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2023年06月07日22:20

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(完成)天文ニュース!宇宙最初の星の兆候を掴む。木星のガリレオ衛星から大気成分を検出する、108億光年先からブラックホールの兆候を掴む

 2023年6月7日(水)

国を超えて、研究者が交流し、アイディアを出しあう天文学会では、今我々ヒトのルーツに関係する初代星、いわゆるファーストスターの実像に迫ろうとしている。

 今回、第1章では、最新の天文学の成果であるファーストスターの痕跡探しを紹介する。第2章は、108億光年先の連星ブラックホールについて、第3章は身近な太陽系のガリレオ衛星のオーロラ現象についてである。

 過去の天体関連の日記

 直近 2022年11月10日付 JAXA相模原キャンパスの一般公開 
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1983677133&owner_id=32437106

 2022年11月4日付 月を含め宇宙に関する物語や新発見 16世紀のデンマークの天文学者ティコ・ブラーエ 満月の日のトワイライト夜景 
 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1983638981&owner_id=32437106

 2022年8/11(木・山の日)地球外生命体について、ドレイクの方程式
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982996397&owner_id=32437106

 太陽系の第2惑星金星に関する日記
2020年9/18(金)白色矮星を公転する惑星、金星の雲からリン酸化合物のホスフィンを検出 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1976957475&owner_id=32437106
   
 写真=上記の2020年9月18日の日記から 白色矮星を公転する惑星WD1856 掲載元 JlJl.com NASA提供 https://www.jiji.com/jc/article?k=2020091700754&g=soc
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 2019年11月21日付 宇宙最大規模の爆発現象 ガンマ線バースト 東京大学を含む国際チームが史上最大級のエネルギーをとらえる
 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1973734988&owner_id=32437106

 目次
・第1章 2023年6月7日付け 天の川銀河の星からファーストスターの兆候を掴む。
・第2章 108億光年先の近接したブラックホールについて 2023年4月6日(木)付
・第3章 木星の周りを回る4つのガリレオ衛星からオーロラを観測する

 第1章 2023年6月7日付け 天の川銀河の星からファーストスターの兆候を掴む。

 東京大学と中国の研究チームは、宇宙最遠方記録更新を狙って、赤外線すばる望遠鏡を使い、大きな成果を上げた。宇宙誕生2億年後に誕生したとみられる初代星の兆候を掴んだと発表したのである。初代星の構成元素は、水素とヘリウムのみにとどまる。これまでの観測最遠方記録は、宇宙空間に打ちあがったジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が発見した推定135億光年先の「GLASS z12」だった。既に推定134億光年先の銀河GNz11から、ハワイのケック望遠鏡にて、酸素や炭素のシグナルをとらえた事実から、初代星は大質量星だった可能性が高い。星は、重い星ほど早く寿命を終える。内部では、重い元素を作り出し、超新星爆発によって、宇宙空間にばら撒く。

 つまり古い星ほど、原子番号3リチウム以上の元素を示す金属量が少ないのである。

 国立天文台の青木和光教授らは、中国の分光探査望遠鏡LAMOSTを使い、天の川銀内で初代星が作った元素を取り込んだとみられる古い星を多数発見した。続いて、すばる望遠鏡で、初代星がばら撒いた元素を取り込んだとみられる古い星に焦点を絞って、観測する。水素やヘリウム以外の元素の割合を詳しく調べた上で、巨大星が引き起こす特徴的な超新星爆発で作られる元素の割合と比較した。

 初代星は、いくつか存在したとみられている。概ね太陽の140倍以上に達する。理論上太陽の130倍から250倍の星の最後は、対不安定型と呼ばれ、星全体が吹き飛び、ブラックホールも残さないとみられている。

 対不安定型は、爆発のエネルギーが桁外れに大きく、宇宙全体に影響を及ぼした。

 研究チームは、しし座の方向約3000光年先にある「LAMOST J101051.9+235850.2」のスペクトルが、太陽よりやや軽い星の元素組成とよく一致したと発表した。観測プロジェクトに加わり、論文の著者 Xing Qianfan 博士(中国国家天文台)は、「原子番号の奇数番(ナトリウムなど)と偶数番(マグネシウムやカルシウムなど)の元素の組成比に大きな差があるのは電子対生成型超新星の特徴で、理論の予測によく一致する結果です」と、J1010+2358 の元素組成比について説明した。

 詳細記事 写真 掲載元 すばる望遠鏡 宇宙初代の巨大質量星の明確な痕跡を発見
2023年6月6日 (ハワイ現地時間) 最終更新日:2023年6月6日
https://subarutelescope.org/jp/results/2023/06/06/3275.html
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注:上記のサイト引用文
 図:LAMOST J101051.9+235850.2 の元素組成比(赤丸)と超新星爆発の理論モデルの比較。上段で示している 10 太陽質量の星が起こす重力崩壊型超新星のモデルでは測定で得られた元素組成と全く合いません。中段は、85 太陽質量というかなり大質量の星が起こす重力崩壊型超新星の場合で、観測結果と部分的に合いますが、ナトリウム(Na)やマグネシウム(Mg)のほか、マンガン(Mn)やコバルト(Co)の組成が合っていません。下段で示したのが 260 太陽質量の星が起こす電子対生成型超新星のモデルで、観測結果を最もよく説明できます。(クレジット:中国国家天文台)
                                (引用終わり)

 今回の成果は、ファーストスターが作った元素を取り込んだ星のスペクトルの理論値と、観測を行った恒星LAMOST J101051.9+235850.2のスペクトルが、合致したことにある。研究グループは直接観測が難しいことを理解したうえで、兆候から探ったのである。身近な天の川銀河の低金属星を直接観測することにより、初代星にまた一歩迫ることができた。

 詳細 国立天文台 宇宙初代の巨大質量星の明確な痕跡を発見 2023年6月7日付
https://www.nao.ac.jp/news/science/2023/20230607-subaru.html

https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=7441875

 以下2023年4月6日(木)に公開した日記である。

 第2章 108億光年先の近接したブラックホールについて 2023年4月6日(木)付


 2023年4月6日(木)付けで、天文関連で一般でも話題になったニュースがあった。第1章ではブラックホール関連、第2章は木星のガリレオ衛星について検証する。

千葉大学と米イリノイ大学が参加した国際プロジェクトチームが、ブラックホールの存在を示唆する二重クエーサーを発見したのである。地球から観測天体までの距離は、ふたご座の方向に108億光年、記号名「J0749+2225」である。2天体それぞれの質量は、推定太陽の10億倍、天体間の距離は、1万光年とはじき出された。観測に使用したのは、遠紫外線から可視光域を跨ぎ、近赤外線で観測できるハッブル宇宙望遠鏡である。

 写真 掲載元 千葉大学 ニュースリリース 2023年4月6日付 PDFファイル
https://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/press/files/2023/20230406_b1.pdf
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図 1:ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された二重
クエーサーJ0749+2255 の画像 (Credit:
NASA/ESA/Yu-Ching Chen et al.)
図2:銀河合体に付随した二重クエーサーの想像図
(Credit: NASA/ESA/Joseph Olmsted)

 クエーサーとは、宇宙で最も絶対光度が高い天体の一つである。絶対光度とは、その天体自体が持っている明るさのことを差す。恒星太陽は、絶対高度4,8等級、一等級ごとに明るさは2,5倍異なる。地球から見ての明るさを差す、視等級はマイナス27,8度である。

 クエーサーは、絶対光度は高いとはいえ、その距離地球から100億光年以上離れている場合が多い。最も近いクエーサーは、イギリスのケンブリッジ大学が、電波で確認した「3C273」である。距離はおとめざの方向に24億光年、絶対等級マイナス27,8、視等級プラス12,9、

 数万から10万光年以上に及ぶ銀河のきわめて狭い範囲から、ブラックホールによって加熱されたガス雲からジェットを放出している。地球からみると、ジェットの明るさによって、銀河自体は隠されている。ガス雲を加熱する力は、理論上超巨大ブラックホールの存在なしに説明できない。

写真=光学望遠鏡で見た3C273 掲載元 JAXA宇宙航空開発研究機構のページより 
https://www.isas.jaxa.jp/j/column/famous/05.shtml
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写真=X線で見た3C273の中心領域 掲載元 上記のサイトより
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活発に活動するブラックホールは、重力によって、ガス雲を引き寄せる。角運動保存則により、ガスは旋回しながら徐々に落ち込む。すると、原子核の周りを回る電子が剥ぎ取られ、プラズマ化するのである。

 ブラックホールといえば、光さえ抜け出せない暗黒の天体である。電波や赤外線も発することなく、単独で存在している場合、確認さえできない。直接観測は難しいとはいえ、周辺の星の動きから、間接的に存在を確かめることができる。

 ブラックホールは、地球を宿す太陽系が属する天の川銀河の中心部に存在する。質量は太陽の400万倍、星座の方角から「イテ座Aスター」という。

 直径数万光年に達する銀河の中心部には、大陽質量の数百万から数十億倍のブラックホールが存在するといわれている。

 ブラックホールが、なぜ銀河中心部に鎮座するのか、答えは出ていない。ブラックホールが、銀河の種になっているのか、専門家によって意見が分かれている。謎を紐解くには、観測により、データーを蓄積する方法がベストである。巨大な重力源ブラックホールは、子供でも疑問を抱きやすい。天文学者は、ブラックホールから、銀河誕生や我々生命へ至る過程を解き明かすべく、研究を重ねている。

 第3章 木星の周りを回る4つのガリレオ衛星からオーロラを観測する

紹介する天体は、我々には身近な太陽系内の木星を回る衛星である。天文関連の情報を掲載しているsorae 2023年3月6日付けの記事によると、木星の衛星の中でひときわ大きいガリレオ衛星から、新たな発見があった。近代天文学の父ガリレオ・ガリレイが、詳細な観測データーを残したことから、その名がついた。1610年に、ガリレオ・ガリレイは、木星の周りの4つの小さな光に興味を持ち、毎晩夜空に望遠鏡を向け、スケッチをしていた。4その衛星は、内側からイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストである。

 参考記事と写真掲載元 sorae 2023年3月6日付け すべてのガリレオ衛星の「オーロラ」を可視光線で観測 カリストでは初
https://sorae.info/astronomy/20230306-galileo-satellite-aurora.html

写真=ガリレオ衛星のイメージ NASAより
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 21世紀以降、4つのガリレオ衛星から、ごく薄い層の大気が検出されている。地上望遠鏡からの分光観測では、地球の大気中のチリの影響により、観測は容易ではない。最も簡単な検出方法は、分光器を備えた探査機を送る方法である。計画から開発、打ち上げまで、十数年スパンを要する。

 天文学者は、微量の大気を検出するべく、ある方法を思いついた。衛星内で発生するオーロラ現象である。地球上では、太陽から吹き付ける荷電粒子が、磁場にぶつかることで生じる。緑のオーロラは、酸素原子との衝突によって、発生する仕組みだ。

 ガリレオ衛星の場合、地球の314倍の質量を持つ親惑星木星の磁場で加速された荷電粒子が、衛星の微弱な大気中の分子に衝突することにより、発光する。

 色については、分子ごとに異なる波長によって、変わる。

 過去にガリレオ衛星のオーロラ現象は、火山活動が行われているイオを中心に、エウロパでも確認されていた。

 目に見える可視光線よりも、波長が短い紫外線領域では、ガニメデのオーロラも確認されている。紫外線は、波長が短い順にC波は、オゾン層に吸収され、地表に届かない。B波は、一部オゾン層を突き抜けるものの、ガラスを通して、シャットアウトされる。聖典に恵まれた日、太陽が真上まで上がる正午頃、空気中を通る距離が短くなる分、地表へ降り注ぐ量が最大限になる。夏の日中、紫外線B波、UV-Bは、表皮のダメージから、日焼けしやすい。

A波は、エネルギー的には弱いものの、波長が長い分、雲の中を透過しやすい。人の肌において、表皮層まで届くことにより、黒味を帯びる。皺や弛みを引き起こす。


 紫外線は、大気への吸収度が高く、情報量は不足しがちである。我々の目で感じることができる、可視光線からの観測が必須だった。

カリフォルニア工科大学のKatherine de Kleer氏らの研究チームは、オーロラを利用してガリレオ衛星の大気組成に関する正確な分析方法を考案した。

観測において、2つの重大な要素がある。1つ目は、オーロラの観測装置となる複数の望遠鏡である。W.M.ケック天文台の「HIRES」とアパッチ・ポイント天文台の「ARCES」、もう一つは、大双眼望遠鏡の「PEPSI」である。3つの望遠鏡は、分光器を備え、波長ごとに色分けが可能だった。

二つ目は、観測のタイミングにある。微弱なオーロラ光をHIRESでとらえるべく、今回の研究では木星によるガリレオ衛星の「食現象」を利用した。地球の影に月が入り込む月食と同じように、ガリレオ衛星も木星の影に入り込むタイミングがベストである。衛星が影の中にある間、太陽光の影響が抑制され、ノイズの低減に繋がる。従って、微弱なオーロラ光をとらえやすい。今回の研究では、1998年から2021年までに起きた木星による衛星の食の可視光線領域 (一部は近赤外線を含む) での観測データ20回分が分析された。1回の食では1つの衛星しか観測できない。内訳はイオが10回、エウロパが4回、ガニメデが4回、カリストが2回となる。

※2…ただし、イオ以外の3衛星では悪天候の影響であまり良いデータが得られなかった日が1回ずつ含まれている。これは詳細な分析では除外された。

【▲ 図1: カリストで観測された酸素分子に由来するオーロラ光。カリストのオーロラは今回の観測で初めて検出された。 (Image Credit: Kleer, et.al.) 】
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分析の結果、可視光線の複数の波長でオーロラ光を検出することに成功した。いくつかの波長はガリレオ衛星では初めての検出となった。最大の成果は、カリストでのオーロラの初観測である。

【▲ 図2: イオで生じるオーロラの想像図。ナトリウムに由来する黄色が強く、酸素に由来する緑色や、今回初めて観測されたカリウムに由来する赤色も観察できる。 (Image Credit: Chris Faust) 】
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【▲ 図3: イオの大気中にカリウムが存在することを示すスペクトルデータ。印がある2つの山がカリウムの存在を示すD1線とD2線である。 (Image Credit: Schmidt, et.al. / 印は筆者による加筆) 】
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イオについては、過去の蓄積データーが大きく役立った。天体内部の火山から、塩化カリウムが噴出していることが確実視されていた。実際塩化カリウムを検出できた場所は、衛星イオから距離が離れていた。つまり宇宙空間へと放出されていたのである。今回、オーロラ現象によるカリウム原子が放出する光を観測したことにより、大気中に含まれていたことが明らかになった。

 以下 Astro Arts 2020年10月29日より https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/11601_io

イオの大気濃度は、地球の10億分の1程度、天体表面の赤色や黄色の派手な模様は、硫黄を含むガスが凍りついたことによって、形成された。大気中の二酸化硫黄については、火山から直接供給されているのか、それとも凍りついたガスが太陽光で昇華することにあるのか、結論が出ていなかった。コロナ禍の2020年秋、カリフォルニア工科大学バークレー校の研究チームが、アルマ望遠鏡を使って、観測に挑んだ。イオが木星の影に入るタイミングと、太陽光に当たるタイミングで、電波望遠鏡をむけ、大気中の成分の変化を測定する。イオが木星の影にはいると、太陽光から遮断され、低温になる。二酸化硫黄は、凍り付いて、地表に積もる。木星食のイオの大気中には、火山から直接吐き出された二酸化硫黄のみにとどまる。地球を例にとると、冬の低温下で、空気中の水分が凍りつき、雪となって降り注ぐ。火山の麓では、地熱で温められた水分が蒸発し、気体となって放出されている。木星の影に入ったイオでも、同じように低温下でも火山物質のみ吐き出されているはずである。

写真=上記のサイトより 木星とイオ 
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アルマ望遠鏡が電波で観測したイオの二酸化硫黄の広がり(黄色)。イオの表面画像は、探査機ボイジャー1号とガリレオが撮影。背景の木星の画像は探査機「カッシーニ」が撮影(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), I. de Pater et al.; NRAO/AUI NSF, S. Dagnello; NASA/JPL/Space Science Institute)

 研究チームは、アルマ望遠鏡によって、二酸化硫黄と一酸化硫黄のガスをはっきりと確認し、正確な数値を得た。その結果、イオの大気中の30%から50%は、火山から直接供給されていると、発表した。

 観測結果から、新たな事実が判明した。第3のガスとなる塩化カリウムも発見されたのである。二酸化硫黄と塩化カリウムが含まれていることから、火山の組成が異なることが示唆された。

 イオの火山活動の源は、親惑星木星からの潮汐過熱である。下層大気を調べることにより、形成プロセスが明らかになる。一つの謎を解決すると、新たな疑問が浮かび上がってくる。天文学者は、互いに情報を共有し、少しずつ未知の世界を解明している。

                 <Astro Arts 参考文章 終わり>

さて、話を2023年のガリレオ衛星のオーロラ観測に戻すと、カリストの大気を検出以外にも成果が上がった。衛星イオから木星による食の前後でナトリウム原子の濃度を精密に測定できたことにある。過去の観測記録から食の前後でナトリウムの濃度が急激に変化することは分かっていた。木星の影に入って日光が遮断されたことにより、ナトリウム原子に影響が及ぶとみられていた。今回の観測では、影に入った後の10分間で急激にナトリウム濃度が減少した一方で、影から出た後に元の水準まで回復するには2時間かかることも確認された。非対称性に関して、新説が立てられた。一つ目は、日光の遮断による温度の低下により、ナトリウムの地表への落下が速やかに進行するからである。二つ目は、日光が当たってイオの地表が温まりナトリウムが昇華 (固体から気体への相変化) するまでには、タイムラグがあるからである。イオの大気に含まれていた原子状酸素 (O) についても新たな知見が得られた。木星による食の前後で大きな変化がなく、火山の噴出物とされるナトリウムの供給源とは異なることがわかった。

イオは、3つの衛星と比べて、特異な点があった。他のエウロパ、ガニメデ、カリストとの大気の主成分は、酸素分子 (O2) だったのである。分子とは、いくつかの原子が結びついて、一つにまとまり、電気的に中性を保つ。原子番号2のヘリウムは、「単原子分子」である。水素、酸素、窒素は、二つの原子がくっつく「二原子分子」、水や二酸化炭素は「三原子分子」である。

 エウロパとガニメデでは、微量の原子状酸素も検出されたとはいえ、分子状態の方が占める割合が高い。他にも水分子 (H2O) も含まれていた。大気中の水の濃度が濃い理由について、分かっていない。従来からエウロパには、氷の地殻の下に海があることが確実視され、探査機を使った調査まで検討されている。ガニメデとカリストにも、大気中の水分子の存在から、内海が存在する可能性が示唆された。今回の観測では、水分子量の測定結果については、精度は高くないという。追加観測により、新たな知見を得る必要がある。

以下 SORAE 木星の衛星イオのマグマの温度を推定 塩化ナトリウムと塩化カリウムの比率から 2023年1月20日付け参考記事
https://sorae.info/astronomy/20230120-jupiters-moon-io.html

 既にイオの塩化カリウムと塩化ナトリウムの放出源について迫る研究が行われていた。地球の10億分の1程度の大気中のほとんどは二酸化硫黄である。一酸化硫黄と共に、塩化カリウムと塩化ナトリウムも微量ながら検出された。塩化カリウムは塩化ナトリウムよりも、蒸発温度が200度も低い。下層大気では、塩化カリウムの量が多くなるものの、冷やされて、結晶化し、地表に霜として残る。上層大気では、沸点が高い塩化カリウムの比率が高くなる。2つの物質の比率から、研究者の間でも放出源がマグマ由来と一致した。

 写真=NASAの冥王星探査機ニューホライズンズが2007年2月28日に撮影したイオ。宇宙からも見えるほど大規模な噴出を伴う噴火が3ヶ所で起きており、イオが地球以上に活発な天体であることを示す1つの証拠である。
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 研究において、解決できない難問もあった。大気中のモデル計算によると、塩化カリウムも塩化ナトリウムも、存在できる時間は3時間にとどまる。観測によると、3時間以上も存在していた。観測結果から、火山から断続的に供給されるとの見方が強かった。
 
 そこでカリフォルニア工科大学バークレー校のErin Redwing氏などの研究チームは、火山の分布図と天体内部の温度との相関関係を調べた。

 役だったのは、アルマ望遠鏡による2012年から2018年までの8日にわたる観測資料である。火山の内部の情報を知る方法として、大気の主成分の二酸化硫黄と共に塩化カリウムと塩化ナトリウムの濃度を分析した。

 研究チームが予想外の事実が発覚した。大気中の二酸化硫黄濃度は、塩化カリウムと塩化ナトリウムが放出された際にも落ちなかったのである。少なくとも、2つの物質が供給されれば、大気中の二酸化硫黄濃度のパーセンテージは落ちるはずだった。

 新たな難問を解決するため、二つの仮説が立てられた。一つは、二酸化硫黄の一部は、火山に由来するからである。二酸化硫黄の濃度については、赤道から中緯度の地域(緯度30〜40度まで)の方が濃いことが分かっていた。二酸化硫黄はイオの表面では凍り付き、霜として表面に堆積する。低緯度地域では昼間に二酸化硫黄が蒸発するほどの高温になる。霜の蒸発は火山活動と無縁なことを裏付けられる。

 写真=塩化ナトリウムと塩化カリウムのどちらか、あるいは両方が観測された時の、大雑把な分布図。円の範囲内に供給源となった火山があると推定されるものの、解像度の低さとイオの火山分布の高さから、どの火山であるかを確定することは難しい。ただし、高緯度地域の方が噴出が多いなどの傾向を見ることはできる。 (Image Credit: Redwing, et.al.) 】
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2つ目は、マグマの温度の空間的な偏りだ。塩化カリウムと塩化ナトリウムは、低緯度地域よりも、高緯度地域の方が、より多く検出される。高緯度地域の火山は、イオの深部に由来するかなり高温のマグマが噴出したものと想定される。高緯度地域は、低緯度地域よりも、気温は低い。従って、火山から噴出した二酸化硫黄は直ちに凍り付いて霜となり、昼間でも残り続ける。温度分布からも、高緯度地域は、二酸化硫黄濃度が低くなりやすい。二酸化硫黄が凍りにくい低緯度地域では、マグマの温度が低い。塩化ナトリウムや塩化カリウムの放出が少ないことから、相関関係がないことも矛盾なく説明できる。

 <以上 ORAE 木星の衛星イオのマグマの温度を推定 塩化ナトリウムと塩化カリウムの比率から 2023年1月20日付け参考記事のまとめ 終り>

 サブミリ波望遠鏡群アルマからのデーターと共に、目に見える可視光からのデーターをつき合わせ、イオに対する研究が飛躍的に発展した。ガリレオ衛星のオーロラ観測から、大気の組成を調べることにより、天体の内部について、間接的な手法ながら一歩迫ることができた。望遠鏡での観測データーを積み上げた末に、探査機を送る計画まで進む。海は生命の基である。地球以外の天体から海の存在を確かめ、生命体の痕跡をとらえるまで、地道な研究は続いていく。




 
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