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2023年03月12日06:53
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憲さん随筆アーカイブス 消えた墓碑銘 『汚名 「九大生体解剖事件」の真相』を読んで
※この随筆は2018年2月8日に執筆したものに加筆修正しました。
※画像は東京新聞に載った写真とキャプション
今月21日(2018年1月)の東京新聞「こちら特報部」に「米兵生体解剖焼きつく記憶」と題して、その解剖実験に立ち会った医師、東野利夫さんの記事を読んで憲さん固まってしまった。
と、憲さん随筆で書いている。
参考
↓
憲さん随筆アーカイブス 『海と毒薬』の真実 史実としての“九州大学生体解剖事件”
https:/
この随筆の“追伸”に、憲さんこうも書いている。
以下、引用
追伸・ただ、ここで憲さん疑問なのはこのB29の搭乗員は12人。撃墜でパラシュートが開かず死亡した兵士が３名。残り9名のうち、現地で住民に殺されたり自決した兵士が3名ということは、生存者は6名、うち機長1名は東京に送られ、生き残ったので、九大に送られたのは５名のはずである。
事実、ウィキペディアの「九州大学生体解剖事件」の項にある事件の被害者の中にはこの搭乗員の記念写真にはいない人名が３名入っている。
しかし、どの資料にもこの九州大学生体解剖事件の被害者は８名とあり、同じB29の乗組員捕虜とある。
謎だ。
現在、憲さん資料を集めて調査中です。
それが、この事件の被害者へのせめてもの供養になれば･･･。
合掌。
以上、引用おわり。
そこで、憲さんそれから猛烈にこの問題について調査して、東京新聞に送った“調査報告書”が以下である。
(東京新聞からは何の音沙汰もなかったが･･･)
ということで、以下東京新聞に送った憲さんの意見書です。
憲さん、歴史の事実をみつめるとこれを書かざるを得ない気持ちになりました。
大変マニアックで長文ですが、興味のあるかたは是非どうぞ。
以下
前略、東京新聞「こちら特報部」御中
メールで失礼します。
いつも貴紙を楽しく拝読させていただいております。
さて、1月21日朝刊「こちら特報部」の「米兵生体解剖焼きつく記憶」の記事も大変興味深く読ませていただきました。
私は貴紙で興味深い記事を見つけた時はその記事を基に随筆風に加工して友人などに紹介しているのですが、この記事もみんなに紹介しようと、いろいろと「九大生体解剖事件」を調べているうちに根本的な疑問がわいてきました。
それは、ズバリあの1945年5月5日に大分と熊本の山間に墜落したB29(以下、「当該機」と呼びます)に乗っていた搭乗員は誰で、九大で生体解剖されたのは誰かといった、事件の本質的な疑問です。
私が得られた資料は貴紙の記事と、図書館でかりた東野さんの著書、「汚名、『九大生体解剖事件』の真相」と比較的最近発行された、事件の真相を追った書籍、熊野以素氏著『九州大学生体解剖事件七十年目の真実』(岩波書店)とインターネットで得られるものだけですので、ぜひとも教えてください。
参考
↓
『汚名 「九大生体解剖事件」の真相』
https:/
読書感想『汚名 ──「九大生体解剖事件」の真相』
http://
「九州大学生体解剖事件 七〇年目の真実」書評 人の弱さを追い、医の倫理示す
https:/
では以下、私の疑問を書いていきます。
�，泙叉�紙の記事にはこうあります。
「計八人の犠牲者はいずれも、日本軍の迎撃戦闘機に体当たり攻撃されて撃墜され、パラシュートで脱出したB29爆撃機の搭乗員だった。」
さらに、東野さん提供の写真のキャプションにも「撃墜されたB29爆撃機の搭乗員たちの写真。このうち８人が実験手術の対象となった」とあります。
そこで、私はこの写真の下にある名前をインターネットでも取り寄せ解析した上でさらにインターネットで得られた情報に照らしあわせて以下の人たちとわかりました。
写真下部記載名左上から
�．沺璽咼鵝Ε錺肇�ンズ大尉(機長)
�▲Ε�リアム・F・フレドリック中尉(副機長)
��ハワード・D・シングルデッカー小尉(爆撃士)
�ぅ船磧璽襯此�M・カーン中尉(航空士)
�ゥ如璽襦�E・プランベック中尉(レーダー士)
�Ε蹈弌璽函�C・ジョンソン伍長(左射撃手)
�Д謄妊�ー・J・ポンシュカ二等軍曹(航空機関士)
�┘蹈弌璽函�B・ウィリアムス伍長(無線通信士)
��レオン・E・ザーネキ伍長(尾射撃手)
あとは、新聞では切れていて読みとれませんが･･･
��レオ・C・オーエニック伍長(右射撃手)
��ジョン・C・コールハウアー伍長(射撃官)
です。
これは、以下のサイトを参考に作成しました。
Aviation Safety Network
↓
http://
しかし、東野さん著の『汚名』の118ページには「罪状項目の一つ(共同謀議)には墜落したB29機搭乗員十二名の名があった」とありますが、この12名と写真の名簿とで重なる人は６名しかおらず、さらには、肝心のワトキンズ機長の名前はありません。
いうことは、この罪状項目にあげられている12名は当該墜落機の搭乗員名簿ではなく罪状項目がいうように、「(当該墜落機の乗組員だけでなく)日本軍ニヨリ抑留中ノ米軍俘虜」で行方不明になった者の名簿であり、その中「ノ十二名中約八名ヲ生体解剖セルコトニヨリ該俘虜共ヲ故意且不法ニ殺害セリ」という容疑を表していると思われます。
それが証拠にこの名簿の中には当該機の搭乗員でも、現地で行方不明になったり、住民に殺害されたと思われる者はリストにあがっていません。
その搭乗員が
��ハワード・D・シングルデッカー小尉(墜落死)
�ぅ船磧璽襯此�M・カーン中尉(住民により殺害)
�Ε蹈弌璽函�C・ジョンソン伍長(住民に追いつめられピストル自殺)
��レオ・C・オーエニック伍長(住民により殺害)
の四人です。
これはこちらに詳しいです。
↓
http://
(2023年現在、開けず！)
これについては東野さんも現地調査をされて、著書「汚名」に書かれています。
26ページにはこうあります。
「私が、現地調査で確認することができたB29機からの降下兵は十人である。(中略)うち一人は自殺、(中略)一人は墜落死、一人は射殺。かりに十一人がパラシュートで降下したとしても、私の調査では一人が残ってしまう。その一人はいまだに消息がわからない。」
と書かれています。
すなわち搭乗員11人中３人が現地死亡、１人が行方不明になったとしたら残り全員が捕虜になったとしても、11−4＝7で捕虜となるのは７名です。
その内の一人、機長は生還しているので九大で生体解剖される当該機の搭乗員は最大でも６名となるはずです。
しかし、『汚名』の次の章27ページには「生存捕虜九人は、所轄の熊本憲兵隊に引きわたされ」とあり、明らかに矛盾しています。
仮に機長の証言「墜落したB29機に搭乗していたのは十二人」が正しいとして、その誰かわからない「氏名不詳者」が生存捕虜として捕らえられたとしても12−4＝8で、一人足りないのです。
(この機長の搭乗員12名というのは記憶違いの可能性が大だと私は思います。なぜなら当時のB29の搭乗員は普通11名であり、なにより出撃前の記念撮影に写っているのが11人だからです。)
しかし、この本は出版年次が昭和54年とふるく、それ以降新事実が発見され当該搭乗員と九大生体解剖の被害者の全貌が解明されていると思ったのですが、(それは東野さんもその建立に携わった当該機墜落の地に建つ「殉空の碑」の墓碑銘の名簿が当初から変わっていたのもありましたので･･･)
しかし、先日の貴紙に掲載された東野さん提供の写真のキャプションに「撃墜されたB29爆撃機の搭乗員たちの写真。このうち８人が実験手術の対象となった」とあるように、東野さん自身も貴紙もまだこの矛盾に気がつかれていないようですし、さらには比較的最近の熊野氏の書籍にも、「落ちていくB29から搭乗員十一名が次々とパラシュートで脱出していき、(中略)二人の飛行士が村人に殺された。(中略)生き残った飛行士九名は福岡の西部軍司令部に送り込まれ」(６〜７ページ)とあり、この本でも当該機の生存者は９名となっているので、このように疑問をぶつけさせてもらいました。
そこで、私の真相の推理は以下の通りです。
1945年5月5日に墜落した当該機に搭乗していた乗組員は11人、そして現地で死亡した者が４人、残り７人が捕虜になり、機長１人が東京に送られ生還した残り６人は九大生体解剖事件の犠牲となったが、九大生体解剖事件の被害者は８名である。
ということは残り２名は当該機以外の米兵捕虜の可能性が高いのではと。
(これについては、熊野氏もその著書の47ページで、「こうして八名の捕虜が生体実験で殺された。彼らの遺体はすべて焼却され、灰は捨てられた。名前が判明している飛行士もいるが、判明しなかった人の方が多い。また、五月五日に撃墜されたB29の搭乗員以外の捕虜も含まれていたようである。」と指摘しています。)
その推理を後押しするものとして、こんなサイトをみつけました。
↓
レファレンス事例詳細(Detail of reference example)
http://
これは、前出した『汚名』の中にある「罪状項目」に挙げられた生体解剖の被害者の可能性のある12名に名前のあるチャールズ・パーマー軍曹の行方を調べたものです。
そこにはこうあります。
「『1945年5月27〜29日深夜頃、福岡県門司市大里字奥田（現：福岡県北九州市門司区）に高射砲弾の直撃を受け墜落したＢ29（第313航空団9爆撃群第1爆撃隊所属）に搭乗していたChales S. PALMER軍曹が捕虜となり、同日西部軍司令部へ送られ、6月20日に福岡高等女学校校庭で処刑された。』という事実を裏付けることができる資料を探しています。」
と･･･。
ということで、このチャールズ・パーマーという兵士は当該機に乗っていなかった可能性が大であり、この兵士は福岡高等女学校で処刑されたとしても、同じ飛行機に乗っていて捕虜となった戦友が九大生体解剖事件の犠牲者となった可能性があるのではないかと。
このような結論に至ったわけであります。
私は記事にあるように、東野さんが言う「戦争とは敵も味方もなく、悲惨と愚劣以外の何者でもない」という心の叫びにまったく同感します。
東野さんが筆舌に尽くせない体験をされたことに同情の念に耐えませんし、それと向き合い真相を解明する努力をされたことに心の底から敬意を表します。
私も東野さんが言うようにこの当該機で現地で墜落死した１名、現地で殺された２名、そして現地で自殺した１名、さらには捕虜となり生体解剖され殺された６名、そして当該機以外で生体解剖された米兵捕虜２名、全てが敵も味方もなくあの狂気じみた悲惨で愚劣な戦争の犠牲者であると確信しています。
彼らは己の意に反し、人を殺戮する任務を与えられ、そして、「敵地」で撃墜され、殺された。
若くして戦争により殺された彼らにも愛すべき家族や恋人がいたことでしょう。
それなのに、このような非業の死を遂げるとは。
心が痛みます。
しかし、最近このような歴史に目を背ける歴史修正主義が跋扈しているのも事実です。
東野さんの矛盾を着いて、果ては「そんなことはなかった。」などと否定されないとも言えません。
また、私は思うのですが、その墓碑はその方が亡くなった地が一番相応しいと。
九大で殺された８名の墓碑は九大医学部に建てるべきであると。
そして、それはあくまでも事実に則してその名前は刻まれなくてはならないと。
それが、あの狂気の戦争で殺された人々への、現代を生きる私たちのせめてもの手向けではないかと思うからです。
以上が私の意見です。
いかんせん、一介の建築職人であり、パソコンも持っておらず、インターネットの調べものは「ガラホ」が頼りですので、調査にも限界があります。
なので、私の事実誤認や思い違い、認識不足などがありましたら是非ご指摘ください。
また、必要がありましたら東野さんご自身にも尋ねていただけるとありがたいです。
東野さんの事件を語る勇気と戦争を憎む姿には重ね重ね感動しました。
いつまでもお元気で活躍されることを祈念していますと、是非お伝えください。
草々
以上。
どーよっ？
どーなのよっ！
※前述したが、結局このメールに対する返事はなかった。
残念！
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