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2022年10月21日16:21

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PASSING 白い黒人(Passing)

 1920年代のニューヨークを舞台に、共に白人のフリができるものの、ひとりは白人として、ひとりは黒人として生きることを選んだ2人の黒人女性の葛藤を、美しいモノクロ映像で描いたヒューマンドラマ。「それでも恋するバルセロナ」などの女優レベッカ・ホールが監督・脚本を手がけ、ネラ・ラーセンの小説「白い黒人」を映画化した。ニューヨークのハーレム地区で医師の夫や子どもたちと暮らす裕福な黒人女性アイリーンは、故郷の友人クレアと偶然再会する。肌の白いクレアは自分が黒人であることを隠して白人男性と結婚していた。そんなクレアの登場により、平穏だったアイリーンの日常にさざ波が立ちはじめる。「メン・イン・ブラック インターナショナル」のテッサ・トンプソンがアイリーン、「ラビング 愛という名前のふたり」のルース・ネッガがクレアを演じ、「ムーンライト」のアンドレ・ホランド、「ゴジラvsコング」のアレクサンダー・スカルスガルドが共演。Netflixで2021年11月10日から配信。(映画.comより)





<2022年10月15日 Netflix鑑賞>

 一口に”黒人”と言っても、肌の濃淡によって認識がかなり違う、というのは、映画「クラッシュ」(ポール・ハギス監督)を見た時に教えられたことでした。タンディ・ニュートンとテレンス・ハワードの夫婦が、日本人の私から見れば双方黒人に見えるのに、片方だけが侮蔑的な扱いを受ける内容で、最初は理解できなかったのを覚えています。知識の浅かった私は、後に解説を読んで事実を知ったのです。今回の映画「passing」も、肌の色が薄ければ、その身なりや所作、雰囲気によって白人として通ってしまう(passing)ことに対する個々の価値観や姿勢のについての映画です。

 主人公のテッサ・トンプソンとルース・ネッガは、お互い色の薄い黒人だったので、たぶん若い頃は”白人”のような顔をして一緒に過ごしたのです。でも、その血に黒人の血が流れていることは充分わかっていて、それは歳と共に色が濃くなるだとか、子供に肌の黒い子ができるかもとか、そんなふうにしていつ露見するかもわからないこともわかってるのです。で、テッサの方は黒人の医師と結婚していて、二人の子供も誰が見ても黒人です。隠しようもないので隠していませんし、生活は裕福で不満もありません。

 そんな彼女が、某高級ホテルのカフェで旧友ルース・ネッガに再会するのです。彼女は美しく、物腰も優雅で、完全に白人上流階級のご婦人になりきっていました。最初はわからなかったほどです。そして彼女の夫は、黒人を憎む差別主義者。彼女は18歳で夫と結婚し、それ以来何不自由ない生活を送ってきたのです。娘が一人います。「隠せているのか」というテッサの問いに「大丈夫。両親亡き後、私を引き取った親戚は白人だったから。娘も白い子だったの」。それでも、肌の黒い子が出て来るのが怖くて、二人目を産んでいないと言います。また、年齢を重ねるごとに濃くなってくる肌にビクついてもいます。

 自分のアイデンティティを抹殺することで(そしてそのほうが生きやすいから)、生き抜いてきたルース・ネッガはしかし、旧友に会い、ハーレムに出入りし、黒人さんたちと交流することで自己を再認識しはじめ、だんだん自由に振舞うようになってきます。そして、普通に黒人であることを受け入れていたはずのテッサ・トンプソンが、だんだんと自己を見失うような”さまよい系”になってくるのです。これは、ひょっとして、今は黒人ソサイエティに何食わぬ顔をして参加しているけれども、若い頃は白人のフリをしていた、ということがルースを通してバレることをテッサがおそれたからかもしれません。ともあれ、二人の交流が盛んになるにつれ、テッサの夫はルースと仲良くなり、いい感じになっていることもあって、ちょっと複雑な心境になっていたところに、ルースの夫(アレキサンダー・スカルスガルド)が妻の素性を知り「嘘つき女!」となじりながらパーティに乱入。そこで悲劇が起きるのです。





<ここからネタバレ>

 騒然となったパーティ会場から、あろうことかルースは転落死してしまうのです。夫が乱入したからか、自分が窓際に逃げたからか。でも、私にはテッサが腰を押したように見えましたけれど。もしそうなら、どうして旧友を消す必要があったのか。過去のことを仲間に知られるのがいやだったからか。まさか夫と仲良くしているからってことはないと思うけれど。本当に私の思っている通りなら、彼女はこんな罪の意識を持ったまま、この先生きてゆけるのか、とも思いますね。なかなかに難しい主題の映画でした。



<ネタバレ終わり>



 巷では、白黒に撮られたことを評価する声が大多数ですが、私は肌の微妙な違いがわかる鮮明なカラーのほうがよかったのではないか、とひそかに思っています。趣は全く違ってしまうでしょうけど。どちらにしても、秀作に違いないとは思います。テッサ・トンプソンは、アクション女優のイメージが強かったので、今回は誰だったっけな、と思うほどでした。でも”奥様”もハマってましたね。特に帽子がよくお似合いでした。
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