これまで地震や津波などで原発事故が起きた場合への備えとしては、「原子力損害賠償法(原賠法)」に定められた「原発1ヵ所当たり1200億円まで国が補償」という仕組みしかありませんでした。最終的な賠償責任額が数兆円から十兆円以上とも言われる福島第一原発の事故は、それが気休めにもならないことを明らかにしたのです。
それでは、原発に保険をかけるとなると、一体どのくらいの保険料を請求されるのだろうか。以前、ドイツで「原発に対する無限責任保険」の保険料が試算されたことがありますが、その時は1kWh当たり日本円で「13円」という数字が出ています。大島堅一氏の試算によると、「原発+揚水」に財政支出を含めた発電コストに匹敵する水準です。
これを2009年における国内原発の年間発電量(約2774億kWh)にかけ合わせると、約3兆6062億円になります。燃料などの発電コストとは別に、毎年これだけの保険料を請求されるのです。しかし、こうして金額が試算されても、これほどリスクの高い保険は誰も引き受けないだろうし、電力会社も保険料を払えるはずがないのです。
つまり、原発は「リスク・リターン」の関係が絶対に成り立たないシロモノといえるのです。投資家たちにそっぽを向かれ政府が保証しても計画放棄。このリスクの高さを、世界の投資家たちは敏感に感じ取っています。
格付け会社のムーディーズが2008年、過去に原発を建設、あるいは原発に投資したアメリカの電力会社の格付けを分析したところ、4社のうち4社の格付けが原発への投資後に下がっていました。
また、メリーランド州のカルバート・クリフス原発に原子炉3号機の建設を目指していたコンステレーション・エナジー社が、2010年10月に計画からの撤退を発表した経緯は示唆的と言えます。米エネルギー省は15億ドルもの債務保証を同社に与える予定だったが、その条件をめぐって対立し、決裂したのでした。
その条件とは、コンステレーション・エナジーが新規原発の発電量の15%について「絶対に売れる」と確約し、それを保証する意味で「ローンの頭金として3億ドルを差し入れよ」というものでした。これを同社が蹴ったということは、原発のためには3億ドルのリスクすら取れないと判断したことになります。
そもそも原発は建設期間が10年前後と長いため、投資から回収までのスパンが長くなりがちです。また、システム自体が古いものであり、風力や太陽光発電のように、技術革新による効率の飛躍的向上が期待できないという面もあるのです。あえて大きなリスクを取っても、ボーナスは期待できないのです。そこに、福島の悲劇が重なったのでした。 投資家たちの足は、いよいよ原発から遠のいていくでしょう。
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