今夜、月が空から失せました。地は闇となりました。気の触れた雉が喚き、貂に喰われて叫びを上げました。もはや世界は食い尽くされ、終わって行くのです。わたしは稲の束に紛れ、闇をやり過ごしました。獣が呻きを漏らしわたしの前を過ぎました。わたしは飛
眠気を、いつも仇と見做しては、抗うことばかりして来た。華茶を吸い、瞬きの眠りに嵌り、何処か玖の界を歩いていた。だから眠りはいやしと当たり前のことを、思い出すことが出来たことだろう。
道の端に牛が居た。 牛は昔からそこに棲み、子を生み乳を与え育ててた。今度道が広がることとなり、牛は殺されることになった。牛は殺され、電柱が立った。殺された牛の血が沁みて、道は暫く黒く染まっていた。道の端に牛が居た。