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2022年11月19日22:09

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『鎌倉殿の13人』第43回「資格と死角」

 鎌倉へ呼び戻された源頼家の次男、公暁は子どものいない源実朝の後を継ぐ気が満々なのに、実朝は京から皇族を招いて後継に据えようとしている。もともと火種のあったところへ、三浦義村が公暁の知らなかった頼家の最期の事情をもったいをつけながら吹きこんだので、いよいよ事態はのっぴきならないところへ進んでしまう。

 探せばいる血縁をさしおいて、中央の権威筋から有力な若年の人間を派遣してもらい、組織のトップに据えるという動きはたまに見かける。今回がそうだし、奥州を藤原氏の前に治めていた出羽清原氏の真衡は家格を上げるために養子をとって後を継がせようとしたし、徳川幕府も四代家綱の後に皇族から後継を迎えようという動きがあったらしい(こちらは近年、異説が提出されているともいう)。ただし、いずれも身内から猛反発が生じて撤回の憂き目にあったり、うやむやになったりしている。
 意外に血縁というものが絶対的な要件とはされていないのだけれど(個人的にこれは畜産が一般的でないからだと思う)、そうはいっても血縁で分け合っている利権構造がこれを手放すことに踏み切らせない感じである。

 京から誰が派遣されてくるのか、これ次第では鎌倉の新興政権が軽く見られたということで、御家人の反発を抑えきれなくなるのだけれど、これが親王の一人、実朝に嫁いだ正室とも縁続きの人物ということで、これ以上はないほどに鎌倉の事情にも通じた存在が選ばれる。
 朝廷としても、鎌倉の存在をかなり重く見ていて、友好的な関係を築こうとしている、あるいは、取りこもうとしているのが見てとれる人選といえる。

 実朝はすぐ京へ答礼に向かおうとするが、あまりフットワークよく動いては軽んじられるとの反発が評定衆から出て、政子は自分が代理で行くと即決する。
 政子は以前にも京を訪れ、その時は丹後局と会見したが、中央における消息に疎かったせいでうまくことを運ぶことができなかった。今回はその反省を活かしてというべきか、相変わらず丹後局と同様に重箱の隅をほじくるような藤原兼子の難癖をかわし、今回の件が十分に彼女にもメリットのあることを強調して、会談を成功裡にまとめている。
 あわせて実朝は右大臣を授かって頼朝より官位が上回り、政子も従三位を贈られる。ここでも、朝廷の幕府を重視する姿勢を見ることができる。

 一方、政子や北条義時の弟である北条時房も京へついてきて、非公式の形で後鳥羽上皇と対面しているが、彼はこの後でまた京へやってくるので、ここでのやりとりはその時の伏線になっていると思う。覚えておいて損はないはずである。
 ちなみに、三谷幸喜はこの時房のかな表記「ときゅうさ」が妙に気に入っているようである。

 幕府と朝廷の親密さが増すということは、鎌倉の土着派といえる北条の勢力が後退しているということになる。北条はどうやら政治的な駆け引きが得意でなくて、劣勢になってもぎりぎりまでは動かず、いよいよ後がないとなってからブチ切れて皆殺しで事態を解決しようとする傾向があるように見える。
 今回も、源仲章が妙に得意気に「京と鎌倉の仲立ちをするのに自分ほど適任があろうか」と自賛し、「執権にでもなろうか」と冗談めかして言っているのだけど、視聴者としてはこれはもうあきまへんなという感じである。

 実は北条家内でも明確な鎌倉土着派は義時のみで、劣勢である。政子や嫡男の泰時は親朝廷路線を進めているから、その意味では義時と対立している。しかし、義時は泰時に朝廷にとりこまれることなく、「自分が目指してなれなかったもの」になってほしいと語る。伊豆の小豪族の跡取りでもなかった身分から、幕府の執権にまで昇りつめた義時の抱えている欠落感とはなんなのか、そこに物語の焦点が集まりつつ、いよいよ鶴ケ岡八幡宮での一大イベントを直前に控えることとなったのであった。

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