程を見て驚いた。

◆東京・高橋工房 鳥居清長「袖の巻」全十二図 紹介ページ
 https://takahashi-kobo.com/sode_no_maki/

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鈴木春信「風流艶色真似ゑもん」は、ちっちゃい男が男女の営みを「覗き見」する趣向、真似ゑもんと鑑賞者は「楽しい覗き見の共犯」だ。ユーモアたっぷりの作品で、描かれる情景も実に長閑。

喜多川歌麿は「歌満くら」で近代文学的なテーマを描いた。寝そべってキスする男女の、男の目はハッとするほど冷めている。彼が手に持つ扇には「蛤に嘴を挟まれた鳥」と書かれている。男は女に飽きているが、付き合わねばならぬ事情があるらしい。

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葛飾北斎は春画に10年間取り組んで満足したらしく、その後スパッとやめたと言う。彼の代表作は“蛸と海女”だが、このモチーフ自体は従来より多くの絵師に繰り返し描かれてきたもの。しかし、北斎の“蛸と海女”は、異次元の進化を遂げていた。彼は絵の余白を台詞で埋め尽くした。異常な執念が漲っている。
ドキュメンタリーでは、吉田羊が海女になりきり、実に色っぽいナレーションをつけていた。その、耳でイかされちゃうほど生々しい台詞に、改めて驚かされた。北斎は、まだ写真もなかった時代に「絵と言葉の力で、現代のAVに匹敵するものを創造する」ことを目指していたのだ。途方もない貪欲さ!

ああ、だから『春画先生』では、“蛸と海女”の台詞を、あえて「枯れた爺さんに棒読み」させていたのだと私は気づいた。あの台詞を本気で読むと、北斎の作品が持つパワーに映画が喰われてしまうからだ。

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月岡雪鼎の肉筆画《四季画巻》を所有するコペンハーゲンの春画コレクターは、まだ若い頃に蚤の市で「北斎春画が表紙の画集」と出会って以来、その魅力に取り憑かれたと言っていた。彼は傑作春画を多数所有していたが、扱いは割と雑だった。木箱をゴロッと倒して雪鼎の巻物を素手で受ける無造作な様子に、思わず息を呑んだ。日本の私設博物館の丁重な扱い方とは対照的だった。

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瑞々しいフェミニズムにあふれる月岡雪鼎の春画は、嫁入り道具として大人気だったという。性の営みや女性の悦びを肯定する、実に幸せそうな春画。
横尾忠則氏が「74歳で病死した母の腹巻から4枚の春画が出てきた。ずっと大事にしてきたものらしかった」と語っていた。おそらく嫁入り道具だろう。横尾氏は春画をモチーフにした大作を制作していた。
現代美術家では「天才でごめんなさい」「犬」で有名な会田誠氏も登場した。とても綺麗な美少女を描く作家だった。彼のコメント詳細は忘れた。

春画ウォッチャーの春画ール史は、現代女性ならではの複雑な胸中を吐露していた。
「春画が描く "おおらかな性" の裏側にあった現実。避妊なしで子を産み続け、短命だった女たちの人生を考えると、春画は "好きだけど嫌い" です」と。



江戸時代の一流絵師達が「隠れて春画を制作していた」のは、春画を描くことに後ろめたさがあったからではなく、ひとえに「奢侈禁止令(しゃしきんしれい)」のせいだった。絵師達は作品に誇りを持ち、大名からの依頼も多かった。

絢爛豪華な春画の最高峰は歌川国貞「正写相生源氏」(源氏物語のパロディー)だ。「空刷(からずり)」「雲母刷(きららずり)」「正面刷」「金刷、銀刷」「青貝を混ぜた刷」などの超絶技巧を駆使し、絵の具は40色くらい使用。その立体的な表現は、現代では再現不可能と言われているそう。アップで技巧解説してくれたので分かりやすかった。なお、本ドキュメンタリーで紹介されたアイテムはとても状態が良かった。

◆「正写相生源氏」データベース
 https://ehon.dh-jac.net/books/ebi/Ebi1139-3



幕末(1850年頃)になると、暗い世相を反映し、春画にもダークな作品が増えてくる。代表作「春画幽霊図」などが紹介された。「牡丹灯籠」に通じる世界だなと感じた。

「西欧に追いつけ」機運が高まった明治時代になると、春画は“わいせつ物”として警察による取り締まりの対象となり、表舞台から姿を消した。

このドキュメンタリーは、とても貴重な記録だと思う。『春画展』を観た人なら非常に楽しめること請け合い。また、あの貴重な展覧会を見逃した方も、本作を観れば「春画」の奥深い面白さに目覚めるだろう。



【INDEX】映画/舞台 関連日記(3)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984169789&owner_id=1833905

【INDEX】アート 関連日記
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1973808525&owner_id=1833905



『春の画 SHUNGA』試写会トークイベント https://youtu.be/O_31ghq7_e4

美術手帖 エロティシズムだけではない。
春画の知られざる魅力に迫るドキュメンタリー映画『春の画 SHUNGA』
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/27683

和楽 春画を徹底解説。エロティックな喜び、北斎も描いたって本当?
https://intojapanwaraku.com/rock/art-rock/2535/

きものと コラム いざ!可笑しくも愛おしい春画ワールドへ『春の画 SHUNGA』
https://www.kimonoichiba.com/media/column/1136/

Filmarks https://filmarks.com/movies/111842
映画.com https://eiga.com/movie/100059/



大英博物館の「春画展」 9万人に迫る入場者数の約6割が女性
https://www.news-postseven.com/archives/20150921_352012.html?DETAIL
https://www.huffingtonpost.jp/2013/10/04/shunga-art-britishmuseum_n_4041308.html

なぜ生まれ故郷の日本で「春画展」が開けないのか…
欧米では相次ぎ開催、西洋美術への影響が研究されているのに 2015/5/9
https://www.sankei.com/article/20150509-EDDY6CK7PBKZHFVXA4SP4HKNZY/

日本初の「春画展」開催 大英博物館からの里帰り作品も
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1505/22/news064.html


アイエム 春画展(前期)レポート 細見美術館 | 京都府
https://www.museum.or.jp/report/775

アイエム 春画展(後期)レポート 細見美術館 | 京都府
https://www.museum.or.jp/report/792


 
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