テスカ、トリポカがたぶん正しい読み方。
アステカの古い言葉、ナワトル語。
アステカは多神教だが、その中でも最高位とされる神の名。
意味は「煙を吐く鏡」。
この本の表紙になっているのがおそらくその神様の顔の想像図だろう。
神様の顔など見たことがある人間はいないので。
この神様には特に「夜と風は目に見えない」という意味の別名があるくらいなので。
直木賞受賞作。
「このミステリーがすごい」の2位だそうだが、
読み終わったとき「ミステリー…なのか?」と思った。
ワシがこの本の分類をするとしたら、「神話」だろう。
アステカの「新約聖書」でもいいかもしれない。
ものすごく分厚い本で、登場人物が次々に殺されていく。
いったい誰が主人公なんだ?と思ったころにやっと出てくる。
それも、どんどん立場が変わっていって、その間のどこで殺されてもおかしくない。
危険な人生を送る神聖な男たちの話。
セックスは出てこないがドラッグと暴力がてんこ盛りなので、
映画にするならR18になるかもしれない。
「ドラゴンボール」「ワンピース」みたいな空想上の暴力じゃない、
切れない刃物や鈍器で人間を殴りたたきつぶし切断する、
肉片と血しぶき満載の暴力だ。
でもね、神聖なのよ。
アステカの国の話がところどころ出てくるんだけど、
アステカでは、神殿を新しく建てるときや洪水を静める祈りのときは、
それはそれはたくさんの奴隷(戦争捕虜)がひっきりなしに神様に捧げられた。
生きたまま心臓を抉り出して神様の食べ物とし、
手足を切り落として神のしもべである人間がお相伴をする。
あふれる血には香料の煙をただよわせて神に祈る。
それは悦びの儀式で、いけにえになるのは名誉なことで、
年に一度のテスカトリポカの祭りのためのいけにえは、
1年間王様のように贅沢な暮らしをさせた「選ばれし若者」だ。
そういう背景がわかってくると、
この物語の最初からいきなり殺され始まるたくさんの人間たちは、
全部アステカの神へのいけにえ、今はメキシコシティになってしまったけど、
その下にある神の都の階段ピラミッドで心臓を抉り出される奴隷たち、
ではないかと思えてくる。
暴力シーンが生理的にダメな方々にはお勧めできないが、
とにかく本を読みまくっている自分が、
「この本は読んでよかった!」と心から思えた本なので、
軽く感想を書いてみた。
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