噂されていた、実写での宮崎さんの説教などもなく(笑)
9年間のブランクなど、なかったかの様に。
宮崎駿の新作アニメは、東京大空襲から始まります。
とはいえ、日本の町を行き交う戦車の形などからして、架空の世界かな?という感じで。
そんな中、主人公の少年が、空襲で母を亡くし。
軍事産業を営む父親が、母とソックリの美女(妹らしい?)と再婚。
それを見た少年は呟きます。
「きれいだ。そして母さんに似ている」
ここに本作の俺的テーマ「マザコン宮さん」が爆誕する訳です。
新しいお母さんは、ガッツリ妊娠しており。
「いやコレ、お父さんは前のお母さんが生きてる時から、ヤッてたんじゃないか? しかも妻の妹と?」と思いますが。
本作のお父さんは、空気が壊滅的に読めませんが(笑)
そんなに『嫌な人』としては描かれてはおらず。
まあ、子供の喧嘩を、校長に大金を寄付して有利に片づける、明らかに嫌な人ですが(笑)
あまり、このお父さんを悪人に描いていないのも。
良くも悪くも宮崎駿さんの「老い」かなと。
余計な事を考える。
そして主人公の少年は。
お父さん、新しいお母さんと一緒に。
やたら、お手伝いの婆さんが沢山いる田舎(北欧風)に疎開します。
この田舎で、お父さんは一所懸命、戦闘機の作成に勤しんだりして。
少年は、妖精の様な不思議な存在(ポスターのアイツ)に出会います。
そこで、新しいお義母さんが、何者かに誘われるかの様に森の奥に消え。
それを探しに行った少年は、不思議な世界に迷い込みます。
ここで、カンの鋭い貴方ならお気づきかもしれません。
「これ今までの、ジブリ映画のエッセンスを混ぜ混ぜやんけ」と。
そう、ジブリ闇鍋で進む、少年版『不思議の国のアリス』
もっと言うなら少年版『千と千尋の神隠し』⇒あっ、言っちゃった
それがアニメ版『君たちはどう生きるか』です。
で、ここから、宮崎駿さん作品特有の
「えっ、なんか大事そうな人が、突然出て来た」
「えっ、今から、そんな大事な話をするの」
「もう終わるのに、急に重要そうなキャラクターが出て来たんだけど」
みたいな展開が続くんですが。
ちょっと異世界での冒険パートが、わかりにくくて、人によっては退屈するかもしれません。
あれは、あえて、わかりにくくしていると思うのですが。
あの世界は「人が、生まれる前にいる所」にして「死んだ後に行く所」ですよね。きっと。
死んだ人は、あの世界を通り、また、生まれてくるんですよね。
異世界で、炎使いのスーパー美少女が出てきて、主人公を助けてくれますが。
それが空襲の焼夷弾で焼け死んだ、実のお母さんの若返った姿だったりして。
つか、焼け死んだ人を、炎使いにしますか!
宮さんの、そこに痺れる憧れるゥ!
とにかく説明がない上に、情報量が多いので混乱しますし。
若くなった美少女お母さんも、活躍しそうで、イマイチ活躍しませんが。
宮崎駿作品の、こういう、いろいろと考えさせる所は、大好きです。
実母と義母の、ダブルお母さんヒロインという、物凄いマザコン体制も。
この変なバランス、嫌いじゃないぜ。
これが出来るのは、手塚治虫亡き今、もはや宮崎駿だけ!
宮崎駿さんの作品は、あるキャラクターの心象風景的な世界。
つまり「これ誰かの心の中じゃないの?」って世界を、平気で現実と繋げて描くし。
また他のキャラクターも、その世界の中に、ズカズカ入ってきちゃうから。
そこがちょっと、難解な部分でもあり。
また、楽しい部分でもある。
今回の映画も。
どう見ても、あの世界は、母の死で精神のバランスを崩した、多感な思春期の少年の作り出した世界の様に見えて。
実は、あの世界を作り出した、別の存在がいながら。
その存在は、石を積んだだの、崩れただのにしか興味がなく。
やはり普通の人には思いつかない、ワンダーを描くのだなあ、と思いました。
という訳で。
投げ放しというか、フォローのない事も沢山ありましたが。
それも含めて、俺としては、大満足の一本でした。
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