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2023年05月23日21:09
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明治憲法下“治安維持法”で死刑となった共産党員は存在するのか？ 憲さん歴史の真実に肉薄する！
※画像はゾルゲ事件で刑死した尾崎秀実。
彼は1942年に国防保安法、軍機保護法、軍用資源秘密保護法、治安維持法違反などにより起訴され死刑に処されている。
「歴史小説は、史実に忠実であらねばならぬという信念をいだいている」
「･･･以上のように、さまざまな記録を吟味しながら『冬の鷹』(『解体新書』を著した前野良沢を主人公とした小説)を書き、それにつづいて歴史小説を書いた。戦史小説と一貫して変わらぬのは、たとえ小説であるとは言え、史実をゆがめてはならぬ、ということである」
以上は、憲さんが敬愛してやまない歴史小説家吉村昭氏の随筆から拾った言葉である。
憲さん、小説はあまり読まない。
特に村上春樹氏などの虚構小説である。
結局は「それって、あなたの頭の中で空想した話でしょ？」ということになってしまう。
それより、憲さんが知りたい世の中の歴史的事実が山ほどある。
他人の空想になどに構ってなどいられないのである。
まさに「事実は小説より奇なり」なのだ。
なので、歴史小説は例外である。
よく読む。
その中でも吉村昭氏の小説は別格である。
冒頭に述べた彼の歴史小説に対する真摯な態度に憲さんは絶大な信頼をおいている。
参考
↓
憲さん随筆
憲さん文芸論 安政七年三月三日の江戸に降る雪はいつ止んだのか？ 作家吉村昭氏の歴史小説の執筆作法から学ぶ！
https:/
吉村昭氏も随筆に書いている。
「歴史という文字を冠する小説であるかぎり、史実を軽視したり、故意にあらためてしまっていいものなのか、と、歴史小説を書いて日も浅い私は、ひそかなつぶやきをもらすのである」
憲さんも同感である。
そのような小説は「歴史小説」の名には値しない。
それは、虚構小説として虚構の世界の中に身を浸して楽しむ事が好きな有閑者にこそ読んでもらいたい。
以上のように、憲さんにとって歴史的事実とは、その文章の信頼性に関わる極めて重要な問題なのである。
・・・・・・・・・
憲さん現在、以前所属していた地域合同労組の創設者で初代委員長の憲さんも尊敬するA氏(故人)の機関紙コラムをブログ化する作業を受け持ち続けている。
そのコラムは1983年からはじまり30年近くにわたっているが、現在読み返しても読み応えのある極めて貴重な労働運動指導者の後身に向けた証言集である。
しかしこのコラム、時代が過ぎて現在の労働者が読んでも理解しづらい用語等もあるのでその部分は憲さんが注釈で補う作業をしている。
そして、先日その作業をしていて「おや？」と思うフレーズに行き当たった。
それが以下のフレーズである。
「明治憲法の時代、共産党は法律で禁止され、党員には死刑も適用された」
うんにゃ？
憲さんの記憶が確かなら、戦前の死刑も適用された治安維持法で死刑になった日本人はいないはずでは？
憲さん咄嗟にそう思った。
確かに、戦前の日本共産党の党員が逮捕され拷問を受けて獄死したり拷問死した事例は枚挙に暇がない。
参考
↓
治安維持法とはどんな法律だったか？
https:/
しかし、こと死刑判決となるとその適用者はいないのではないか？というのが憲さんの歴史的認識であり、疑問であった。
はて？誰であろう？
そこでいろいろと仮説をたてた。
�‖腟媚�件の一つ、幸徳事件であろうか？
�△發Π譴弔梁腟媚�件の被告難波大助のことであろうか？
��ゾルゲ事件で1944年に死刑にされた尾崎秀実であろうか？
�い修譴箸眄鏝紊了安觧�件など国鉄関係の謀略事件の被告か？
等々･･･
そして、もう一度くだんの文章を読み返してみる。
「明治憲法の時代、共産党は法律で禁止され、党員には死刑も適用された」
まず時期は「明治憲法の時代」であるからその施行されていた時期の1890年から現行憲法が施行される1947年5月までである。
対象は「共産党員」である。
日本共産党の結党は1922年7月からなのでそれ以前は除外される。
この文章、「共産党は法律で禁止され、党員には死刑も適用された」とあり、読みようには「共産党の党員になったりしたら一般的に死刑が適用される法律があった」とも読めるが、少なくとも「共産党禁止法」という法律はなく、対象は主に「治安維持法」と考えられる。
しかし、治安維持法は共産党のみを対象とした法律ではなかった。
参考
↓
【治安維持法】
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治安維持法は1925年に普通選挙法との「飴と鞭」の抱き合わせで成立したまさに「結社弾圧法」「民衆弾圧法」であり、当初死刑規定がなかったが、1928年に改悪され死刑が追加された。
その条文が以下である。
「国体ヲ変革スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ従事シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ五年以上ノ懲役若ハ禁錮」
当然これは主に日本共産党を標的にしたものではあるが、その他の無産政党や、自由主義的な研究・言論や、宗教団体の教義・信条さえも「目的遂行」につながるとされ、国民全体が弾圧されている。
参考
↓
【無産政党】
https:/
そこで、憲さんの「仮説」を検証していく。
�々�徳事件の被告は？
幸徳秋水はじめ大逆事件(幸徳事件)は1910年に発覚した事件であり、この時まだ日本共産党は結党していない。
幸徳秋水自身も共産主義者というよりは無政府主義者というイメージが強い。
この事件で幸徳秋水らは死刑になっている。
参考
↓
【幸徳事件】
https:/
よって、除外される。
��虎ノ門事件の被告難波大助は？
虎ノ門事件とは、1923年12月27日に、東京の虎ノ門外で、皇太子・摂政宮裕仁親王（後の昭和天皇）が無政府主義者の難波大助から狙撃を受けた暗殺未遂事件である。
難波大助はその後死刑になっている。
参考
↓
【虎ノ門事件】
https:/
【難波大助】
https:/
この事件の年、日本共産党は結党していたが難波大助義士が日本共産党に入党していたというのは聞かない。
よって除外されるであろう。
��ゾルゲ事件の尾崎秀実は？
彼は共産主義者であったのは間違いないが、少なくとも日本共産党員ではないようである。
彼はゾルゲ諜報団に属していたのであるが、どこかの国の共産党に属していたかは憲さんはわからない。
直接ソ連共産党と関わっていたのであろうか？
なので極めてグレーである。
参考
↓
【ゾルゲ事件】
https:/
ちなみにゾルゲや尾崎らは1942年に国防保安法、軍機保護法、軍用資源秘密保護法、治安維持法違反などにより起訴され死刑に処されている。
�い任蓮∋安觧�件はどうだ？
三鷹事件は、1949年7月15日に、中央本線三鷹駅構内で起きた無人列車暴走事件であり、こらにより6名が死亡する大惨事となった。
捜査当局は、共産革命を狙う政治的な共同謀議による犯行だとして、国鉄労働組合（国労）の組合員の日本共産党員10人と非共産党員であった元運転士の竹内景助氏を逮捕した。
その後これは竹内氏の単独犯という説を裁判所が認定し、死刑が言い渡されている。
(その後竹内氏は病気で獄死した)
参考
↓
【三鷹事件】
https:/
しかし、これはそもそも1949年の事件で現行憲法下での事件であり、死刑判決を受けた竹内氏は日本共産党員ではない。
ということで除外される。
はて？
では一体どういうことであろうか？
そこで憲さんはあれこれと人脈を使って聞いてみた。
するとこういう意見が届けられた。
以下
「治安維持法での死刑適用は朝鮮人民だけらしい」
「植民地統治下の朝鮮では、独立活動家には59人に死刑判決が下されているようです」
「治安維持法が専ら対象にしたのは、国内では宗教団体であり、朝鮮・台湾の反日勢力だった。そして、死刑が適用され執行されたのも、植民地だけ」
Σ(￣□￣;)ハッ！
本当か？
これは、憲さん不覚にも知らなかった！
そこで調べてみた！
あった！
治安維持法で多くの朝鮮の人が死刑 本当ですか？
https:/
そこにはこう書いてある。
同法(治安維持法)違反で逮捕され、虐殺・獄中死したのは本国では、約2000人ですが、死刑判決はでていません。
しかし、朝鮮では、「28年、斉藤実総督狙撃事件で２人に死刑判決」「30年、5・30共産党事件で22人に死刑判決」「33年、朝鮮革命党員徐元俊事件で１人に死刑判決」「36年、間島共産党事件で被告18人に死刑執行」「37年、恵山事件で５人に死刑判決」「41年、治安維持法で５人に死刑判決（第１審）」などの例があります。
そこでさらに「間島共産党事件」を調べてみた。
こうある。
間島共産党暴動は、1930年に満州の間島で発生した中国共産党の支援を受けた朝鮮人独立運動勢力による武装蜂起のこと。
1930年5月30日、彼らは延吉・竜井など間島の主要都市や鉄道沿線で一斉に蜂起し、日本領事館などの官公庁や鉄道施設・電灯会社などを襲撃した。続いて7月31日にも敦化を中心として暴動が再燃、以後1年以上にわたって断続的な暴動が間島各地で繰り広げられた。大日本帝国の軍部・警察は直ちに間島に入って鎮圧を開始、奉天軍閥も鎮圧に動いた。その結果、日本側によって7,000名が検挙されて700名余りが起訴、うち周現甲・李東鮮ら22名が治安維持法や刑法などによって死刑とされた。
参考
↓
【間島共産党事件】
https:/
Σ(￣□￣;)ハッ！
おそらく彼らは朝鮮共産党、もしくは中国共産党の党員であろう。
余談だが、この事件について金日成は1931年、著作「極左冒険主義路線を排撃し、革命的組織路線を貫徹しよう」で、「5.30暴動 (間島共産党暴動)」を「極左冒険主義（客観的な情勢を無視して目的を実現しようとする急進主義や過激主義）的」と批判しているそうである。
唖然！
で、当初の文章をもう一度振り返る。
「明治憲法の時代、共産党は法律で禁止され、党員には死刑も適用された」
確かに「共産党」とはあるが「日本共産党」とは書いていない！
なのでこうである。
「大日本帝国憲法下の時代、日本の治安維持法で死刑判決を受けて死刑にされた日本共産党員以外のおそらく共産党員はいる！」
が正解である。
そして、憲さん念には念を入れて裏付けをとった。
代々木の日本共産党中央委員会に問い合わせてみた。
すると、資料室の室長のオカさんという男性が対応してくれた。
声の調子から70歳前後の方と推察した。
簡潔にいうと、日本共産党員で死刑判決を受けたり、死刑の執行を受けた人は結党以来今までいない。というのが日本共産党の公式見解だそうだ。
治安維持法で獄死したり拷問死した人は多数いたが、こと死刑判決は受けていないそうである。
また、��のゾルゲ事件の尾崎秀実氏も�い了安觧�件の竹内景助氏も日本共産党員ではないそうである。
ちなみに憲さん、「治安維持法で朝鮮人が大量に死刑になっていますね？」と尋ねたら･･･
「それは知りませんでした」と言われていたが、同党のホームページにその旨の記載があり(前出参考)これを聞いてちょっと頼りなげに思えてしまった。
あと、これも余談だが1929年に右翼に刺殺された「山宣」こと山本宣治は生前労働農民党の衆議院議員であったが、死後に日本共産党が党員として列したことなどを話しておられたが、そのエピソードも知らなかったが、何でそんなことをしたのかは興味深いところである。
参考
↓
【山本宣治】
https:/
(´艸`)くすくす
話を戻す。
ということで、「明治憲法の時代、共産党は法律で禁止され、党員には死刑も適用された」というフレーズは厳密にいえば間違いではない。
憲さんが結論付けたように
「大日本帝国憲法下の時代、日本の治安維持法で死刑判決を受けて死刑にされた日本共産党員以外の共産党員はおそらくいる」であろう。
しかし、これが筆者A氏の言いたいことではないであろう。
ということでこのフレーズは大変誤読しやすい文章ではないかと憲さんは考える。
なので以下のようなことを筆者は言いたかったのであろうと憲さんは推察する。
明治憲法の時代、共産党は結党を法律で禁止され、その法律はそれを犯した党員には死刑も適用する内容であった。また、日本ではその法律で死刑になった者はいなかったが多くの共産主義者等が逮捕され獄中で拷問を受けて殺された。
さらに、日本の植民地下の朝鮮半島では実際にその法律により死刑になった朝鮮人共産主義者もいた。
以上が分かりやすい言い回しであろう。
しかし、字数の限られたコラムでここまで表現するのは難しいので、原文の表現になったと思われる。
・・・・・・・・・
文章には魂が宿ると憲さんは信じている。
このA氏のコラムも短い表現の中に彼の魂が込められていると確信している。
なので、出来るだけ誤読をしないように読まなければなるまい。
憲さんはA氏亡き今、その手伝いを微力ではあるがしたいだけである。
どーよっ！
どーなのよっ？
※追伸、治安維持法で日本人の刑死者はいないのに、朝鮮人には刑死者が大量にいるという歴史的事実は憲さん知らなかったが、何か歴史的理由があるのだろう。
それについても調べてみたいとこの随筆を執筆して思った次第である。
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