池田弥三郎氏が昭和37年(1962)、「女子学生亡国論」を唱えて大いに話題になります。この少し前に、早稲田大学の暉峻康隆氏が「大学は女性ばかりになった」ということを発表していて、それを受けたわけでもないでしょうが、池田氏が「婦人公論」誌上に「大学女禍論」を書いたのです。
「私立大学の文学部は女子学生に占領されて、いまや花嫁学校と化している」その占める割合は、学習院大学で89%、青山学院大学86%、成城大学78%、早稲田65%、立教64%、同志社56%、慶応44%。つまり慶応を除けばすべて半分以上、こうなれば大学は「花嫁学校」で日本の将来は危ない、というわけです。
これが女性およびフェミニストたちから総スカンをくいまして、当たり前です。今や亡国どころか「男子学生亡国論」というくらいに、女性の力で大学は、いや日本はやっとこさっとこという感じで、この頃から女性の向学心が高まっていたわけです。「日の本は女ならでは明けぬ国」のはじまりです。
そんな時、世界ではついに冷戦が衝突しました。10月22日〜28日のキューバ危機です。カストロのキューバにソ連が船で核兵器を持ち込もうとし、あちこちにミサイル基地をつくっていることが、空からの偵察で確認されたのです。
できてしまえばアメリカは防衛のしようがありません。アッという間に届いてしまう距離ですから、大ピンチです。つまり基地完成の暁には世界戦争にならざるを得ませんから、その前に防がねばならない。ケネディ大統領は「(ソ連の船舶によるキューバへの核兵器持ち込みを)断固封鎖する、封鎖ラインを突破すれば撃沈する」と表明します。
ソ連がどう出るか、そのまま突っ込んでくれば、当然アメリカは飛行機と軍艦でもって攻撃しソ連船を撃沈し、キューバを爆撃します。そうなれば世界戦争です。アメリカのトップであるケネディ大統領、弟のロバート・ケネディ司法長官は非常に慎重でした。
だが、軍部は皆ものすごい強硬姿勢で、あの時もしかすると、ほんとうに第三次世界戦争すなわち核戦争が起きたかもしれなかった。ギリギリの時間に達して、ついにアメリカはソ連に、24時間以内にミサイルを撤去するか、あるいは戦争かと迫ります。
最後になってフルシチョフが「われわれは戦争を望んでいるわけではない」とミサイルを撤去し、船も全部戻す、といって危機が回避されたのが28日でした。まさにこの一週間、世界はたいへんな緊張状態におかれました。すべての国が戦闘態勢です。
日本はそんなこと存じません。当時、日本の外交はまったく何もしていません、出る幕なしです。そんな状態をとらえ、日本は結構ですとばかりに、フランスのド・ゴール大統領が「池田さんはトランジスタラジオのセールスマンと同じである」とからかったのが新聞に載りました。
日本は復興し繁栄することが大目標なのだから少々は構わない、とも言われました。この時に米ソの緊張が核戦争の手前までいったということを、日本国はほんとうには認識していなかった。もっともわかったとしても手の打ちようもなかったのです。
昭和8年(1933)の国際連盟脱退以来、日本はなんら外交で苦労もせず、戦後も占領下にありましたし、独立後も一所懸命働くばかりで危険な外交問題を抱えているわけでもない。外交で必死に汗をかいたことがない。というわけで、いまの日本人は外交下手としか思えないのです。
日露戦争の頃は立派にやっていたのですから全然できないはずはないのですが、どうも昭和の日本は外交というものを知らない国ではないか。現在もまた米国の犬となって、中国やロシアとまずくなり、それがアジア全体に波及しているのです。
どうにも手の打ちようのない外交の状態が続くのを見ますと、国際連盟脱退以降、日本はあまりにも世界情勢について無関心で、そして何かというとアメリカにおんぶにだっこで、習練不足で、不勉強にすぎたのは確かなことじゃないかと思うのです。
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