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2023年10月12日18:05

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【対話と尊厳】映画『旅するローマ教皇』

 
10月10日(火)、シネリーブル梅田にて朝回を鑑賞。観客12人。

公式  https://www.bitters.co.jp/tabisuru/



ローマ教皇フランシスコは、カトリックのイメージと良い意味で違う人だった。

率直で、親しみやすく、人間らしい人だった。まさに社会派。まさに現場主義。
「常に弱き人に心を寄せ、彼らと共にある」姿勢は、キリストのそれだろう。
言うは易く行うは難し。フランシスコ猊下は21世紀の「歩く聖書」だ。

猊下が各地の民衆や囚人と触れ合うのに、護衛スタッフは大変だなー!と思った。
パパが乗る専用機にはトップガンみたいな戦闘機がピッタリ護衛しているのに、
地上ではスカスカのパパモビルに立って移動する。狙い撃ちや爆弾投入は簡単だ。

ブラジルやフィリピンのように熱烈歓迎される国もあれば、沿道にほとんど人がいない国もあった。それでも、高齢の猊下は変わらず沿道の人々に手を振り続けていた。
「旅とは知的で精神的な修行」。猊下は今も道の途中にある人だった。

また、彼は相手の顔を「よーく観る」人だった。
イラクのシーア派宗教指導者と会談した時、黒ずくめの相手は目を逸らしていたが、教皇がずっと相手を見つめていると、やがて相手も教皇に目を向けたのは印象的。
アイコンタクトで「対話」を引き出そうとしているようだった。



フランシスコ猊下の発言によく出てきたキーワードは
「夢」「希望」「尊厳」「対話」「他者尊重」「平和」。

「無関心のグローバル化が泣くという力を奪った」「移民に対する思いやりを」

「自由を奪われても、尊厳は奪われない。大事なのは尊厳だ」
「貧困は宿命ではない」「夢をあきらめないで。希望を持って生きよう」
「皆で夢を持てば世界は少し良い方に変わるかもしれない」

「治安や秩序は投獄によってしか維持できないという考えは社会の欺瞞」
「罪を償い終えた人が生きていける道を整えるのが社会の課題」

「宗教の名の下に行う戦争は全て不正だ」
「戦争を仕掛ける元首は、貪欲で不寛容で権力欲が強い」

米国下院議会では「血塗られた金儲け」と武器売買を止めさせるよう訴えていた。

特定の宗教指導者というよりも、グローバルな政治家みたいだなと感じた。


他方、「(弟のことなど知るか!と言い放った)カインの手を制止なさったように、我らの行為を阻みたまえ」と神に祈る姿はクリスチャンそのものだった。



「旅」と関係なかったせいか、同性婚や中絶に関しては全く情報がなかった。
そこがちょっと物足りなくて★4。調べたらBBCがいろいろ発信していた。

■ローマ法王、現代の家族のあり方に理解呼びかけ
 家族愛について指針 2016年4月8日
 https://www.bbc.com/japanese/35997028

■ローマ教皇、同性カップルの法的保護を支持 「家族になる権利ある」
 https://www.bbc.com/japanese/54628101

■ローマ教皇庁、「同性婚は祝福できない」と公式見解  2021年3月16日
 https://www.bbc.com/japanese/56410862

■ローマ教皇、子どもを持たずにペットを飼うのは「身勝手」 2022年1月6日
 https://www.bbc.com/japanese/59891135

「教皇」と「(保守派が多い)教皇庁」は一枚板ではないのかな?という印象。

ジャンフランコ・ロージ監督が語った後日談によると、本作のDVDを届けに行った時、教皇が監督の耳元で「私たちの周りには保守派が多いからね」と囁いたそう。やはりバチカンでは"異色の"存在らしい。



関連でこんな映像も発見。まぁ気持ちは分かる。人間だもの。

■ローマ教皇、広場で腕をひっぱる人の手をピシャリ 新年に謝罪
 https://www.bbc.com/japanese/video-50969979

『旅するローマ教皇』ラストの映像。イタリアは最もコロナ死者が多かった。

■ローマ教皇、無人のサンピエトロ広場で祈り  2020年3月29日
 https://www.bbc.com/japanese/video-52082982



https://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=1833905&id=5580825


無宗教でも、世界の動向に関心がある人ならば観ておくべき作品。

世界に13億人もの信者がいるカトリックは国境線のない巨大な王国だ。
第266代ローマ教皇フランシスコは、2013年からその頂点に立っている。彼が9年間で37回・53カ国を訪問した800時間分もの公式記録映像を83分にまとめたドキュメンタリー。まあ、世界ってさまざまだ!と実感できる。

ナレーションや劇伴などの演出を廃し、彼の言動を淡々と切り取っていくおかげで、観る者が主体的に感じ取り、よく考えることができる。味わい深い作品だ。

フランシスコ猊下は驚くほど多くの人々と触れ合っていた!
それも、貧しい庶民や囚人(何度も刑務所を訪問していた)と直接触れ合っていた。また、移民や難民など弱者への思いやりを何度も訴えていた。
教皇就任直後、イタリア沖で起きた移民船転覆事件の現場を訪問し祈りを捧げていた。戦争を厳しい言葉で非難し、大国が顧みようとしない難民に「尊厳を」と国連で訴えていた。(国連難民高等弁務官だった緒方貞子さんも「難民に尊厳を」と国連で訴えていた)

フランシスコ猊下は教皇が大歓迎されるカトリック国だけでなく、信者が少ない国や、中央アフリカなど危険な紛争国も訪問。広島でも祈りを捧げていた。

イラクに行ってシーア派の宗教指導者と会談し「我々は兄弟の宗教だ」と語りかけ、靴を脱ぎモスクで祈りを捧げた(祈り方はカソリック流)のには腰を抜かした。また、パレスチナでは東方正教会のヴァルソロメオス1世と会談し「彼らの宗教を尊重すべきだ。カトリックへの改宗を強いるべきではない」と明言。嘆きの壁?に祈りを捧げ、壁の割れ目に手紙を差し込んでいた。

なんかいろいろと、「カトリックの権威=ローマ教皇」のイメージを覆す御方だった。特定の国家の利害を離れた、国際政治家のような人だと感じた。アルゼンチンの庶民出身(彼はアメリカ大陸出身で初の教皇)だからだろうか。

この方の前任者時代は、「何カ国にも及ぶ、聖職者による児童性的虐待事件」や「バチカンのマネーロンダリング疑惑」が発覚し、カトリックのイメージが非常に悪くなっていたと記憶する。そのせいか、学者肌の前任者は生前退位した。

他方、フランシスコ猊下は、「聖職者による児童性的虐待事件」について司祭達に「絶対に許されない罪」「徹底追求し、全ての関係者を処罰する」と明言。ベネディクト16世との違いをはっきり打ち出した。しかし、訪問国で係争中の司祭について質問された時「まだ"証拠"が出ていないから」と明言を避けた。やはり加害者の味方かと批判されると、すぐ謝罪会見をした。「裁判の話だったのでうっかり法律用語を使ってしまったが、被害者の気持ちを傷つけてしまった。本当に申し訳ない」。この教皇にはハートがある、人間らしい人だなと親近感を抱かせる行動だった。

とにかく、フットワークの軽さに感心した。彼はイエズス会出身で史上初の教皇だが、ザビエルの昔からイエズス会はフットワークの軽さが本領なのかしらと思った。しかし、76歳の高齢で教皇に就任し、これだけの外遊をこなすのは大変な負担だ。初期から少し足が悪そうな歩き方だったが、近時は補助なしに歩くことは難しそうなほど足を引きずっていた。でも、杖は使わない。旅をできなくなった時が、この方の退位どきかもしれないと感じた。

コロナ禍で無人のサンピエトロ広場をとぼとぼ横切り、静かに祈りを捧げる夜のシーンで映画は締めくくられた。深く首を垂れた横顔に、宗教家・フランシスコの願いを感じた。



ケスさんの感想日記  2023年11月21日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986389629&owner_id=12923117


Filmarks  https://filmarks.com/movies/108733
映画.com  https://eiga.com/movie/99100/

ジャンフランコ・ロージ監督とヤマザキマリの対談
 https://eiga.com/news/20231006/2/

ロッジ監督インタビュー  クリスチャン新聞
 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/?p=40734

救いを求める人々の下へ 苦しみを通して知る現代世界 「旅するローマ教皇」
 https://hitocinema.mainichi.jp/article/itsudemocinema-inviaggio

【映画評】教皇という孤独 『旅するローマ教皇』
 http://www.kirishin.com/2023/06/02/60588/



【INDEX】映画/舞台 関連日記(3)
 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984169789&owner_id=1833905



【2025.04.27. 追記】

ローマ教皇フランシスコの葬儀、160を超える国・国際機関の首脳らと
40万人以上の信者集まる 遺体はローマ市内の大聖堂に埋葬 2025年4月27日(日)

 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1881230?display=1


ローマ教皇フランシスコの葬儀始まる 本人の意向で柩は装飾がない木製
 集まる信者らは20万人超予想 
 弔問外交も注目 トランプ・ゼレンスキー会談の可能性も 2025年4月26日

 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1880986?display=1


ローマ教皇の葬儀は26日に 遺体は23日にサンピエトロ大聖堂に移され 一般信者らに公開 トランプ氏葬儀への参列表明 ゼレンスキー氏も“参列計画”報道

 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1871307?display=1



偶然見つけた映画をメモ。 さすがは"ロックスター"教皇。

『ローマ法王フランシスコ』(2018)ヴィム・ヴェンダース監督のドキュメンタリー
 https://filmarks.com/movies/79013

『ローマ法王になる日まで』(2015)  イタリア製作の伝記映画
 https://filmarks.com/movies/67270
 https://www.synca.jp/roma-houou/  予告編に注目 wikiでは判らない実情

『教皇選挙』関連作品をまとめたfujisanのレビュー
 https://filmarks.com/movies/67270/reviews/193707286


 
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