時代と共に言葉は変わっていきますが、
昔は普通に使われていた言葉が、今は全く使われなくなり、
死語同然になってしまうなんて事があります。
ある作家さんが文中で【弁当を使う】という表現を用いて、
校正をやられている方に直されたなんて事があったそうですね。
この【弁当を使う】という言葉を校正の方がご存知なかったようなんですね。
昭和生まれの方は大工さんなんかがお昼時に、
「すみません。ちょっと弁当を使わせて下さい」
なんてな事を言って、縁側で弁当を食べる姿を見かけたりした事もあるでしょうが、
今はそんな表現もなくなってしまったんでしょうね。
【弁当を食べる】でも同じ意味なんですが、
それは結構生々しい感じがするので【弁当を使う】の方が風情がある感じがしますよね。
それに勘違いを生む可能性もあります。
「すみません。ちょっと弁当を食べさせてください」
「お前に食わせる弁当はない!」
なんて怒られたりしましてね。
『弁当を食べさせて下さい』と言うと、
『ご馳走してくれ』みたいに取られる可能性があるわけですね。
この作家さん『商家の櫛比する大通り』といった感じで、
櫛の歯のように隙間なく並んでいる事を意味する【櫛比(しっぴ)】や、
『天下を睥睨する』といった、威圧するように周囲を睨みまわす事を意味する
【睥睨(へいげい)】なんて言葉を使った時も直されてしまったそうですね。
この先、通じなくなる表現も増えていくでしょうが
【お風呂をいただく】なんてのも通じなくなるかもしれませんね。
「お風呂いただきますね」
「お前はルパン三世か!」
盗むと思われたりしましてね。
昨今の喫煙率の低下からすると、
数年後には【煙草をのむ】というのも同様の扱いを受けそうな感じがしますね。
「お前、【煙草をのむ】って意味判るか?」
「え〜っと・・煙草って何ですか?」
『そっちか〜い!』みたいな事にもなりかねませんね。
いつの時代もジェネレーションギャップというのは存在するわけですが、
ある会社の上司が若手社員に
「俺の若い頃なんてな、大人から殴られてばかりいたよ。
ところが最近の若い奴らは、大人から殴られずに育ってるから羨ましいよ」
「あ〜そういえば、昭和に作られたものって、叩けば直るって言いますもんね」
これは見事な切り返しなのか天然なのか、判断が難しいですね。
微笑亭さん太
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