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2023年05月03日08:09

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「セールスガールの考現学」感想

 これは、ひとりの女性の成長して行く姿を描くモンゴル映画。
 監督は、現代のモンゴル映画界を代表するとされるセンゲドルジ・ジャンチブドルジ。主演のバヤルツェツェグ・バヤルジャルガルは、本作で大阪アジアン映画祭で薬師真珠賞を受賞している。

 モンゴルの首都ウランバートルの工科大学で、原子力工学を学ぶ大学生サロールは、怪我をした大学同期生の代理としてアルバイトで働く事を頼まれる。高給で簡単な仕事だと説かれ、サロールは一ヶ月だけ働くことに。
 だが、そのバイト先とは、アダルトショップの店番だった。大人のオモチャが所狭しと並ぶ怪しげな店で、配達を頼まれる事もしばしばだ。ショップのオーナーは、高級マンションに暮らす謎めいた女性カティアで、サロールは一日の終わりに売上金をカティアのマンションに届けに通ううち、いつしか2人の間には不思議な友情が芽生えて……

 これは、ひとりの女性が“自分らしく生きる”までを描くもの。舞台設定が異色ではあるものの、女性と言うか若者の自立を描くと言う点において、これは普遍的且つ真っ当な青春映画であり、これは多くの人に受入れられるものと思う。

 モンゴル、と言えば、草原と羊のイメージだけど(勿論、この映画にも草原だけは少し出て来るけど)、都市部の人々の暮らしは、最早、我々とあまり差がない、と言う事をあらためて思わされるし、それを突き抜けてアダルトショップにまで行ってしまうのは、確かにインパクトがある。
 そして、それ以上に観客の目を惹き、魅了するのが主人公・サロールを演じたバヤルツェツェグ・バヤルジャルガル。まるで童女のようなまん丸で無邪気な瞳が印象的で、映画冒頭はすっぴんで眉も整えず、うっすらと髭さえ生やしている(尚、映画では髭はメイクでつけた)。まるで、中学生のような感じだけど、身体の方は結構グラマラスで、本作のイメージカットにもなってるボンテージ衣装姿は、その絶妙なミスマッチ(こんな娘が、と言う感じ)に魅了される。

 物語としては、先に述べたように青春映画で、親に言われるまま、就職に有利だからと学びたくもない原子力工学を学んでいた少女が、その仕事からも明かなように性にも、そして人生にも自由奔放なカティアと言う人生の先輩を知るにつれ、女性として、人間として自立していく様を描くもの。
 子供のようだったサロールが大人の女性として、正に花開く様は見物ではあるし、クライマックスでは大胆なヌードを披露。その後の決意と合わせ、エロスからコミカル、そして感動と、様々な情感揺さぶるエンディングに辿り着くのだ。
 演出や映画の構成など、洗練されていない部分もあるし、全体的にテンポがゆったり、と言うか、ちょっともたつく感じもするが、それも併せて、モンゴル映画の味と言う事かもしれない。
 爽やかなラストシーンには、草原を吹き抜ける風を感じさせる、いい映画だ。
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