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2023年03月12日19:07
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あなたは東京の空襲で犠牲になった米兵がいるのを知っていますか？−東京陸軍刑務所捕虜焼死事件−戦争の絶対悪について考える
※画像は2023年3月9日東京新聞朝刊記事
千葉県野田市の旧福田村というと今からちょうど100年前の1923年の関東大震災時に発生した朝鮮人虐殺の最中に起こった日本人が虐殺された場所として有名である。
参考
↓
憲さん随筆
九月、利根川のほとりで 関東大震災での知られざる悲劇 福田村事件
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実は、この土地で太平洋戦争末期にもうひとつ忌々しい事件が起きている。
それが1945年3月10日に起きた米軍の爆撃機B29の撃墜事件である。
この日千葉県東葛飾郡福田村（現・野田市）下三ケ尾にB29が墜落した。
そう、1945年3月10日というと11万5千人以上もの死者を出した人類史上最悪の無差別殺人空襲爆撃である東京大空襲の日である。
参考
↓
【東京大空襲】
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この、東京空襲を終えたB29の編隊の最後尾の１機が被弾して火を吹き、福田村の上空を旋回して空中分解、下三ケ尾の駒形神社周辺に落下して激しく燃えた。
この事故で機長など10人が墜落死。現場付近に埋葬された。
生き残った2人が捕虜になり、柏憲兵分隊から東京憲兵隊へ送られたが、１人は重傷により治療の見込みなしとして軍医に毒殺された。
もう１人は東京陸軍刑務所に収容中、5月26日の空襲による火災で死亡している。
このように3月10日の東京大空襲には米軍機が325機が東京に飛来しているがその内14機が高射砲等により撃墜されているのだ。
憲さん、戦跡マニアで特に千葉県の戦跡やこのような戦争の傷跡のある場所には結構詳しいのだが、この事実は知らなかった。
ことにB29の撃墜された乗組員の行く末として悲惨だったのは遠藤周作の小説『海と毒薬』で有名な九州大学における生体解剖実験であろう。
憲さんこれについては徹底的に調べあげて随筆に書いている。
こちら
↓
憲さん随筆アーカイブス 『海と毒薬』の真実 史実としての“九州大学生体解剖事件”
https:/
このように、憲さんは戦争を憎悪する故に、身近な戦争についての歴史を徹底的に調べるのを趣味としている。
戦争で死んでいくのは、敵対するそれぞれの国家の権力者ではなく、その国に生まれ育った名もなき兵士であり元は一般市民・労働者なのである。
彼らがどのような状況で戦い、どう死んでいったのか、戦争に反対する意味でもそれを知らなくてはならないと思っている。
そこに敵も味方もない。
あるのはただただ殺し合いに駆り出され無惨に死んでいった、普通の人々の無念だけである。
それを知る事は大変重要であると憲さんは思っている。
だからこうして必死になって調べているのだ。
その3月10日の前日の9日に東京新聞社会面に憲さんの興味をそそる記事が掲載された。
それがこれである！
↓
歴史に埋もれた悲しい死…捕虜で収容中に焼死したB29搭乗員 東京大空襲の追悼行事で初めて読み上げへ
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その記事にこうあった。
以下、引用する。
1945年の東京での空襲の犠牲者に、捕虜として収容されていた米軍のB29爆撃機の搭乗員がいたことはあまり知られていない。
(中略)
戦争捕虜を研究する日本の市民団体「POW研究会」などによると、62人は搭乗機が関東周辺で撃墜されるなどして、東京陸軍刑務所（現在の渋谷区宇田川町付近）に収容されていた搭乗員。同刑務所は45年5月25日夜の「山の手大空襲」で炎上、全員が焼死したという。
以上、引用おわり。
Σ(￣□￣;)ハッ！
この事実は確かに憲さんも知らなかった！
“東京陸軍刑務所”とは、現在の渋谷合同庁舎で、二・二六事件慰霊像があるところである。
参考
↓
【二・二六事件慰霊像】
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上記の福田村で捕虜になった米軍の搭乗員の「もう１人は東京陸軍刑務所に収容中、5月26日の空襲による火災で死亡している」という記述はまさにこのことを言っているのである。
すなわち3月10日の東京下町大空襲を仕掛けた米軍の撃墜されたB29の乗組員の捕虜が、同じ米軍の今度は5月26日の東京山の手大空襲により同胞の攻撃によって虐殺されているのである。
なんとも不条理な！
参考
↓
【東京陸軍刑務所飛行士焼死事件】
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この事件についての横浜軍事法廷におけるBC級戦犯裁判で日本側は、米兵全員焼死の要因として、アメリカ将兵が収容されていたのが一番奥のブロックだったため救出が遅れたこと、看守は留置場の扉を開いてアメリカ将兵のうち23名を牢から出したが、塀に阻まれて逃げ場を失い結局焼死したもので、不可抗力だと主張したそうである。
絶対嘘だ！
これはあくまでも憲さんの推測であるが、日本側が意図的に殺したに違いない。
こんなにきれいに日本の囚人と米兵捕虜がかたや全員生還、かたや全員焼死などあり得るのだろうか？
そもそも、時の権力者で戦争指導者の東条英機に徹底的に戦陣訓で「生きて虜囚の辱（はずかしめ）を受けず」と洗脳された連中は米兵の捕虜など「死んでしまえ！」と思っていたに違いない！
参考
↓
【戦陣訓】
https:/
間違いない！
そして、記事ではこの犠牲となった搭乗員を慰霊するために追悼行事で名前を読み上げることになり、その名前を読み上げる人に米国出身の男性が当たることを報じている。
そして、この男性の父親の知人にやはりこの東京陸軍刑務所で犠牲になった人がいるのだという。
以下、記事引用
ブルームさんの父親は第2次世界大戦中、欧州に展開した米陸軍航空部のカメラマンや基地広報員を務めた。一昨年、父の上官の親類が捕虜となり東京陸軍刑務所で焼死したことを知った。当時の状況を詳しく知ろうと、米戦死者遺族のウェブサイトを活用したり、POWの協力を得たりして調べてきた。
(中略)
上官の親類の搭乗機は45年4月、佐倉市から遠くない千葉県市原市内に墜落したと分かり、現地を訪ねて地域誌などから深掘り。東京の憲兵隊へ送られた状況や、11人の搭乗員のうち10代の1人が隣の同県大多喜町で現地の日本軍らによって殺害された詳しいやりとりが新たに判明した。
以上、引用おわり。
Σ(￣□￣;)ハッ！
「千葉県市原市内に墜落した」
まさか、あの「B29搭乗員慰霊碑」か？と憲さん調べた！
参考
↓
木更津の山中にあるB29搭乗員慰霊碑
https:/
おっと、これは木更津山中なので市原とはちょっと場所が違う。
上記の木更津山中に撃墜したB29の乗組員は1945年5月29日の横浜空襲の帰還の際に墜落して乗組員全員が死亡している。
なので、この市原に墜落したB29はどこに落ちたのか？
憲さん俄然興味がわいてきた！
そこで調べたのだが、その強力な武器となったのが記事中にある「POW研究会」のサイトである！
こちら
↓
「POW研究会」
http://
この研究会、日本におけるPrisoner of War＝戦争捕虜の研究会なのだが、大変丁寧に調査されており、憲さんもビックリした！
これは最近出来たサイトなのであろうか？
以前やはりB29撃墜事件を調べたときは見かけなかったのだが･･･
それにしても恐れ入った！
ほとんどの太平洋戦争における米軍の戦争捕虜が網羅されている！
そして、上記の市原で墜落したB29搭乗員の事件も書かれている。
それが以下である。
≪千葉県紙敷村事件≫
(前略)
１９４５年４月１５〜１６日の川崎空襲時、１機の２９が千葉県市原郡白鳥村（現・市原市）に墜落し、搭乗員１１人のうち２人は墜落死したが、９人はパラシュート降下して捕虜になった。
このうちＭａｒｖｉｎ Ｇ．ＧＲＥＥＮＳＰＡＮ伍長は夷隅郡紙敷村（現・大多喜町）に降下して、１６日昼過ぎに警防団員に捕まり、手を縛られて湯倉付近まで連行され、西畑小学校に駐屯していた陸軍２０３部隊に引き渡された。この時、兵士と市民がＧＲＥＥＮＳＰＡＮに暴行を加えたので、彼は縛られていた両手を解き放ち、１００メートルほどの距離を逃亡した。兵士たちが追跡し、田村一平少尉の命令で奥光政上等兵と南出多七上等兵が彼を斬殺した。
以上、引用おわり。
大変克明にかつ簡潔に調査報告がされているのだ。
千葉県の郷土史マニアの憲さん、この事件も知らなかった！
結局、憲さんは何にも知らないのである！
(´Д`)=*ハァ〜
ということで、この「POW研究会」のサイトは大変有効であることを是非紹介しておきたい！
ちなみに、1945年3月10日東京大空襲の米軍側損失も全機が網羅されている。
せっかくなので、長いが全て採録しておく。(憲さん若干加工)
以下
3月10日東京大空襲の米軍側損失
（注）作戦任務第４０号（目標：東京市街地、第７３・３１３・３１４航空団から出撃３２５機、損失１４機）
�。贈横后■隠或幼突郢燹�1名捕虜
１９４５年３月１０日 東京都荒川区尾久町の旭電化工業の工場
Ｂ２９（機体番号４２−６５３０１、第３１４航空団２９爆撃群所属）が墜落。
機長のＬｕｃａｓ Ｍ．ＮＥＡＳ大尉など１０人が墜落死。尾久町の華蔵院の薬師堂墓地に埋葬。参考人は華蔵院住職。
Ｊａｍｅｓ Ｍ．ＰＡＴＩＴＴ伍長がパラシュート降下して捕虜になり、東京憲兵隊へ送られた後、東京陸軍刑務所に収容されたが、５月２６日の空襲による火災で死亡。氏名不詳のもう１人が捕虜になった可能性があるが、確証は得られない。
�■贈横后■隠運輿完�死亡
１９４５年３月１０日 東京都城東区（現・江東区）南砂町の海岸の砂町下水処理場付近
Ｂ２９（機体番号４４−６９６９１、第３１４航空団２９爆撃群所属）が墜落。飛行機は貯木場に浮遊する木材の上に落ちて炎上。
（注）上記作戦の損失機１４機のうちの１機
機長のＷａｒｒｅｎ Ｆ. ＪＯＨＮＳＯＮ中尉など１１人全員死亡。
戦後、米軍は飛行機の残骸の一部と１遺体を回収したが、身元は特定できなかった。
��Ｂ２９、１０人が墜落死、2名捕虜、その後死亡
１９４５年３月１０日 千葉県東葛飾郡福田村（現・野田市）下三ケ尾
Ｂ２９（機体番号４２−９３９０５、第３１４航空団２９爆撃群所属）が墜落。東京空襲を終えたＢ２９の編隊の最後尾の１機が被弾して火を吹き、村の上空を旋回して空中分解、駒形神社周辺に落下して激しく燃えた。
（注）上記作戦の損失機１４機のうちの１機
機長のＪｏｈｎ Ｌ．ＭＵＳＳＥＲ大尉など１０人が墜落死。現場付近に埋葬。参考人は福田村村長。
Ｅｕｇｉｎｅ Ａ．ＨＯＭＹＡＫ少尉が柏飛行場付近で、Ｊａｃｋ Ｄ．ＫＲＯＮＥ伍長が千葉県葛飾郡田中村（現・柏市）付近で捕虜になり、柏憲兵分隊から東京憲兵隊へ送られたが、ＫＲＯＮＥ伍長は重傷により治療の見込みなしとして軍医に毒殺された。ＨＯＭＹＡＫ少尉は東京陸軍刑務所に収容中、５月２６日の空襲による火災で死亡。
�ぃ贈横后■洪佑�墜落死、3名捕虜、その後死亡
１９４５年３月１０日午前１時頃 茨城県筑波郡板橋村（現・つくばみらい市伊那町）大字狸穴の山林
Ｂ２９（機体番号４４−６９６８６、ニックネーム 「ＴＡＬＬ ＩＮ ＴＨＥ ＳＡＤＤＬＥ」、第３１４航空団１９爆撃群所属）が墜落。飛行機は火を吹きながら落下、山火事を引き起こした。
（注）上記作戦の損失機１４機のうちの１機
機長のＧｏｒｄｏｎ Ｌ．ＭＵＳＴＥＲ大尉など９人が墜落死、現場付近に埋葬。
３人が警防団に捕まり、土浦憲兵分隊員がトラックで東京憲兵隊へ送ったが、このうちＬｅｌａｎｄ Ｐ．ＦＩＳＨＢＡＣＫ少尉は重傷を負っており、東京憲兵隊では東部軍軍医部へ連絡して入院を求めたが、空襲下の混乱もあって、引き取りを拒否された。その間、東部軍から軍医の園部六郎中尉が診察に来たが、助かる見込みなしとして治療をせずに帰った。結局、東部軍が身柄を引き取ることになったが、処置方法に困り、一戸公哉中佐の指令で翌翌日に東部軍兵士３人と東京憲兵隊の本川貞少尉及び桑原政雄准尉らが付き添って、近くの東京外語学校（現・東京外国語大学）の構内へ連行し、防空壕の中で彼を斬首し、ゴミと砂礫の中に埋めた。
戦後の戦犯裁判で、一戸中佐と本川少尉は死刑。斬首と埋葬を手助けした桑原政雄准尉は無期懲役。ＦＩＳＨＢＡＣＫの治療を拒否した園部軍医中尉は懲役２年などの刑を受けた。
Ｌａｖｅｒｎｅ Ｊ．ＺＥＨＬＥＲ伍長とＧｌｅｎｎ Ｈ．ＨＯＤＡＫ伍長は、東京陸軍刑務所に収容中に５月２６日の空襲による火災で死亡。
�ィ贈横后■隠運佑�墜落死、1名捕虜
１９４５年３月１０日午前１時頃 埼玉県川口市青木町２丁目、江戸袋、芝川公園
Ｂ２９（機体番号４２−６３５６９、第３１４航空団１９ 爆撃群所属）が分解して墜落。
（注）上記作戦の損失機１４機のうちの１機
飛行機は、７〜８機編隊で東京方面から飛来し、高度２０００メートル位で高射砲弾を受けて３つに分解して墜落した。
機長のＲｏｂｅｒｔ Ｊ．ＡＵＥＲ中尉など１１人が墜落死。川口市青木町５丁目の西方寺と川口市江戸袋の東光院墓地に遺体を埋葬。
Ｗａｌｔｅｒ Ｃ．ＧＲＵＢＢ伍長がパラシュート降下して捕虜になり、東京憲兵隊へ送られた後、東京陸軍刑務所に収容されたが、５月２６日の空襲による火災で死亡。 もう１人が捕虜になった可能性もあるが確認できない。
�ΝЛ┌贈横�✕3機
１９４５年３月１０日 宮城県刈田郡七ケ宿村不忘山の山腹
以下の３機のＢ２９が墜落。東京空襲へ向かって悪天候に巻き込まれた。 ⇒東北軍管区の項参照
（注）上記作戦の損失機１４機のうちの３機
Ｂ２９（機体番号４２−６５３１０、第３１４航空団１９爆撃群所属）
Ｂ２９（機体番号４２−６３５６４、第３１４航空団２９爆撃群所属）
Ｂ２９（機体番号４４−６９７４７、第７３航空団４９８爆撃群所属）
��〜��Ｂ２９✕6機
１９４５年３月１０日 東京とマリアナ基地の間
以下の６機のＢ２９が失われた。うち４機は東京空襲で損傷を受けて太平洋上に不時着。
（注）上記作戦の損失機１４機のうちの６機
Ｂ２９（機体番号４２−６５２９８、第３１３航空団９爆撃群所属）
Ｂ２９（機体番号４２−２４８７５、第３１３航空団９爆撃群所属）
Ｂ２９（機体番号４２−６５３１１、第３１４航空団２９爆撃群所属）
機長のＧｉｌｂｅｒｔ Ｍ．ＬＩＧＨＴＥ中尉など１１人全員米軍が救助。
Ｂ２９（機体番号４２−６３４８２、第３１３航空団５０５爆撃群所属）
Ｂ２９（機体番号４４−６９７０３、第３１４航空団１９爆撃群所属）
Ｂ２９（機体番号不明、所属不明） 消息不明
搭乗員のうち４０人は米軍が救助。１機がマリアナ基地に帰着して毀損と判定された。
以上
すごい調査力である！
恐れ入った！
これが全国レベルで調べあげられているのだ。
そこでわかるのが、結構米軍機も日本側に撃ち落とされているという事実である。
しかし、これらもいまや歴史の闇に埋もれてしまっているのだ。
そして、さらにこのサイトを読み込んだところ、憲さんが以前疑問を持っていたことが氷解したのでこれも紹介しておく。
それが前述した「九州大学生体解剖実験」の犠牲になった8人の米兵は誰なのか？という疑問である。
それが以前書いたこちらの随筆である！
憲さん随筆アーカイブス 消えた墓碑銘 『汚名 「九大生体解剖事件」の真相』を読んで
https:/
この随筆で憲さんこう結論付けている。
以下、引用
そこで、私の真相の推理は以下の通りです。
1945年5月5日(大分と熊本の山間)に墜落した当該機(B29)に搭乗していた乗組員は11人、そして現地で死亡した者が４人、残り７人が捕虜になり、機長１人が東京に送られ生還した残り６人は九大生体解剖事件の犠牲となったが、九大生体解剖事件の被害者は８名である。
ということは残り２名は当該機以外の米兵捕虜の可能性が高いのではと。
以上、引用おわり。
するとこの「POW研究会」のサイトではあっさりこう調査してくれていました！
以下、引用
≪西部軍事件≫
（Ａ）九州大学医学部生体解剖事件
(中略)
西部軍司令部（福岡城内）に留置されていたＢ２９飛行士のうち８人が、１９４５年５月１７日、２２日、２５日、６月２日（日時は推定）の４回にわたって、九州大学医学部で、肺の摘出手術、海水を代用血液とする手術などの生体実験の材料とされて殺された。犠牲になった米兵のうち６人は、５月５日に熊本県上空で日本海軍の戦闘機の体当たり攻撃を受け、大分県竹田市に墜落したＢ２９の搭乗員である。この墜落機は搭乗員１１人のうち７人がパラシュート降下し捕らえられたが、機長のワトキンスは情報収集のため東京へ送られ、残りの６人が西部軍司令部に留置されていたものである。その他の２人は、５月頃に大分県や宮崎県で捕獲された別のＢ２９の搭乗員と推定される。
以上！
どーよっ！
どーなのよっ？
憲さんの推理、やっぱり当たっていたでしょ！
さすが、憲さん！
憲さん、戦史研究家になろうかしら
この、サイト是非皆さんにも読んでもらいたい。
報告なので淡々と綴られてはいるが、そこには「戦争の狂気」がぎっしりと詰まっている。
これを読むだけでも、戦争など絶対に起こしてはならないと心に誓うはずである。
空襲で爆撃に晒されて殺された市井の人々も、その空襲の際に撃墜され死んでいった米兵、そして捕虜となって生体解剖された兵士たちも、それぞれに名前があり､家族があり愛する人がいてそれまでの生活があったのだ。
しかしその命をこのような狂気によって不本意に絶たれてしまうことをどうして許せるか？
「戦争」は絶対悪である。
この世から戦争をなくすために私たちは日々考え、行動していかなくてはならない。
憲さんはそう、この記事を読んで固く誓った次第である。
どーよっ！
どーなのよっ？
※以下、くだんの記事全文採録
歴史に埋もれた悲しい死…捕虜で収容中に焼死したB29搭乗員 東京大空襲の追悼行事で初めて読み上げへ
2023年3月9日
1945年の東京での空襲の犠牲者に、捕虜として収容されていた米軍のB29爆撃機の搭乗員がいたことはあまり知られていない。東京大空襲・戦災資料センター（東京都江東区）で9日にある犠牲者一人一人の名を読み上げる追悼行事で今年、初めて搭乗員62人の名が読まれる。「戦争で亡くなった同じ悲しい死」と思いを共有する。（井上靖史）
米国の戦死者遺族が作ったウェブサイトを見るバートン・ブルームさん＝千葉県佐倉市で
◆「山の手大空襲」で炎上、全員が焼死
戦争捕虜を研究する日本の市民団体「POW研究会」などによると、62人は搭乗機が関東周辺で撃墜されるなどして、東京陸軍刑務所（現在の渋谷区宇田川町付近）に収容されていた搭乗員。同刑務所は45年5月25日夜の「山の手大空襲」で炎上、全員が焼死したという。日本人収容者約400人は無事救出されており、当時の所長や看守長ら5人は戦後のBC級戦犯裁判で死刑（いずれも後に懲役に減刑）判決を受けた。
犠牲となった搭乗員の名を読み上げるのは、米国出身で千葉県佐倉市のバートン・ブルームさん（72）。79年に来日し、外資系や日本の大手広告会社に勤務してきた。妻は日本人という。
ブルームさんの父親は第2次世界大戦中、欧州に展開した米陸軍航空部のカメラマンや基地広報員を務めた。一昨年、父の上官の親類が捕虜となり東京陸軍刑務所で焼死したことを知った。当時の状況を詳しく知ろうと、米戦死者遺族のウェブサイトを活用したり、POWの協力を得たりして調べてきた。
◆「戦争の愚かさ、何としても回避したい」
米国資料を基にバートンさんがＰＯＷ研究会報に載せた空襲後の東京陸軍刑務所とされる写真。終戦後の１９４５年９月ごろに撮影されたとみられる
上官の親類の搭乗機は45年4月、佐倉市から遠くない千葉県市原市内に墜落したと分かり、現地を訪ねて地域誌などから深掘り。東京の憲兵隊へ送られた状況や、11人の搭乗員のうち10代の1人が隣の同県大多喜町で現地の日本軍らによって殺害された詳しいやりとりが新たに判明した。昨年、POW会報に13ページに及ぶ報告書を寄せた。
B29は千葉県のほか茨城や神奈川、埼玉県などで墜落している。搭乗員は無差別爆撃に携わったとして日本側に戦争犯罪人とみなされ、一般捕虜とは別に収容されていた。追悼には複雑な思いを抱く日本人がいる可能性もある。ブルームさんは「空襲で亡くなった方々を追悼し記憶することで、後世の人々が戦争の愚かさを何としても回避できるようにしたい」と話す。
米軍捕虜の犠牲者名の読み上げに参加するバートン・ブルームさん＝千葉県佐倉市で
読み上げの追悼は日本の犠牲者遺族らでつくる実行委員会が、一人一人の命の重さをかみしめようと一昨年から開始。最初は410人分だったが今年は2000人に拡大した。午前10時半〜午後5時で、会場の様子をオンライン中継もする。視聴希望者はセンターのホームページから申し込む。
以上
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