mixiユーザー(id:67748237)

2022年10月26日00:08

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夜道

夜道歩いて今夜、
しばし後ろより絹摺れの音が聞こえて来ました。

妖のいたずらであれば恐るに足りませぬが、
妖は皆大人しく、
既に今夜は寝入っていました。

憑きのものも気に掛けてくれてましたが、
「気配は有れど姿は無い」とのことでした。

昔、旅の道中わらじの妖と出くわしたとき、
「名乗れ」と問うたら「名は無い」と答えられました。

まだわたしに憑きのものが無い頃で、
道中妖がわたしを見守ってくれたのでした。

今夜は問うにも姿無く、
どうにも解せぬ限りでした。

家に着いて再びそれを思えば、
あれはいわゆる「虫」であったと気が付きました。

不吉に先立ち、
ときに虫が知らせてくれると、
聞いたことが有ります。

そう言えば今夜は道中幾度か、
煙りのにおいを確かめました。

もし現人の出刃に出合えば、
憑きのものの力は現世に及びませぬから、
わたしは己が力を以って、
出刃を排せねばなりません。

決して出来ぬことでは有りませんが、
出来ることなら出くわしたく無いものです。

わたしはいつもの道を変え、
早々家路に就きました。


















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