8月3日、ユナイテッド橿原で鑑賞。公開1週目で客は10人ちょっと。
公式
https://kimibus-movie.jp
予告編
https://youtu.be/1_ahOlwN6iQ
特殊メイクなしで顔つきから「老人」に! 監督&主演インタと予告編
制作秘話
https://youtu.be/9naZd98jcZY
本編でまず驚いたのは、訛りの強さ。コックニーとは違うようだ。
次に驚いたのは、老人トムの若い頃がとてもハンサムだったこと。笑
さらに、「イギリスの人たちって、こんなに親切なのか!」と衝撃を受けた。
老人に対する優しさも、尊重する態度も、日本では考えられないものだった。
(以下、ネタバレありです)
トムは入念に計画を立てていた。手帳の予定表と地図を照合してから出発した。
最初のバスでは前の席の男の子がちょっかいを出してきた。嗜める祖母。
「構いませんよ」と鷹揚に微笑むトムだったが、
いたずら小僧が彼のカバンに手を出すことだけは許さなかった。
車の立ち往生に出会う。トムがサポートして脱輪を解消。手に怪我をしてしまった。
ヨボヨボなのに、彼はとても親切だ。骨身を惜しまない。
それに引き換え、今時の若い連中ときたら…。
車内で若い男が動画を撮っていた。(お前も出てきて車を押せよ!と私は思った)
今度はバスが故障した。運転手にサポートを申し出るトム。「元修理士なんだ」
あっと言う間にエンジンがかかり、バスが動き出した。観客は喝采。
羊が山ほど乗り込んで(羊飼の手荷物?笑 牧羊犬はいなかった)すし詰め状態など、
のどかな田舎らしい小エピソードが挟まれる。
ブルカの女性に席を譲られた。「私は大丈夫です」と丁寧に辞退するトム。
すると、そばにいた若いチンピラが、ブルカの女性にしつこく嫌がらせを始めた。
「失礼なことをやめなさい」毅然と注意するトムを、チンピラは突き飛ばした。
あわや、と思った瞬間、乗客たちが声を上げ始めた。「そうよ。降りなさい!」
「今の撮ってたからね」とスマホを誇示する女性も。女たちの方が強かった。
「ひとり降ります」との声に運転手も呼応。チンピラは捨て台詞を吐いて消えた。
B&Bにて。念を押して予約した「1号室」がダブルブッキングされていた。
妻との思い出の部屋だったのに。
夜中、薄い壁から聞こえる喘ぎ声で昔の夫婦関係を思い出すトム。
彼の我慢強い思いやりを、妻はちゃんと分かっていた。
翌朝、「音の苦情は出てなかったろう?」と能天気に言う男の隣で、一切文句を言わない穏やかなトムに向かって、女は(ごめんなさい…)と目で謝っていた。
乗換のバス停にて。トムは女の子に折り紙でカエルを作ってあげて喜ばせている。
横にいた若い女が、突然トムのカバンをかっぱらって逃げた。
反対側にいたおばさんが「年寄りの物を盗るなんて!」と叫び、猛然と追いかけた。
やっとのことでトムが追いつくと、おばさんは女をゴミ集積所に追い詰めていた。
「カバンを返しなさい!でないとこうよ!」と、女にバットを振り上げるおばさん。
トムはそれを制し、凶悪な顔で睨み返す女に金を差し出しながら、穏やかに言った。
「それに金目のものは入ってない。これをあげるからカバンを返してくれないか」
リアル・盗人に追い銭を見た。
寝入ってしまったトムは車庫で運転手に起こされた。既にとっぷり暮れている。
「言ってくれていたら終点で降ろしたのに」と無責任な言い訳をする運転手。
バスを降り、その日泊まる予定のB&Bを目指して、夜道をとぼとぼ歩いていると、
急に具合が悪くなり、道端に倒れてしまった。そこへ偶然通りかかった中年夫婦。
倒れた拍子に額を切ったトムを見て「近くだからうちに来て!」と強く勧めた。
夫は白人で妻は黒人。彼らは自慢の娘が出演したミュージカルを観た帰りだった。
娘の進路について、医者だミュージカル女優だと言い合う様子も仲睦まじい家族。
彼らを見ながら、自分にもそんな幸福な時代があったことを思い出すトムだった。
好意に甘えて一晩泊めてもらい、トムは再び路線バスの旅へ。トラブルが起きた。
融通の効かない車掌が「スコットランドの高齢者パスは使えない」と咎めたのだ。
「今までずっと乗ってきた」とトムが反論すると「何百キロもタダ乗りか!」と
ますます居丈高になる。スコットランド人を田舎者と見下す発言も。嫌な奴だ。
見かねた乗客たちが助け舟を出す。「老人ひとりくらい乗せてやれよ」「私が払う」
「皆でバス代を寄付してあげよう」 だが、トムは丁重に断り、バスを降りた。
何もない荒野のような場所だが、進むしかない。トムはヨボヨボと歩き出した。
すると、白いトラックが来て停まった。「こんな所で何してるんだ? 乗れよ」
「いや、大丈夫。君たちの行き先と違うだろうから」と断るトムに、男は言った。
「ウクライナ人の良心を無碍にするな。まぁ乗って。俺はあんたを知っている。
今日は妻の誕生祝いなんだ。どうかうちに寄って行ってくれ」
美しい刺繍の服や豪華な花の髪飾りを身につけた女性たちが美しい。平和だった。
みんな楽しそうだった。パーティーの様子を見て、思わず泣けてきた。
そこに居心地悪そうにお邪魔するトム。皆が彼を歓迎した。SNSで知っていたのだ。
早々に辞するトムを妻が引き止める。気が変わらないと見るや「せめてこれを」と
丈夫そうな木の杖を差し出した。(これが後でとても役に立つ)
トムは預かり知らぬことだったが、「#BusHero」はSNSだけでなく、ラジオも取り上げるほど有名になっていた。DJが「謎のおじいさんを目撃したら写真を撮って送って」と呼びかけていた。
「有名人」のトムは、バス運転手たちからも親切にされた。「お代は要りません」と。
小さなチアガールズに囲まれて歌いながら移動することもあった。彼は歌が好きだ。
結婚前夜パーティーで陽気に盛り上がる、若い男女グループと居合わせたトム。
「俺、あんたを知ってるよ」と見知らぬ初老の男が寄ってきて機嫌よく歌い出した。
「一緒に歌おう」と誘われ、唱和するトム。「しっ!」と周囲を静止する女性。
人生の苦節をいくつも乗り越えてきた人だけが持つ、圧倒的な説得力に心が震えた。
2階建て路線バスに乗ると、運転手は親切に「2階席が空いてますよ」と案内した。
トムが車窓を眺めて寛いでいると、突然、激しい衝撃!目の前は真っ暗になった。
(なぜトムはこうもトラブルに見舞われるのか…)
気づくとベッドの上だった。医師がやってきて説明した。
「(建築物とぶつかり)バス2階の屋根が吹き飛びました。
手の傷は化膿していたので抗生剤を投与しました。
あなたは満身創痍なのに、なぜ旅をしているんですか?ちゃんと治療しましょう」
医師が去るとトムは病院を逃げ出した。杖をついて、必死に歩いた。
「体内にがんが転移している。もう手の施しようはない。余命数ヶ月」との告知。
妻が必死に質問する横で、トムは沈黙していた。その後ほどなく、庭で倒れた妻。
彼女はそのまま逝った。独りになったトムは、妻のためにランズエンドを目指した。
彼らには1歳足らずで亡くなった娘がいた。
愛娘の死に耐えられなかった妻は、当時住んでいた、思い出深いランズエンドから
「できるだけ遠くに行きたい」とトムに懇願。スコットランドに移住したのだった。
トムは、数十年ぶりに娘の墓参りをした。親子3人の写真を、小さな墓に供えた。
そして、妻との思い出の場所である、ランズエンド岬の防波堤を目指した。
終点でバスを降りると、たくさんの人たちがトムを待っていて拍手で出迎えた。
戸惑うトム。「すみません、用事があるんだ。通してくれ」と人波をかき分けた。
防波堤の先端で、彼は革カバンを開けた。底から妻の黄色いショールが出てきた。
若い頃の妻は、山吹色のコートやショールを身に纏っていた。これは重要伏線。
(女優の肌色はブルーベースで、山吹色はやや違和感。それも重要ポイントだろう)
影をたたえた彼女の印象とは少しちぐはぐな、明るくて暖かい色。
それはトムの愛情のような色だった。
包みを開けると綺麗な缶が。
トムは蓋を取り、妻の遺灰を海に撒いた。ついに、約束は果たされたのだった。
原題『The Last Bus』。
トムは「故郷のランズエンド」で客死するのだろうな、と思った。
ハシゴで観たドキュメンタリー映画『瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと』の中で、
寂聴さんは「客死に憧れていた。カッコいいでしょ!」と監督と盛り上がっていた。
カッコいいのかは分からないが、トムは本望だろうなと感じた。
地味ながら名作。大人の味わい。(若い人にはちょっと難しいかも)
『PLAN 75』や『ノマドランド 』と、ぜひ見比べてほしい。
https://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=1833905&id=5336955
正確には★4.5。途中で何度も泣いた。
「ウクライナ人の良心」シーンはタイムリーで、特に泣けた。
一言で表すと渋〜い人情ロードムービー。
私が大好きなタイプの作品だった。
全編フラッシュバックを多用し、老人トムの路線バス一人旅(スコットランドの北端から、イングランド西南端にあるコッツウォールのランズエンドまで、ブリテン島を縦断!)を描く。同時並行で過去の謎解きもテンポよく進めていく。原題『The Last Bus』は、最後にしみじみ刺さってくる。
冒頭、バス停のベンチに並んで座った若き日のトムが、沈んだ様子の愛妻メアリーの左手を握ろうとする。しかし、彼女はタイミング悪く手を自分の膝に置いた。罰が悪そうに手を引っ込めるトム。この短い「とほほ」シーンだけで、私はトムが好きになった。妻を深く愛する優しい男だ。だが、妻の気持ちと微妙にすれ違っている。彼女の深い憂鬱は何故だろう? 思わず物語に引き込まれた。
どこか寂しげなトムとメアリーは長年2人で暮らし、メアリーが先に亡くなった。トムは故郷?ランズエンドを目指し、老人用フリーパスを使った旅に出る。歩くのもヨタヨタなのに、厳しいバス旅などして大丈夫か?とハラハラする。しかし、彼は意外とヒーローだった。元整備士の腕を生かして故障したバスを直す。(この様子を車内で撮っていた若者が「#BusHero」とハッシュタグをつけてSNSに拡散)
一見頑固そうだが、どこか愛嬌を感じさせる風貌のトム。人間は歳を取ると唇が下垂するが、こんなに下がるものか?と驚くほど特徴的だ。下唇の突き出た横顔を見ていて「あ、分かった。ピーター・ペティグリューだ!」と気づいた。『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』に出てきた鼠男だ。
主演のティモシー・スポール(65)は実年齢より30歳近く年老いた役を特殊メイクなしで演じたという。製作総指揮にも名を連ねている。この撮影は結構ハードそうだったから、おじいちゃん大丈夫か?と心配したが、なんの、ヨボヨボは名演技だったのである。笑
ケスさんの日記 2022年06月16日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982564677&owner_id=12923117
tamaさんの日記 2022年06月17日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982572946&owner_id=10258677
【映画】『PLAN 75』 2022年07月06日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982719595&owner_id=1833905
【ノマドランド】A House Is Not A Home 2021年04月26日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1979079222&owner_id=1833905
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