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2023年06月28日18:38

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徒然読書日記23-32《シンプルな情熱/アニー・エルノー》





《シンプルな情熱/アニー・エルノー》
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https://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

ノーベル文学賞受賞作家による自伝的小説です。
これは小説なので、
虚構の部分もあるかと思われますが、
すべてが作り話でもありません。
そこにオートフィクションの魅力があるのでしょうね。

内容を簡単にいってしまえば
離婚歴のあるパリ在住の女性教師と、
ときおり彼女の家を訪ねてくる
東欧の外交官との肉体関係を綴ったお話です。
外交官には妻子があり、
家を訪ねてくるのも彼の都合しだい。
次いつ会えるのかもわからない。
家を訪ねてくるとき以外は連絡もない。
このような関係がいつ終わるのかもわからない。
女はただ男を待ち続けるだけ。
でも、会えばまた激しく求めあってしまう。
まったく救いのない関係。

短い期間であったにしても、
逢瀬を重ねるからには、
それなりの感情の起伏があったはずです。
でもこの小説では、
感情表現は最低限に抑えられていて、
過剰な描写が一切ありません。
むしろ語り口が平坦なようにも思えます。
しかし、それがかえって
主人公の感情の揺れを際立たせる効果を生み、
抑制された趣を醸し出しています。

ここに描かれているのは恋とも愛とも違う、
異質のもののような気がします。
もしかすると傷つけ、傷つくことを
互いに恐れていたから、
このような関係が築かれてしまったのかも。
シンプルな情熱という心の在りようは、
実際に作者が心の奥底で抱いていた感情とは、
真逆のものかもしれませんね。

他人の内面を理解するなんて、
土台無理なことです。
ましてや異性の感情なんて、
尚更わかるはずがありません。
そういう意味ではとても興味深いお話でした。



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